漫画「チ。ー地球の運動についてー」と歌舞伎演目の「俊寛」が描く死 (2/2ページ)

心に残る家族葬



少年は研究結果を地中に隠した上で〝託し〟、死を選ぶのである。

■「俊寛」が描いた死

『俊寛』にしても同様である。海女千鳥を犠牲にして島に打ち棄てたまま船に乗れば、自分は都に帰り安泰した暮らしを送ることができる。だが俊寛は千鳥の代わりに残ることを選んだ。遠ざかる船を見送りつつ、悲嘆のあまり泣き叫ぶのではない。かといって深い満足感に浸るでもない。自分の生に対してある種のあきらめを抱きつつ、少将と千鳥という若い二人を生かし、〝託した〟ことによる笑いである。

■最後に…

「人は生きてきたように死んでいく」という格言がある。われわれは最終的に死ぬし、与えられた生の時間はおそらくは短い。この短いだけの生という代物を、ひたすら自分を称揚し愉悦に浸り、そういった感覚に囲まれたまま固執して死んでいく、というように使用することももちろん個人の自由である。

だが別の使い方もある。自分に出来ることをしつつ、後世のために一抹のなにかを遺し死んでいく、ということである。 

自分の生を使ってしたなにかの仕事が、すぐさまリアルタイムで大げさなほどに周囲の礼賛を浴びる、ということはおそらくまれであると思う。真に優れた仕事かどうかは、地動説の例を挙げるまでもなく、後世の判断を待たねばならないだろう。一説によると、優れた仕事ほど高い評価を得るには長い時間がかかるという。だが逆に言えば、生はその場限りで終わりではなく、〝託す〟ことにより続いていくということである。

生は続くのである。そう考えると、死への恐怖も和らぐのではないだろうか。

■参考資料

■宇野重規『希望学1 希望を語る』東京大学出版会、2009年
■魚豊『チ。―地球の運動について―』小学館、2020年

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