人間の筋肉遺伝子を移植したパン酵母が開発される (1/3ページ)
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パンやビールなど、食卓でお馴染みの食品は「酵母(イースト菌)」の力で作られている。そんな私たちにとって身近な酵母に人間の筋肉遺伝子を移植し、「ヒト化」させるた科学者たちがいる。
オランダ、デルフト工科大学のパスカル・ダラン=ラプジャード氏らは、世界で初めて酵母に「ヒト筋肉遺伝子」を組み込むことに成功したそうだ。
ヒト化酵母は人間の細胞モデルとして利用することができ、薬剤スクリーニングやがんの研究などに役立つそうだ。
この研究は学術誌『Cell Reports』(2022年6月28日付)で報告された。
・人間と酵母に類似点
ダラン=ラプジャード氏によると、人間と酵母にはいくつもの類似点があるという。「不思議に思うかもしれない。単細胞の酵母に対して、人間はずっと複雑な生き物だ。それでも非常に似た方法で機能している」
酵母の細胞は人間に似ている一方、単純な作りなので、余計な相互作用で掻き乱されることもない。
分析しやすいクリーンな環境なのだ。だから科学の研究では、これまでもしばしば人間の遺伝子が酵母に移植されてきた。
「ヒト細胞や組織に比べて、酵母は単純なので、成長させやすく遺伝子も利用しやすい。本質的な疑問に答えるため、DNAを簡単に改変できるのだ」と、ダラン=ラプジャード氏は説明する。