「初めての書き方をした」 万城目ワールド全開『あの子とQ』はどのように生まれたのか (4/4ページ)

新刊JP

もともとはちょっとだけ出てくる人物だったのに、結果的にしゃべり倒しています。

■今の若者のリアルではなく、普遍的な「青春」を描く

――弓子をはじめとした高校生4人についてお伺いしたいのですが、まず「高校2年生」という年齢の人物を描くうえで意識した点はありますか?

万城目:高校2年生というと、一番普遍的な高校生活を背景にできると思ったんです。学校があって、部活があって、受験はまだ先で、という。高校生活の普遍的な部分というのは、おそらく70年代くらいから変わっていないので、「今の若者を描く」という感覚はなかったんですよね。学園を舞台にしたコメディを書いているという感じがありました。

――確かに「今の若者のリアル」ではなく、大人でもこの世界に入り込める、共通した青春の部分が物語の中にありました。弓子が当事者ではないけれど、ちゃんと「恋」の部分も入っていて。

万城目:弓子の友達のヨッちゃんの恋ですからね(笑)。でも、書店員さんの感想を読ませていただいたら、「きゅんとした恋愛あり」と書いてあったりするので、ノスタルジーに触れるものがあるのだと思います。友達の恋愛を見守った経験があるとか。

だから、この小説で描かれている青春はどれも普遍的な要素です。学校の様子、部活の様子、男女がとっかかりのないところから一歩踏み出す様子、読者の中のどこかにそれと似た記憶があって、本を読むと不意に思い出すところがあるのだと思います。

――弓子ではなく、弓子の友達の恋にしたのはなぜですか?

万城目:確かに弓子が人間の男の子を好きになって、その相手が物語の大事な部分を担う選択肢も思い浮かべましたが、それだと話が重くなりすぎるんですよね。弓子には吸血鬼という立場から、Qと対峙してほしいし、友達が好きな男の子の方が、物語としては良いと思いました。

――あくまで弓子とQの物語である、と。

万城目:『あの子とQ』ですからね。

――実は、高校生組の中で、弓子の他にも吸血鬼がいるのではないかと勘繰って読んでいました。その中で吸血鬼のキャラクターに共通する点があることに気づきまして。

万城目:鋭い読み方をしていますね(笑)。ある共通点を仕込んだのですが、そうなると高校生組にも一人、あやしい人物がいるんですよ。ヒントは「きゅう」と読めるか否かですね。

(後編に続く)

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