「死」をきっかけに沸き上がる“誰かに触れたい”という感情 (1/2ページ)
私たちは、人生で大勢の人々と出逢います。
毎日のように連絡を取り、時間を共有し合う友人が、互いの環境の変化や価値観の不一致などで会わなくなることも多々ありますよね。
恋人同士の関係も同じように、些細なきっかけで関係が途切れてしまったり、拗れた結果、他の誰かと出会ったりすることも。
今回ご紹介する『パイロットフィッシュ』の冒頭はとても印象的な一行で始まります。
「人は、一度巡り合った人と二度と別れることはできない。なぜなら人間には記憶という能力があり、そして否が応にも記憶とともに現在を生きているからである」
■今回の教科書 大崎善生『パイロットフィッシュ』
本作は、40代の主人公・山崎のもとに、19年ぶりに元恋人の由希子から電話がかかってきた場面から始まります。
40代になり、ベテラン編集者になった山崎と、上京したばかりの19年前の山崎。
物語は二つの時代を交差しながら、由希子との出会いと別れ、別れるきっかけになった女性、そして今、山崎が出会った女性と、今の彼を作った人々との基軸が淡々と描かれています。
■「死」が引き寄せた“触れたい”という感情
山崎が誰かに「触れたい」と強く感じたのは、大学へも行かずにふらふらとアルバイトを探していた時のことでした。
北海道から上京してきて、東京で出来た唯一無二の友人は突然自分の前からいなくなってしまった。一日中、誰とも話さない日々が続いたある日、実家の母から愛犬の死を知らせるハガキが届きます。
救いようのない孤独感に苛まれた山崎は、衝動的に川に入水するも、ふと3カ月前に電話番号を教えてもらった女性のことを思い出します。
上京して間もない時、道に迷っていた山崎を助け、電話番号を教えてくれた女性・由希子でした。