弔辞や挽歌は「あなたを忘れない」と死者と約束することを意味する (2/2ページ)

心に残る家族葬



「Fuckin‘ Yuya Uchida, don’t rest in peace. Just Rock‘n Roll 」
「安らかに眠るな!」「ロックンロールであれ!」

形式ばった弔辞の常識を超えた「ロックンローラー内田祐也」への勇壮な挽歌といえるものだった。

■赤塚不二夫に送ったタモリの弔辞

また、タモリが本名の森田一義の名で赤塚不二夫(1935〜2008)に捧げた弔辞も当時世間を騒がせた。霊前に立ったタモリは手にしていた紙を開き弔辞を述べたが、この紙は白紙だったと言われている。そして最後に「私もあなたの数多くの作品の一部です」と締めくくった。売れない芸人だったタモリを赤塚が拾ってやったのは有名な話だ。タモリは赤塚からギャグから人生そのものを学んだ。正しく「天才バカボン」や「おそ松くん」らと並ぶ赤塚の「作品」である。生前の偉業を称えるという意味でタモリの存在自体が赤塚への挽歌であった。

■「あなたを忘れない」という約束

このような破天荒な内容は難しくても、弔辞は本式の葬儀には欠かせない葬儀儀礼である。弔辞を述べる者は誰に向かって話しているのだろうか。もちろん死者に対してである。しかし同時に参列者に、著名人である場合ならメディアを通じて、視聴者、聴取者に対しても向けられる。なんのためか。死者を忘れないため、「あなたを忘れない」と死者に約束するためである。人間が本当の意味で死ぬとは、誰からもその存在が忘れられることである。その人のことを誰の心からも消えた時、「そもそも生きていなかった」ことになる。一般の人であっても、そこには様々な物語があったはずで、誰ひとり凡庸な人生などというものはない。 死者を悼み、死者の歴史を振り返り、今生における物語の終焉を告げ、語り継ぐために弔辞は手向けられる。人麻呂は高市皇子への反歌(長歌の後に添えられる短歌)でこのように歌っている。

ひさかたの天知らしぬる君故に 日月も知らず恋ひ渡るかも
(天を治めるあなたのために、月日が経つのも知らず、いつでもあなたをお慕い致します)

弔辞は言霊となって残された者の心に宿り、永遠に故人を偲び、語り継ぐ。語り継がれる限り死者は死んでいないのである。

■葬儀は約束をする場所

死はその人や家族だけのものではない。その人と関わりあったすべての人にとっても共有するべきものである。その意味で弔辞は極めて重要な葬送儀礼といえる。我々は葬儀において弔辞を述べ、永遠の思慕を約束する。それは我々にとっては死者を心に宿しつつ、新たな人生が始まる宣言でもある。葬儀は死者にそのことを告げる約束の場である。形式的になりがちな弔辞だが、言葉は言霊であることを意識して、死者と真摯に向き合いたい。

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