岡倉天心「茶の本」に学ぶ戦争と平和、日本人の誇り【後編】 (2/2ページ)
「しかるに満州の戦場に大々的殺戮を行ない始めてから文明国と呼んでいる。近ごろ武士道――わが兵士に喜び勇んで身を捨てさせる死の術――について盛んに論評されてきた。」
ところが明治維新以降、富国強兵で軍事強化しいよいよ日清・日露戦争に乗り出した事で、欧米列強に一目置かれる存在になったというのです。しかし、その状況をよく思わない天心は戦争の対極に日本文化の茶道を置き、話を続けます。
「しかし茶道にはほとんど注意がひかれていない。この道はわが生の術を多く説いているものであるが。」
つまり武士道が死の術を説くものとするなら、茶道は生の術、生活に大切な事やおもてなしの術を説くものだといいます。例えば有名な利休七則はまさにそれを簡潔に著しています。
「茶は服(ふ)くのよきように、炭は湯の沸くように、夏は涼しく冬は暖かに、花は野にあるように、刻限は早めに、降らずとも雨の用意、相客に心せよ。」
この短い文の中によりよく生きるための術が詰まっているように感じます。
天心の平和を望む強い心さて、更に天心は語り続けます。
「もしわれわれが文明国たるためには、血なまぐさい戦争の名誉によらなければならないとするならば、むしろいつまでも野蛮国に甘んじよう。われわれはわが芸術および理想に対して、しかるべき尊敬が払われる時期が来るのを喜んで待とう。」
なんとかっこいい言葉でしょうか。「茶の本」は茶道についてのみ語ったものではなく、強い反戦のメッセージが込められた著書なのです。
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