放送作家・藤井青銅が語る【人間力】「一芸を究めないという意識で、さまざまなことをインプットする」

日刊大衆

藤井青銅(撮影・弦巻勝)
藤井青銅(撮影・弦巻勝)

 ラジオドラマの脚本、ラジオ・テレビ番組の構成、小説やエッセイ、作詞など……。これまで放送作家を名乗りながら、いろいろなことに携わってきました。その始まりは、会社勤めをしていた23歳のときに、第1回「星新一ショートショートコンテスト」で入賞したことでした。

 入賞賞品は11日間のヨーロッパ旅行。“ショートショートの神様”と呼ばれた星さんと一緒に旅することができるという豪華なものでしたが、参加した受賞者10名の中に放送作家がいたんです。その人から、ラジオのショートドラマを書く仕事を紹介され、放送業界に足を踏み入れるようになりました。

 24歳で会社を辞めてフリーラン スになったんですが、その頃、雑誌でショートショートを書く機会が増えていきました。しかも「星さんみたいな物語を書いて」と言われ、慌てて勉強しました(笑)。というのも、僕は文学青年ではなく、たまたま雑誌の記事を見てコンテストに応募し、入賞しただけだったんです。

 でも、星さんの本を読めば読むほど、その才能のものすごさが分かってしまうんですよ。ショートショートをそこそこ書けるようになったとしても、星さんのように究めることは絶対にできるわけがない。

 ただ、そこで「自分の能力なんてたいしたことない」と思い知らされたからこそ、「一芸を究めない」という意識を持てるようになったんです。

 一芸を究められないのならば、人様よりちょっとできることをたくさんやって、続けていけばいいんじゃないかと。だから、ラジオドラマやショートショート以外にも、本の出版やラジオ・テレビ番組の構成、作詞など、いろいろと手掛けることができました。

■いろいろなことに携わるからこそ、多くのことをインプットできる

 そうした中、ここまで生きてこられたのは、僕ならではの笑いやユーモアを面白がってくれる人がいてくれたからなんですよね。

 たとえば、長年の経験上、どこの制作の部署でも、部員が10人いたとして、「藤井さんの企画、いいね」と言ってくれるのはせいぜい2人。そうした人たちをたどって仕事をしていくことが、私の一芸を究めない仕事術といえるかもしれません。

 だから、僕は自分のことを「ひとり隙間産業」とか「ミスター・ニッチ」と呼んでいます(笑)。

 僕にとって、一芸を究めないことによるメリットもあるんです。それは、いろいろなことに携わるからこそ、多くのことをインプットできるということです。

 現在、『オードリーオールナイトニッポン』(ニッポン放送)で構成を担当していますが、40代前半のオードリーの2人が話す情報って、60代後半の僕らの世代はあまり知らないわけです。それを、現場に一緒にいるというだけでインプットできる。

 つまり、さまざまなジャンルの現場にいればいるほど、自分が知らない情報を教えてもらえるし、それを違う現場で生かすこともできるんです。これはすごく役に立っています。

 今後に関して言うと、僕は放送作家の中でも、コンスタントに本を出しているほうなんですが、本の出版はあまり年齢が関係ないので、まだまだ書き続けていきたい。

 現時点で、僕でなければ書けないアイデアが4つ。それを書き切るまでは、死ぬわけにはいかないと思っています。まあ、そのアイデアが何かはまだ言えないんですが(笑)。

 こんなふうに、いくつになっても、何かを書き続けようという気持ちを持っていられるのは、すべて星さんのおかげなんですよね。

「とにかくたくさん書きなさい」新人だった頃、アドバイスとしていただいたこの言葉は、今もなお忘れることができません。僕の人生において、星さんという偉大な方に出会えたことは、本当に運がよかったとしか言いようがないですね。

藤井青銅(ふじい・せいどう)
1955年、山口県生まれ。1979年に第1回「星新一ショートショートコンテスト」で入賞。以降、放送作家、作家、脚本家、作詞家など、さまざまな分野で活動。特に放送業界では、書いたラジオドラマの脚本が数百本に及ぶ他、ラジオ・テレビ番組の台本や構成を数多く手掛けている。さらに、腹話術師・いっこく堂の脚本・演出・プロデュースなども担当。小説やエッセイ、企画物など、著書も多く、今年5月には『一芸を究めない』(春陽堂書店)を出版している。

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