雨が降ったときのみ現れる「幽霊の足跡」ユタ州の砂漠で1万年以上前の古代狩猟民族の足跡を発見

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雨が降ったときのみ現れる「幽霊の足跡」ユタ州の砂漠で1万年以上前の古代狩猟民族の足跡を発見
雨が降ったときのみ現れる「幽霊の足跡」ユタ州の砂漠で1万年以上前の古代狩猟民族の足跡を発見

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image credit:R. Nial Bradshaw

 アメリカ、ユタ州の砂漠の塩原で謎めいた"幽霊の足跡"が発見された。

 "幽霊"などという不気味な名前の由来は、これが本当に幽霊の足跡だからではない。雨が降ると、足跡が目に見えるようになるが、太陽の下で乾くと、消えてしまうという不思議な現象があるからだ。

 この足跡は約1万年以上前の古代狩猟民族のものと考えられている。

・ユタ州の砂漠で偶然発見した88個の「幽霊の足跡」
 2022年7月初旬、ユタ州、グレートソルトレーク砂漠にあるヒル空軍基地で一時勤務していた考古学者らは、近くの遺跡に向かって車を走らせていたとき、偶然にこの足跡を発見した。

 最初は、数個の足跡しか見つからなかったが、地中レーダー(GPR)を使って周辺を調べたところ、成人から5歳ほどの子どもを含む88個の足跡が見つかった。

 GPRレーダーとは、地面に向けて電波を発射して、地表に埋もれている物体からの跳ね返りを探知し発見する技術だ。

 この幽霊の足跡は、少なくとも1万年ほど前、この地域がまだ広大な湿地帯だった頃に、人間が残したものだ。

 だが、研究者たちは、この足跡は1万2000年前の更新世時代(260万年前から1万1700年前)の氷河期の終わりの時期にさかのぼる可能性があると考えている。

 「これほどたくさんの古代人の足跡の発見は、一生に一度あるかないかのことだ」と言うのは、ヒル空軍基地の文化資源管理者アーニャ・キッターマン氏。「私たちは予想以上のものを見つけることができました」

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幽霊の足跡のそばに立つ研究者たち / image credit:R. Nial Bradshaw・かつて塩湖だった砂漠には1万年前まで人間が住んでいた
 かつてグレートソルトレイク砂漠は、西半球最大の塩湖である近くのグレートソルトレイクと同じような広大な塩湖だった。

 氷河期最後の気候変動のせいで、古代の湖がゆっくりと干上がり、水に溶けていた塩だけが残された。

 湖から乾燥した塩原へと移行する間、この地域は一時的に広大な湿地帯となり、1万年前まで人間が住んでいたという。

 この間に、完璧な幽霊の足跡ができる絶好の条件が整ったのだという。

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これら足跡がどれくらい古いものなのか、正確に割り出すために分析が続けられている。 / image credit:R. Nial Bradshaw・雨が降ると現れ、乾くと消えてしまう
 当時の人々は、水が浅くたまったこの湿地を歩いていたのだろう。ビーチでよくあるように、歩くそばから泥のぬかるみの中に足跡が残り、そこにすぐにまわりの砂が流れ込んだことで、足形がかたどられたままの形で残ったのだと、考古学者のダロン・デューク氏は言う。

 その後、湿地帯が乾燥するにつれて、足跡は残った塩で埋められ、完全に乾燥すると周囲の風景と区別がつかなくなったのだという。

 通常、雨が降ると、水はたちまちまわりの堆積物の奥深くまで吸収され、地面はすぐにもとの色に戻る。だが、表層に隠れていた泥の足跡の上に雨が降ると、そこに水が閉じこめられ、そこだけ黒く湿った色になって、容易に周囲と区別がつくようになる。

 前回の調査中に、これら足跡が見つかった場所から1.6キロ足らずのところで、1万2000年前の狩猟採集民族のキャンプ跡が発見された。

 今回の足跡を残したと思われる人たちがそこに住んでいた可能性がある。炉床の跡、料理に使ったと思われる石器、2000個以上の動物の骨の山、さらに炭化したタバコの種なども見つかり、これは人類がタバコを吸っていた最古の証拠といえる。

 今回見つかった足跡の正確な年代を特定するために、いくつかの足跡を採取した。放射線炭素年代測定法を使って、足跡の持ち主の足が周囲の堆積物に有機物を残した可能性があるかどうか、分析できることを研究者たちは期待している。

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image credit:R. Nial Bradshaw・昨年も発見された古代人類の足跡
 このあたりは、古代人類が歩いたと思われる道がたくさん見つかっている非常に興味深い場所だ。

 2021年9月、ニューメキシコ州ホワイトサンズ国立公園にある60個の人間の足跡が、2万1000年~2万3000年前のものであることが明らかになり、アメリカ大陸における最古の人類の明確な証拠だということがわかった。これらの足跡は、やはりGPRを利用して発見された。

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ホワイト サンズ国立公園で発見されました人間の足跡。これらは、足跡に埋め込まれた自生植物の種子のおかげで年代が分かった / image credit:Bournemouth University

「私たちは長い間、ホワイトサンズのような場所がほかにもあるのではないか、ほかの遺跡でもGPRで効果的に足跡を撮影できるのではないか、と考えてきました」GPR調査技術を開発したコーネル大学の考古学者トーマス・アーバン氏は言う。

「答えは、両方ともイエスでした」

 こうした発見は、その地域に人間が定住していたことを示す直接的な証拠で、近隣のほかの考古学的発見よりもはるかに実感として感じられるため、重要なのだという。
そこにある、紛れもなく人間が残した足跡の痕跡を見ることは、直接に人間そのものにつながるものなのです。

現在とはまるで違う、遠い過去に残された足跡を調べるのは、本当に衝撃的なことでもあるのです


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ホワイトサンズ国立公園にかつて存在した先史時代の湖を描いた絵 / image credit:Bournemouth University
References:Archaeologists discover more pieces of the ancient past on UTTR Air Force Life Cycle Management Center / written by konohazuku / edited by / parumo


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