「鎌倉殿の13人」ついに牧氏の変、くすぶる余燼…第38回「時を継ぐ者」予習

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「鎌倉殿の13人」ついに牧氏の変、くすぶる余燼…第38回「時を継ぐ者」予習

執権・北条時政(演:坂東彌十郎)、謀叛。

愛妻りく(演:宮沢りえ。牧の方)とどこまでも添い遂げるべく、勝算のない謀叛を決行してしまう時政。

鎌倉殿・源実朝(演:柿澤勇人)に白刃を突きつけてしまった父を、北条義時(演:小栗旬)はどのように処断するのでしょうか。

NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」、第38回放送のサブタイトルは「時を継ぐ者」。時代は時政から子供の義時・北条時房(演:瀬戸康史)そして政子(演:小池栄子)たちへと移り変わります。

「時を継ぐ者」北条義時。守川周重筆

時政の失脚につながった謀叛「牧氏の変」は既に紹介したので、略年表で振り返りましょう。

元久2年(1205年)
閏7月19日
牧の方による実朝暗殺計画が発覚。急ぎ救出し、時政は出家する。
閏7月20日
時政らが伊豆へ下向(実質的に鎌倉を追放される)。
この日をもって義時が執権となる。
三善康信(演:小林隆)・安達景盛(演:新名基浩)らと相談して平賀朝雅(演:山中崇)討伐を決定、京都の御家人に使者を派遣。
閏7月25日
鎌倉の使者が京都に到着する。
閏7月26日
平賀朝雅が御家人たちの襲撃を受けて殺される。
8月2日
京都から使者が戻り、平賀朝雅の討伐を報告する。
8月5日
大岡時親(おおおか ときちか。牧の方の兄)が時政の連帯責任で出家する。

※牧氏の変について:

「鎌倉殿の13人」時政・りくの謀叛計画「牧氏の変」を慈円はこう見た。第37回放送「オンベレブンビンバ」予習

「鎌倉殿の13人」畠山重忠を始末した時政・りく夫婦。しかし…第36回「武士の鑑」予習

……たぶん次回放送はこの辺(時政夫婦の追放と平賀朝雅の暗殺)までかも知れません。ただし「牧氏の変」にはまだ余波があり、時政の娘婿の一人・宇都宮頼綱(うつのみや よりつな)に謀叛が発覚するのです。

今回はこの騒動について紹介。大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の予習となるでしょうか。

「嫌だね、他を当たってくれ」小山朝政の意外な反応

時は元久2年(1205年)8月7日。北坂東の豪族・宇都宮頼綱に謀叛が発覚。頼綱は時政の娘婿であり、義時らへの報復として鎌倉へ攻め寄せてくるとの噂が立ちました。

「左衛門尉(小山朝政。演:中村敦)を呼べ!」

「……如何用で」

「近ごろ弥三郎(頼綱)が謀叛を企んでおると言う。そこでそなたに鎮圧を命じる」

命令を受けた朝政でしたが、彼はこれを断ります。

「お断り申す」小山朝政と弟・結城朝光。歌川国芳筆

「弥三郎とは義兄弟でしてね。せっかくの名誉ながら、骨肉の争いはご免こうむりたいモンです。どうか他を当たって下さい。ただ誤解して欲しくないのは、仮に弥三郎が謀叛を企んでいたとしても、これに加勢はしません。万が一攻め込んできたら、それがしは鎌倉殿を全力でお守りしましょう」

【吾妻鏡】朝政申して云わく「頼綱は叔家の好あり。たとい厳命に応じ、その昵を変ずると言えども、たちまち追討使を奉るは芳情なからんや。早く他人に仰せらるべきか。ただし朝政叛逆に与同せず。防戦においては、筋力を尽くすべき」のよし、これを辞し申す。

※『吾妻鏡』元久2年(1205年)8月7日条より読み下し。

……とは言ったものの、そのまま放っておいたら他の誰かが討伐してしまいかねません。

そこで朝政は頼綱に連絡。「おい、このままだとまずいぞ。俺は断ったが、誰が討伐に行くとも限らぬから、起請文を書け」ということで、頼綱は素直に起請文を義時に献上しました。8月11日のことです。

誠意を見せるため、宇都宮一族60数名が同時に出家

「しかし、起請文だけであの相州(義時。相模守)が信じるじゃろうか」

「相分かった。この機会だから、頭を丸めて詫びを入れてやるか!」

ここまですれば、さすがの義時も潔白を信じざるを得まい。そこで8月16日、頼綱は出家して蓮生(れんしょう)と改名しました。

「「「大将、我らもお供いたしますぞ!」」」

一緒に出家した郎党らは60余名。宇都宮一族の強い団結≒精強さを天下に知らしめる一大パフォーマンスと言えるでしょう。

「大将だけ坊主にはさせねぇ。みんな揃って頭を丸め、相州に目にモノ見せてやろうぜ!」俄然張り切る宇都宮一族(イメージ)

何だかテンションが上がってきたのか、頼綱改め蓮生法師は8月17日、「お詫び」のために宇都宮を出立しました。

「いざ、鎌倉!」

「「「おおぅ……っ!」」」

さぁやって来ました8月19日。鎌倉へ到着した坊主集団は、義時に面会を要求します。

「宇都宮弥三郎改め、入道蓮生。一族郎党頭を丸めて相州殿へお詫びに罷り越した。どうかお目通り願いたい!」

「「「願いたい!」」」

謝罪とは名ばかりで、どう見ても「和解さもなくば一戦交える」気満々です。ここで事が起こったら、北坂東の巨頭・小山朝政がどう出るかも分かりません。

一つ対処を間違えれば、鎌倉が火の海になりかねない……殺気立った坊主集団に恐れをなしたのか、義時は面会を拒否します。朝政も苦笑いだったことでしょう。

「おぅ相州、詫びに来たンで赦してもらおうかィ」謝罪と反省の気持ちを全身で表現する宇都宮一族(イメージ)

「おい弥三郎よ。謝るなら謝るなりの態度をとらんか」

「そりゃそうなんじゃがな。北条なんかにナメられてたまるかよ」

「これだけ脅かせば十分じゃろう。おう七郎(結城朝光)、弥三郎の誠意に代えて、髻(もとどり)を相州殿にご検分いただけ」

「ははあ」

結城朝光(演:高橋侃)は頼綱の髻を持って義時に差し出し、めでたく謝罪は受け入れられたということです。

終わりに

こうして流血は避けられ、北坂東に勢威を誇る宇都宮・小山一族は北条の軍門に下りました。

出家した宇都宮頼綱入道。歌川貞秀筆

実際のところ、彼らが謀叛を起こそうとしていたかどうかはハッキリせず、どちらかと言えば時政追放に乗じて再起の芽を摘んでおきたかった(謀叛を起こすつもりはなかった)ものと考えられます。

果たしてこのエピソード、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では演じられるでしょうか。小山朝政のキャラクターがちょっと義時に対して反抗的?なので、イメージと合わないかも知れません。

もしかしたら、暴言の多い弟・長沼宗政(演:清水伸)が入れ替えられる演出も考えられます。

ずらりと居並んだ宇都宮一族60数名の坊主頭、是非とも見てみたいものですが、今後の展開に期待しましょう。

※参考文献:

細川重男『頼朝の武士団 鎌倉殿・御家人たちと本拠地「鎌倉」』朝日新書、2021年11月 山本隆志『東国における武士勢力の成立と展開 東国武士論の再構築』思文閣、2012年2月

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