マヤ文明後期、エリート女性戦士が存在した可能性

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マヤ文明後期、エリート女性戦士が存在した可能性
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 マヤ文明時代の遺跡に残された3人の遺骨を分析したところ、肩に矢が突き刺さった上流階級の女性のものが含まれていた。

 その骨の強度を分析したところ、男性に負けないくらい弓の扱いに長けていただろうことが明らかになり、女性戦士である可能性が高いという。

 マヤ文明では上流階級の女性も戦争で戦っていたという仮説があるが、今回の発見はその裏付けになるかもしれないという。

・マヤ文明後期の戦争に関する調査のため遺骨を分析
 1000年から1524年にかけての後古典期と呼ばれる時代、マヤ文明では戦争が増加したと考えられている。

 だがこの時期の戦争についてはあまりよくわかっていない。例えば、戦争では誰が、どのように戦ったのか?などだ。

 オーストラリア国立大学をはじめとする研究チームは、こうした謎に迫るべく、当時のマヤ文明の政治中枢だった「マヤパン」の遺跡で発掘された3体の遺骨を分析した。

 それは骨の生物力学的特性を分析するというやり方だ。

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メキシコ、ユカタン州にあるマヤ文明、後古典期の遺跡、マヤパン / photo by iStock・肩に矢が突き刺さった上流階級の男女の遺骨
 これらの遺骨はこれまでの分析で、1体が上流階級の男性戦士、ほかの2体は上流階級の女性と平民女性のものであることが判明している。

 平民女性とは違い、上流階級の男女はいずれもうつ伏せで発見され、弓矢で射られた跡があった。男性の胸には黒曜石の矢じりが、女性の肩にはチャート(堆積岩の一種)の矢じりが刺さっていたのだ。

 もちろん弓矢で射られたからといって、必ずしも戦士なわけではない。そこで研究チームは、3体の骸骨の上腕骨の強さを調べてみることにした。

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・上流階級の女性は戦士である可能性
 例えば、弓を引くと、両腕に大きな負荷がかかる。だから長く弓の修練を積むと、その負荷に耐えるため上腕骨が丈夫になる。

 ならば、その負荷を再現して遺骨の歪み具合を調べれば、弓の腕前を推測できるはずだ。

 マヤ文明の主な戦の担い手は、上流階級の男性だったとされている。そのため3人の骨のうち、男性の上腕骨は弓を引いたときの負荷に一番強いだろうと考えられた。

 それはある意味では正しかった。男性の上腕骨は、平民女性に比べて、弓による負荷が加わっても歪みにくかったからだ。

 ところが上流女性とではそれほど差がなかったのだ。このことは上流女性もまた弓の練習をよく積んでおり、その腕前は上流男性に匹敵しただろうことを示唆している。

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・マヤ後期、上流階級の女性が戦争で戦ったという説を裏付ける
 当時のマヤでは上流階級の女性もまた戦争で戦ったという説があるが、今回の女性が弓に長けていた事実はそうした仮説の裏付けと考えることができる。

 なお投げ槍の負荷を再現して同じような実験を行ったところ、平民女性の上腕骨でさえ、上流男性に匹敵する強さがあったという。

 それでもこの平民女性が弓をそれほど扱っていなかったことを考えると、マヤ文明の戦争は上流階級が担っていたようだ。

 この研究の査読前論文は現在『bioRxiv』(2022年7月13日投稿)で閲覧できる。

References:Biomechanical Investigation of Ancient Maya Warfare at Mayapan, Yucatan, Mexico | bioRxiv / Murdered Maya Woman's Remains Suggest Elite Females May Have Been Warriors | IFLScience / written by hiroching / edited by / parumo


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