「鎌倉殿の13人」心を開きかけた頼家だが…第29回放送「ままならぬ玉」振り返り

Japaaan

「鎌倉殿の13人」心を開きかけた頼家だが…第29回放送「ままならぬ玉」振り返り

時連「いさめるだけではなく、解って差し上げることも大事です」

政子「信じないけど、信じたいのです」

義時「お父上を超えたいのなら、人を信じるところから始めてはいかがでしょう」

鎌倉殿の重責に思い悩み、孤独に暴走する源頼家(演:金子大地)が、ようやく心を開きそうだったのに……。

呪詛に用いた人形(ヒトガタ)の一つが発見されてしまったことにより、阿野全成(演:新納慎也)が窮地に陥る前の箸休めと言ったところでしょうか。

ほのぼのする場面が来たら、後には悲劇的が待っているもの……NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」第29回放送「ままならぬ玉」。今週も振り返っていきましょう。

義時は中身を「見ました?」…善児の天運やいかに

梶原景時(演:中村獅童)が武士らしく紀行死(きこうし。本編ではなく、大河紀行での言及により死亡すること)を遂げ、ずらりと並ぶ首桶から本編が始まりました。

首級の一つに結ばれた「梶原平三景時」の首札が物悲しいですね(見たところ首桶は5つですが、景時と息子たち上から4名でしょうか)。

さて、景時を喪ったことで北条と比企の対立がますます激化するその前に、北条義時(演:小栗旬)は雑色の善児(演:梶原善)を呼びました。

善児「見ました?」

義時が善児に手渡した袋(景時が義時に渡したもの)の中には、かつて善児が暗殺した義時の兄・北条宗時(演:片岡愛之助)の遺品。

袋の中身、きっと義時は見ている(イメージ)

義時「見てはおらぬ。何が入っていた?」

質問に対して、善児は「あの方(景時)も人が悪い。わしの天運を試そうとなさった」とのこと。

もし義時が袋の中身を確認していれば、宗時を善児が殺したことがバレてしまうからです。

とりあえず命拾いした善児ですが、本当に義時が善児に託した袋を見なかったとは思えません。

思い出して下さい。義時は以前、巴御前(演:秋元才加)が持参した源義高(演:市川染五郎)あての書状を面前で検閲しています。

では、なぜ義時は善児を殺さないのでしょうか。

周到な景時のことですから、袋の中には遺品だけでなく、必ず「善児が宗時を殺した」旨のメモなりが入っていたはず。

まぁ考えるまでもなく「善児にまだ利用価値があるから」に他なりません。

しかし善児は「わしも歳をとったので、二代目です」と自身が育てたトウ(演:山本千尋)を連れて来ます。

背景は不明ながら、恐らくは修善寺で源範頼(演:迫田孝也)らを殺した際、一人だけ見逃したらしい村娘でしょう。

その内に彼女が善児に替わり得る=用済みと判断した時、善児は惨たらしく殺されるものと予想します。

それまであと何人屠るのか、実に楽しみですね。

三浦義澄・安達盛長それぞれの最期

「次郎!」

景時が討たれて3日後、宿老の一人である三浦義澄(演:佐藤B作)が亡くなりました。

「死んだ後のことは、正直どうでもいい」

ずっと悪友だった次郎(義澄・左)と四郎(時政・右)。

力なく言い放つ義澄でしたが、やはり一人で逝くのは寂しいのか、幼なじみの北条時政(演:坂東彌十郎)が駆けつけると目を見開きます。

「一緒に逝こう!一緒に逝こう!」

「馬鹿言え!」

必死にすがられ、とっさに突き飛ばしてしまった時政。倒れた義澄はそのまま事切れてしまいました。

まぁ、仕方ないですよね。だって時政には可愛い奥さんがいるのですから。

とは言え、良心の呵責は重くのしかかりそうです。

また、その3ヶ月後には安達盛長(演:野添義弘)も往生を遂げようとしていました。

安達藤九郎盛長。誰よりも頼朝に近く、忠義を尽くした一人。『集古十種』より

「私が死んだら、頼朝様のそばに、ほんのちょっとでいい。小指の先で構わん。埋めてやってはもらえんか」

流人時代からずっと頼朝に仕え続け、誰よりもそば近くに寄り添っていた藤九郎の健気な姿は、まさに鎌倉殿の良心でした。

義時「何とかいたしましょう」

藤九郎の忠義に心打たれた義時の答えは、本当に何とかしてあげたいという誠意に満ちたもの。

殺伐とした日々の中で、本当に心安らかなひとときでした。

もしかしたら、頼朝公の墓の周りのどこかに、藤九郎の小指の先が埋まっているのかも知れませんね。

合議制は形骸化、比企と北条の対立が深刻に

さて、景時・義澄・盛長そして出家した中原親能(演:川島潤哉)が相次いで抜けた結果、鎌倉殿の13人は早くも9人に。

「これからは、好きにやらせてもらう」

そう豪語する頼家に、比企能員(演:佐藤二朗)は釘を刺します。

「比企能員に万事お任せあれ。その上で、お好きになさるがよろしい」

合議制はもはや形骸化し、比企一族が鎌倉を牛耳ろうと野心をむき出しに。頼家の強がりつつも忸怩たる思いをにじませた表情が印象に残りました。

このままでは権力争いを止められないと危惧した義時と尼御台・政子(演:小池栄子)は、時政を国守に推挙させます。

国守任官に喜ぶ時政(イメージ)『武者鑑』より

「これで北条は名実ともに御家人の筆頭。比企にようやく一矢報いることができます」

そう比企への対抗意識を燃やすりく(演:宮沢りえ。牧の方)に対して、義時と政子が釘を刺しました。

「父上。国守へのお取り立てをお願いしたのは、御家人に範を示しこの鎌倉を守っていただきたいからです」

「比企がどうのとか、もう忘れて下さい」

ただの戯れ言と笑う時政とりくでしたが、これで収まる二人ではありません。

後に義時と政子、時政とりくの対立が深まっていくのですが、これがその幕開けとなっていきます。

鎌倉殿の呪詛を引き受けてしまう全成

「こうなったら、少々乱暴な手を使ってでも」

義時らに叱られて?も懲りないりくと時政は、娘婿の全成に頼家の呪詛を依頼しました。
「命まで取ろうとは思っていません。ただほんのちょっと、病に臥せっていただければいいのです」

そうすれば、北条方で抱え込んでいる千幡(せんまん。政子の子で、乳父は全成)を後継ぎに擁立できるチャンスが出てきます。

普通ならここで断ればいい話ですが、妻の実衣(演:宮澤エマ。阿波局)にいい暮らしをさせてやりたい一心で呪詛を引き受けてしまった全成。

事の重大さに呆然とする全成は、実衣が息子・阿野頼全(あの らいぜん)から届いた手紙を読んでくれても上の空です。

ところで、前に生まれた子供は嫡男(母親が実衣=阿波局と判明している子)の阿野時元(ときもと)ではなく頼全だったんですね。

全成には頼全より前に阿野頼保(らいほう/よりやす)・阿野頼高(らいこう/よりたか)という子(いずれも生母不明)を授かっていますが、この頼全は父親と同時期に殺されているため、大河ドラマ的には都合がよかったのでしょう。

鎌倉殿を呪詛する全成。果たして、効き目のほどは……(イメージ)

ともあれ呪詛を始めたものの、例によって?あまり効き目がなく、りくから「この役立たず!」と叱られているのが哀れでしたね。

「怨敵退散かんまんぼろん、怨敵退散かんまんぼろん……」

怪しい人形(ヒトガタ)を実衣が見かけて、それを義時に話したことで呪詛が発覚(実衣は「小娘じゃあるまいし……」と、自分へのプレゼントだと思っていた模様)。

「余計なことはもうやめていただきたい!」

「比企と争う時は終わったのです」

むしろこれからが本番なのですが、果たして義時に止めることが出来るのでしょうか。

大真面目に頑張る頼時改め泰時、踏んだり蹴ったり奮闘中

「伊豆へ行ってくれないか」

江間太郎頼時(演:坂口健太郎)は義時から飢饉に苦しむ領民たちが逃げ出さないよう「何とかせよ」と命じられました。

頼時の成長に伴い、父親であり上司でもある義時もだんだん貫録がついてきたようです。戸惑う頼時に、叔父の北条時連(演:瀬戸康史)も口添えします。

「何とかしろと言われたら何とかする。お前の父上も、そうやってずっと何とかしてきた」

「何とかしてみます」ここから頼時の伝説が始まる(イメージ)

「何とかしてみます」と退出する頼時。時連は頼家から疎まれている頼時に距離をとらせようと考えていました。

「いさめるだけではなく、解って差し上げることも大事です(次の瞬間、笑みを作って)私は、そう思うな」

硬軟を巧みに使い分ける弟の成長に、義時が感じ入っていたのが、その微妙な表情から読み取れます。

これが後に頼家と蹴鞠(と古井戸転落事件)を通じて距離を縮めるキッカケになったのでしょう。

一方の頼時は父からの指令を受けてやる気満々ですが、(演:福地桃子)から「あなたのそういうところ、息が詰まる」と言われてショックを受けます。堅物を絵に描いたような頼時に対して、要領のいい三浦義村(演:山本耕史)の娘らしい雰囲気ですね。

「父上を見習って真面目に生きようとやってまいりました。それをつまらないと言われると……」

落ち込んでいる頼時を、義時は人生の先輩として励まします。

「分かっていないな、女子というものを。初は寂しかったんだ。一人残されるのが。だからわざとそういうことを言うのだ」

「山ほど土産を抱えて帰ってくれば機嫌を直してくれる」

まぁ、ここまではよかったんですが……。

「いいことを教えてやろう。女子というものはな、大体きのこが大好きなんだ」

頼時改め泰時が持ってきたきのこの山の一部(イメージ)

義時は八重さん(演:新垣結衣)の件で懲りていなかった(あるいは結果オーライだったから、思い出が美化されてしまった)ようです。

これを真に受けた頼時は、山のようなきのこを土産に持って帰り、すべて突き返されると踏んだり蹴ったり。名前も勝手に頼時から泰時に変えられてしまうなど、もう散々でした。

所領の地図に線引きし、僧侶の黒衣をはぎとる頼家

頼時改め泰時の思い切った決断と窮民からの評判に対して、苛立ちを見せる頼家。

「これで百姓たちは証文をないがしろにする」

確かに困ったからと言っていちいち証文を破り捨てていては、契約が成り立たなくなってしまいます。まぁ、あくまでも窮余の策ということで。

早くも後に名執権となる兆しを見せる泰時に対して、頼家の暴挙は続きました。

畠山重忠(演:中川大志)が頼家に裁可を仰いだ陸奥国葛岡の新熊野社(いまくまのしゃ)における所領争い。これは『吾妻鏡』に元ネタがあります。

陸奥國葛岡郡新熊野社僧論坊領境。兩方帶文書。望惣地頭畠山次郎重忠成敗。重忠辞云。當社雖在領内。秀衡管領之時。令致公家御祈祷。今又奉祈武門繁榮之上。重忠難自專者。則付大夫属入道善信擧申之。仍今日羽林召覽彼所進境繪圖。染御自筆。令曳墨於其繪圖中央給訖。所之廣狹。可任其身運否。費使節之暇。不能令實檢地下。向後於境相論事者。如此可有御成敗。若於存未盡由之族者。不可致其相論之旨。被仰下云々。

※『吾妻鏡』正治2年(1200年)5月28日条

内容はだいたい大河ドラマと同じ。絵図の真ん中にビシャッと筆で線を引き「所領争いなんてこれでいいんだよ。どっちが広くても運次第、いちいち実地検分だのしゃらくせぇ。文句あるか!(意訳)」と言い放ちました。

「坊主のくせに、所領争いなんて欲深な奴らめ……」頼家にかかれば一筆で両断(イメージ)

前に愚痴っていた「くだらぬもめごとが多くて、うんざりします」の答えがこれ。苦労知らずな頼家にとって、土地の広い狭いで争ったり、煩雑な事務手続きが心底鬱陶しかったのでしょう。

「好きにさせてもらったぞ」

そう比企能員に言い放つ頼家。さすがに乱暴すぎるきらいはあるものの、業務の効率化を図りたい意欲と即断力は、一定の評価があってもいいかも知れませんね。

また、念仏僧を捕らえた場面についても『吾妻鏡』に言及があります。

「その忌まわしい衣をむしり取り、鎌倉から放り出せ!」

羽林令禁断念佛名僧等給。是令惡黒衣給之故云々。仍今日召聚件僧等十四人。應恩喚云々。然間。比企弥四郎奉仰相具之。行向政所橋邊。剥取袈裟被燒之。見者如堵。皆莫不彈指……

※『吾妻鏡』正治2年(1200年)5月12日条

頼家(羽林)は念仏僧の活動を禁じました。その理由は「黒衣が気に入らない」からだとか。比企弥四郎(演:成田瑛基)に命じて念仏僧14名を連行させ、政所の橋(現:筋違橋)の辺りでその黒衣を奪って焼き捨てさせたのでした。

黒衣の念仏僧たち(イメージ)

なぜ黒衣が気に入らないのかと言えば、自身が朝廷から着用を許された束帯(そくたい。朝廷に出仕する際の正装)の色が黒で、これと同じだからとのこと。

何と罰当たりなことを……その様子を見ていた野次馬たちは、災難除けとして指を弾かないものはいなかったとか(いわゆる指パッチンが災難除けとされていたようです)。

劇中では時連の諫言によって死一等を減じ、鎌倉からの追放で済みました。さすがに史実以上の悪人には描かないようでホッとしました。

次週・第30回放送「全成の確率」

人を信じまいと孤独に苦しんでいた頼家に光明が差したと思ったら、一つだけ回収し忘れていた?人形(ヒトガタ)によって呪詛が発覚。

呪詛に用いられたヒトガタ「一つ要る?」「要らない!」(イメージ)

心当たりは一人しかいない……ということで、とうぜん全成に容疑がかかってしまいます。

次回のサブタイトルは「全成の確率」。これは前に言っていた「自分の呪詛は半々しか成功しない」というセリフを受けたもので、もしかしたらこれが頼家に「当たってしまう」のでしょうか。

(もちろん、外れたからと言って鎌倉殿を呪詛したこと自体が大罪ですが……)

全成が実衣に言っていた「やっぱり、お前は赤がよく似合う」というセリフ。二人が意識し合ったキッカケであり、晩年の頼朝が嫌うからと身に着けていなかった赤い髪留め。

確かこの色は彼女にとってラッキーカラーでもあり、そのお陰で彼女だけは助かるという暗示なのかも知れませんね。

果たして全成は助かるのか、そして比企と北条の対立はどうなっていくのか。来週も手に汗握る展開に、覚悟を決めて見届けましょう。

※参考文献:

『NHK大河ドラマ・ガイド 鎌倉殿の13人 後編』NHK出版、2022年6月 『NHK2022年大河ドラマ 鎌倉殿の13人 続・完全読本』産経新聞出版、2022年5月

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