愛の交わりは生きている証。愛する人と触れ合うことで感じる「生きる喜び」 (1/2ページ)
愛する人に「触れたい」という気持ちが高まるのは、「性」イコール「生」だからではないかと思います。
だからこそ思春期の頃はその想いを拗らせてしまったり、歪んだ形で表現してしまいがち。
前回はそんな「拗らせ愛」を題材とした作品をご紹介しました。今回の教科書『逝年』は、前回とは真逆の“ストレートな想い”を描いた物語です。
■今回の教科書 石田衣良『逝年』
3部作の2作品目となっている本作、1作目の『娼年』をご存じの方も多いのではないでしょうか。
人生にも恋愛にも退屈していた20歳の大学生・リョウが、ひょんなことから娼夫の道に足を踏み入れ、人を愛する心に目覚める物語です。
松坂桃李さん主演で映画化や舞台化もされ、話題になりました。本作は、主人公のリョウが愛するボーイズクラブのオーナー・静香のその後を描いています。
1作目でリョウが所属するボーイズクラブは摘発され、オーナーの静香は逮捕されました。
服役中の静香の出所を待ちながら、リョウはかつてクラブで共に働いていた仲間を集め、ボーイズクラブを立ち上げます。新しい仲間も増え、順調に経営が進んでいた最中、静香が出所することを知ります。彼女はエイズを発症していたのです。
■恩が愛に変わり、触れたいと思う瞬間
空っぽの気持ちで生きてきたリョウに娼夫の道を勧め、人に触れることの愛おしさや、人と正面から対峙することの素晴らしさを教えてくれた静香。
自分を救ってくれた恩人でもある静香に触れたい、抱きたいと感じたリョウは、前作『娼年』で静香をベッドに誘います。しかし彼女はHIV感染者ということを理由にリョウの申し出を断りました。
そして本作では、医療刑務所に収監されていた静香はエイズを発症してしまい、出所することになりました。あらゆる治療を試みたものの、根本的な治療はありません。
自分を沼から救ってくれた恩人が、愛する人が、間もなく目の前からいなくなってしまう。