「三方ヶ原の合戦」で武田信玄に惨敗した徳川家康。しかしその負けっぷりが見事過ぎた【どうする家康】 (2/4ページ)
……その時敵ははや城近くをしよせたれば。早く門を閉て防がんと上下ひしめきしに。 君聞召かならず城門を閉る事あるべからず。跡より追々帰る兵ども城に入のたよりをうしなふべし。また敵大軍なりとも我籠る所の城へをし入事かなふべからずとて。門の内外に大篝を設けしめ。その後奥へわたらせ給ひ御湯漬を三椀までめしあがられ。やがて御枕をめして御寝ありしが。御高鼾の聲門外まで聞えしとぞ。近く侍ふ男も女も感驚しぬ。敵も城の躰いぶかしくやおもひけん……
※『東照宮御実紀』巻二
「……御屋形様のお戻りだ!」
命からがら浜松城へ逃げ込んだ家康。すぐ後方から武田の大軍が迫っていたので、門番は急いで門を閉ざそうとしますが、家康はこれを開け放つよう命じました。
「しかし、そんなことをしたら敵が……!」
「構うな。それより後から逃げてくる味方を全員受け入れる方が優先じゃ」
さすが家康、実に部下思いですね。しかし武田の大軍が城内へなだれ込んで来たら、どのみち味方は全滅です。
それでも家康は考えを変えず、部下に説いて聞かせました。
武田の大軍を前に高いびき「良いから門は開けておけ。見ておれ、開けておけば武田は来ぬから」
「合点が行きませぬが、何ゆえでしょうか?」
「敵の立場になって考えてみよ。もし城門が堅く閉ざされていれば、きっと我らが窮地であると見抜いて力押しするだろう」
「はあ」
「逆に門が無防備に開け放たれておれば、城内に何か罠を仕掛けたので誘い込んでいるのではと疑わぬか?」
「なるほど、要するにハッタリですな」
「まぁ、そうなるな」
「しかし、もしそれでも武田が乗り込んで来たら……」
「その時は、いくら門を閉ざそうが防ぎ切れぬじゃろうな。