これぞ不法の法…武士道バイブル『葉隠』が伝える戦国大名・武田信玄のエピソード (2/3ページ)
「山を越えよ」申し渡された者たち
かつて武田家では、罪人に国外追放の判決を下す時に「山を越えよ」と申し渡したと言います。
国外へ出るには山を越えねばならないからですが、追放される中には人望に厚い者もいたのでしょう。
仲の良い者が「名残惜しいから国境まで見送り、そこで送別会をやろう」などと言い出す始末。
当局にとって不都合だから追放するのに、その者を惜しむ行為は主君の意にそぐいません。
![](https://image.dailynewsonline.jp/media/9/2/920ba681e1e3832469e2f63348e8ab44ba657e83_w=666_hs=98c30e416418860f28989bedb66b4880.png)
「よいか、今後は追放した罪人の見送りを禁ずる。背く者は曲事(くせごと)である」
曲事とは道理に合わぬ、曲がったこと即ち「けしからん」という意味です。
けしからんのは分かるのですが、それではなぜ具体的に「こういう刑罰を科す」と言わないのでしょうか。
まぁ、罰せられないのなら別にいいか……とばかり一部の者たちは、相変わらず追放者への送別会を続けていました。
その報告を受けた信玄は、送別会を開いた者たちを召し出します。
「わしが曲事と禁じたにもかかわらず、なお傍輩との別れを惜しむ態度に感激した」
として、信玄は褒美として彼らに一倍の加増(所領を100%増やす=2倍にすること)を申しつけました。