「鎌倉殿の13人」頼家&善児ロス続出、そしてがんばれ泰時…第33回放送「修善寺」振り返り

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「鎌倉殿の13人」頼家&善児ロス続出、そしてがんばれ泰時…第33回放送「修善寺」振り返り

御家人たちから見放され、修善寺に流されてもなお再起を図った源頼家(演:金子大地)。挙げ句の果てには後鳥羽上皇(演:尾上松也)に北条追討の院宣を求めたために粛清されてしまいます。

北条義時(演:小栗旬)の命によって猿楽一座に紛れ込んだ善児(演:梶原善)を返り討ちにしたのも束の間、弟子のトウ(演:山本千尋)に止めを刺されてしまいました。

さて、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」。第33回放送は「修善寺」。頼家が殺された地名と、善児の最期(終善児?)をかけるサブタイトルでした。

増長する北条一族と周囲の反感、そこへつけ入る朝廷の魔手……ますます面白くなってきましたね。

それでは、今週もピックアップしていきましょう。

北条の増長と御家人たちの反発

執権別当として御家人たちの頂点に上り詰めた北条時政(演:坂東彌十郎)。西国の御家人たちに忠誠を誓う起請文を書かせるなど、権力基盤の確保に余念がありません。

しかし武蔵守への推挙を求めるとなると、当地を本拠とする畠山重忠(演:中川大志)や足立遠元(演:大野泰広)らは気が気でない様子。

「何も独り占めしようと言うのではない」

とは言うものの、そんな言葉があてにならないことは明らか。比企能員(演:佐藤二朗)の暗殺と言い、あまりに強引かつ汚いやり口に周囲の反感を買っていました。

武蔵国をめぐって利害が対立する時政と重忠。豊原国周筆

「あまり調子に乗ると、いつかしっぺ返しを食らうぞ。親父にそう言っとけ」

三浦義村(演:山本耕史)の忠告が時政の末路を予感させますが、一方りく(演:宮沢りえ。牧の方)はどこ吹く風。

「……北条は今や仇持ち、身を守るためには兵は大いに越したことはありません」

怨みを買っていることなど百も承知。周囲との協調など念頭になく、逆らう者とは全面対決を辞さない(というより、それを前提としている)姿勢に、天下に名高い悪女ぶりが表れていました。

そんなりくに煽り立てられる時政の危うさを察知しながら、それを諫めはしない義時に違和感を覚えます。このままだと畠山との衝突は避けられないものの、内心「父を(畠山粛清の)汚れ役に利用しよう」とでも考えているのでしょうか。

史実では重忠討伐に反対しているため、さすがに考えすぎだと思いますが……。

朝廷から送り込まれる御台所と教育係

さて、北条一族の増長を喜ばないのは朝廷でも同じ。

たくさんの州浜(すはま。ここではジオラマ)を作らせ、各地の景勝を楽しむ後鳥羽上皇。これは内裏、これは吉野の桜……そんな片隅に富士山の麓へへばりつくようなボロ家が一軒。これは鎌倉とのことで、よほど見下しているようです。

ちなみに劇中では言及がなかったものの、ボロ家の前に停泊している大きな帆船は、もしかして後に源実朝(演:峯岸煌桜)が宋(中国大陸)へ渡る夢を暗示しているのでしょうか。

朝廷に取り入る朝雅(イメージ)

鎌倉から使者にやってきた平賀朝雅(演:山中崇)を軽くあしらい、後鳥羽上皇は坊門信清(ぼうもん のぶきよ)の娘(坊門姫)を嫁がせるよう差配します。

喜び退出する朝雅に代わって入ってきた源仲章(演:生田斗真)の報告に、後鳥羽上皇は怒りを露わに。

「源氏は我が忠臣。その棟梁の座を坂東の田舎侍によいようにされるなどもっての外」

仲章「いっそ北条を潰されますか」

「実朝は大事な駒じゃ。やつらに取り込まれぬよう導くのじゃ」

実朝の名づけ親として、北条の傀儡(かいらい。操り人形)とならぬよう=朝廷の意に従うよう教育係として仲章が鎌倉へ送り込まれるのでした。

やがて鎌倉へ嫁いでくる坊門姫ともども、油断ならない存在となることでしょう。

実朝と和歌と母と乳母たち

そのころ、鎌倉では実朝の教育方針をめぐって尼御台・政子(演:小池栄子)と乳母の実衣(演:宮澤エマ)が対立します。

我が子が政争に巻き込まれないよう、早く鎌倉殿から退いて豊かな感性のまま和歌を楽しんで欲しいと願う政子。それに対して「自分が育てたのだから」と実朝を権力の道具にしたい本音が透けて見える実衣は平行線をたどりました。

政子の思いを受けた三善康信(演:小林隆。善信入道)はさっそく実朝に和歌の楽しさを伝えようと講義したものの、現れた実衣と仲章に撃退されてしまいます。

実朝に和歌の講義をする康信(イメージ)

ててててて、てててててててて……まずはリズムを楽しみ、感じるままに花鳥風月の美しさを詠むことを伝えたい康信に対し、和歌はあくまでも天子(天皇陛下)の崇高な理念(世のあるべき姿や臣民の幸せなど)を謳う政治の道具であると切り捨てる仲章。

確かに正論なのですが、いきなりそのレベルを求めるのは酷であるのと共に、崇高な理念を美しく謳う根源となる感性を養ってこそ歌才は開花するもの。

実朝をただ「都文化のうわべに憧れ、朝廷の言いなりになるロボット」としてスポイルしたいのか、あるいは単にドラマの嫌なヤツ演出なのかは分かりませんが、フィクションながらとても残念に思いました(せっかく実朝が面白がってくれそうだったのに……)。

ただし後世に伝わる実朝の歌風を見ると、万葉集を思わせるのびのびとした作品が多く、幼少時に軒の雨だれを一晩中眺めていた感性が損なわれていなかったのだと嬉しくなります(そのエピソードは多分フィクションですが)。

時により 過ぐれば民の 嘆きなり
八大龍王 雨やめたまへ

※実朝の歌集『金槐和歌集』より

【意訳】恵みの雨も、多すぎれば民の嘆きとなる。龍神様、そろそろ雨を止めてください

豊かな感性と民を想う君主の心が調和した代表作の一つで、当時はあまり評価が高くなかったものの、その優しさと政治的意欲が偲ばれます。

時に、知的でハンサムな仲章と何だかいい感じ?な実衣ですが、そやつはかつて愛息(という設定)の頼全(演:小林櫂人)を殺害した張本人。恐らく知らないのでしょう。

そもそも京都から派遣されてきた時点で警戒して然るべきところを、その脇の甘さが政子との差として浮き彫りになっています。

果たして真相を知った実衣がどんな顔になるのか(知らないまま済ませてもよさげですが、わざわざ描写した以上、張った伏線は回収して欲しいところ)……今から楽しみですね!

頼家を取り巻く大人たち

「わしを忘れぬよう、こうして喧嘩を売ってやるのよ」

修善寺でそう嘯く頼家。しかし使者に訪れた義村は相手にしません。

かつて石橋山の合戦で敗れ、生死をさまよいながら2ヶ月足らずで鎌倉入りを果たした亡父・源頼朝(演:大泉洋)の再現を夢見るものの、時代も状況も違います。

鎌倉殿の権威・権力が御家人たちの忠誠あってのものと知っていれば、そもそもこんな事にはなっていなかったでしょうが。

「この先何十年、猿楽くらいしか慰めもないまま暮らすことを考えれば、華々しく散るのも悪くはないかも知れません。おやりなさい」

「鎌倉を火の海にしてやる」と息巻く頼家だが、それを望む御家人が果たしているだろうか(イメージ)

そうけしかけるものの、声と態度には「そうやって一生駄々をこねてろ」と言わんばかりの本音が透けて見えます。

対する政子は頼家の好物であるアワビの干物を山ほど……それはもう山ほど。いくら何でも多すぎでしょう。義時&泰時父子の茸と言い、北条ファミリーは贈り物を山盛りにするのが好きなようです。

門前払いにされても「頼家の身になれば当然のこと」「元気とわかればそれで充分」などと健気すぎる態度を見せていました。

誰もが見捨てた頼家を、ただひとり最後まで愛し続けた政子の姿は、かつて危篤に陥った頼朝に対しても同じでしたね。

ところで気になった亡き一幡(演:相沢壮太)とせつ(演:山谷花純)の遺骨。骨壺に貼られた名札が哀れを誘いますが、内心「その遺骨、本当に本人のものですか?適当に犬の骨でも渡されていませんか?」と勘繰ってしまうのは、きっと筆者だけではないはずです。

がんばれ泰時

「鎌倉を追い出し修善寺に閉じ込め、それでもまだ足りぬというのですか!」

近ごろ父のやり方に納得いかず、全力で抗議を続ける北条泰時(演:坂口健太郎)。一度は殴りつけていた義時ですが、かつての自分を見ているようでなかなか留めきれません。

15年ぶりに再会した運慶(演:相島一之)から「悪い顔になったな」と図星を射られ、その迷いを指摘された時の表情は、なかなかに絶妙でした。

善児が持っていた兄・北条宗時(演:片岡愛之助)の遺品からすべてを悟りながら、「善児を責められようか」と漏らしたセリフにも、その葛藤が表れています。

悩む兄を見て、北条時房(演:瀬戸康史)は「私は泰時と逆でありたい」と汚れ役を引き受ける決意を伝え……たものの、義時は聞いていません。でもこれが後に連署(れんしょ。執権を補佐する役職)として泰時を支える原点となったのでしょう。

頼家を逃がすべく駆けつけた泰時(イメージ)

さて、父たちの暗殺計画を伝え、逃げるように訴えた泰時。「北条の者には誰とも会わない」と頑なになっていた頼家ですが、泰時の真正直なところだけは信じていたようです。

しかし頼家は逃げません。結局殺されるなら、正々堂々戦って死のうと覚悟を決めた姿はまさしく武家の棟梁でした。

果たして京都から呼んだ猿楽一座の中に紛れ込んだ善児(笛を吹いているはずなのに、指がまったく動いていない)を見抜き、頼家を守るべく立ち向かった泰時。しかし力量の差はいかんともしがたく、トウにぶっ飛ばされてしまいます。

泰時を助けようと加勢に入った鶴丸(演:きづき)もまとめてぶっ飛ばされてしまい、気がついたら頼家は既に殺された後でした。

誰もいない舞台でただ独り転がる姿は、後に衆人環視の中で討たれる実朝と対照的。頼家を守れなかった無力感にむせび泣く泰時に、声援を送らずにはいられません。

後に承久の乱で総大将として勝利をつかみ、名執権となるまでの道のりはまだまだ遠いのでした。

終わりに・第34回放送「理想の結婚」

骨壺から剥がれた「一幡」の名札に動揺して「しくじった」善児。恐らく文字も知らなかったのに、一幡が手習いしている文字の形を見て覚えてしまったのでしょう。

「この時を待っていた……父の仇!……母の仇」

トウに刺されて絶命する善児。その表情は、いつかこの日が来ることを待っていたようにも見えました。あるいは一幡の元へ逝けると信じていたのかも知れません。

これまで数々の暗殺に手を染めた善児の最期は、多くの視聴者の震わせたことでしょう(何なら頼家の死よりも反響が大きかった印象)。

さて、次週放送の第34回は「理想の結婚」。サブタイトルの主人公は実朝と坊門姫と思われますが、わざわざ「理想の結婚」なんて書くくらいですから、理想とはむしろ真逆の結婚劇が見られそうです。

果たして実朝・義時のお相手は(イメージ)

また、そろそろ義時に「第3の女」が現れます。彼女の名前はのえ(演:菊池凛子)、『吾妻鏡』などでは伊賀の方(伊賀氏)と呼ばれ、やがて北条政村(まさむら。義時の五男)と北条実義(さねよし。後に北条実泰、同六男)を生みました。

そしてちょっと史実とは違います(遅れています)が、泰時と(演:福地桃子。矢部禅尼)もこの辺で結婚しそうです。

義村「女子(おなご)との後腐れない別れ方について」

なんて言っており、泰時と初が後に離縁している史実をほのめかしているのでしょうか。

実朝、義時(再々婚)そして泰時?……次回はちょっと箸休め的な展開が予想されます。ただし例によって油断は禁物、心して見守りましょう。

※参考文献:

坂井孝一『鎌倉殿と執権北条氏 義時はいかに朝廷を乗り越えたか』NHK出版、2021年9月 佐藤和彦ら編『吾妻鏡事典』東京堂出版、2007年8月

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