運慶の仏像が集結!「鎌倉殿の13人」との繋がりも見える展覧会『運慶 鎌倉幕府と三浦一族』開催中

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運慶の仏像が集結!「鎌倉殿の13人」との繋がりも見える展覧会『運慶 鎌倉幕府と三浦一族』開催中

2022年7月6日から、神奈川県にある横須賀美術館で「運慶 鎌倉幕府と三浦一族」という特別展が開催されています。同展覧会は、日本史上最も著名な物資である「運慶」の作った仏像が中心となる展示になっています。

そして、それらの像が作られた背景には、鎌倉幕府にとって重要な位置にあった三浦一族やNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」との関係も明らかになっていきます。

今回の主役!運慶作の毘沙門天立像


まずは同展のポスターになっている主役をご紹介いたしましょう。
こちらは「毘沙門天立像 1189年運慶作(浄楽寺蔵)」。

モデルのように頭が小さく、均整のとれたプロポーションながら、鎧越しにも肉体の力強さが伝わってくるような作品です。


への字に口を結んだ表情は、穏やかながら奥深くに厳しさを含んでおり、武運を祈願するにふさわしい威厳があふれています。140センチと大きくない仏像ですがその威厳から、もっと大きく感じられるでしょう。

日本史上最も有名な仏師である運慶ですが、現存する像はわずか30体ほどと貴重で、こちらが運慶作だと判明したのが1959年の調査でのこと。

それまで「関東地方に運慶の仏像はない」とされてきた定説を覆した、歴史的にも貴重な作品で、国の重要文化財に指定されています。

運慶と鎌倉殿の13人

この毘沙門天立像が、運慶作と判明した1959年の調査では、像の中から「文治五年に和田義盛と夫人である小野氏が願主となって運慶が作った」といった旨の銘札が出てきたため。

この銘文で、ピンときた方も多いのではないでしょうか。NHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」で、横田栄司さんが演じているのがこの和田義盛です!

和田義盛は、鎌倉幕府二代将軍である源頼家を支える十三人の合議制のメンバーであり、これをNHKの大河ドラマ「鎌倉殿の13人」が描いているのは皆さんご存知の通りです。


そしてこの和田義盛の祖父にあたる人物の像が、展覧会の最初に登場する「三浦義明坐像(満昌寺蔵)」です。三浦義明は、のちに鎌倉幕府を開くことになる源頼朝に仕え、一族をあげて挙兵に協力をしました。

そうしたことからも、三浦一族はまさに鎌倉幕府をささえる重要な存在だったのです。


こちらは、「不動明王立像 1189年運慶作(浄楽寺蔵)」。

全体に量感豊かな体躯の像で、135.5センチと小ぶりながら、全体的に量感豊かな体躯と険しい憤怒の表情から、迫力が感じられます。


片方の目をつぶり、口を曲げて牙を上下に出した「天地眼」と呼ばれる表情をしており、こうした像例は平安時代中期以降の不動明王に見られるものです。

人間の表情に置き換えると存在しないものでありながら、なぜか真に迫るリアリティを持っているのは、運慶の卓越した技術の賜物。

目に嵌められた玉眼(水晶)も、生命感を生んでいます。

すでに大仏師であった運慶に仏像を作るように依頼ができたのも、三浦一族が極めて大きな力を持っていた証拠です。

学芸員の方によると「運慶に発注できるような人物は将軍以外では北条氏と三浦一族くらいだっただろう」とのことで、この地での三浦一族の存在感の大きさを示しています。

今回出展されている仏像を見ていくと、その裏に「鎌倉殿の13人」を感じることができるのです。

魅力的な仏像たち


今回の展示では、運慶とその工房で作られた仏像が数多く出展されています。
こちらは、「十二神将立像(曹源寺蔵)」。



運慶派あるいはその工房作と見られる、12体は今にも動き出しそうな躍動感にあふれています。

それぞれの表情も個性的で、愛着を持って見ることができるでしょう。

長く、同じ神奈川県の金沢文庫に寄託されており、12体揃っての展示は24年ぶりという貴重な機会です。

こちらは満願寺に伝わる「観音菩薩立像(右)」と「地蔵菩薩立像(左)」です。
まず圧倒的なのはその大きさ。いずれも2mを超える巨大さで、見た瞬間に声が漏れそうになるほど。

慈悲の仏である観音菩薩と、子供守護のご利益があるとされる地蔵菩薩ですが、こちらの二体は、こめかみの近くまで彫り込まれた切れ長のめと、しっかり結ばれた意志の強さを感じる口元の表情が特徴的です。

緊張感のあるつくりは、その背後に厳しい武家社会があったことを感じさせてくれます。

普段、お寺では秘仏となっており拝観することはできませんが、今回は特別に出展されています。

満願寺のご住職曰く「観音様たちもたまには、綺麗な海を見たいだろう」とのこと。

綺麗な海とはどういうことか。それは、ここ横須賀美術館のロケーションにあります。三浦半島の南に位置し目の前には太平洋から、東京湾の入り口にかけてのオーシャンビューが広がっています。

晴れた日には、遠くに房総半島も臨むことができる絶好のロケーションに建てれらているのがこの横須賀美術館なのです。


ここまでご紹介した像の他にも、極端な天地眼がウインクのように愛らしい「不動明王立像(満願寺蔵)」(写真)や、高く結い上げられた髻(もとどり)が特徴的で、のちの慶派の展開を考察する上で重要と位置付けられる、「聖観音菩薩坐像(無量寺蔵)など、三浦半島に残る貴重な仏像が集結しています。

ロケーションから見ても、仏像好きにとっても、鎌倉殿の13人ファンにとっても、逃してはならない展覧会です。

展覧会情報 開館15周年記念 800年遠忌記念特別展「運慶 鎌倉幕府と三浦一族」

会場:横須賀美術館
会期:2022年7月6日 (水) 〜 2022年9月4日 (日)
休館日:8月1日(月)
観覧料:一般 1,000(800)円、高校生・大学生・65歳以上 800(640)円、中学生以下 無料
*所蔵品展、谷内六郎館も観覧できます。
*( )内は20名以上の団体料金
*高校生(市内在住または在学に限る)は無料
*身体障害者手帳・療育手帳・精神障害者保健福祉手帳をお持ちの方と 付添1名様は無料

横須賀美術館

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