危機にある日本の醤油作り 立ち上がったのは… (1/2ページ)
醤油や味噌など、日本の伝統調味料づくりに欠かせないのが、高さ約2メートル、直径約2メートルの巨大な木桶だ。ただ、日本固有のこの巨大桶をつくることができる桶職人は絶滅の危機。大桶づくりの技術が残せないかもしれないという。
そこで立ち上がったのが、桶専門の技術者や職人ではなく、醤油メーカーだった。「醤油屋が、木桶つくったら、おもろいやん」「木桶がいっぱい残っとる小豆島で、木桶をつくって、さらに木桶をどうやって残すか考えて、発信していけたら、めちゃくしゃおもろいやん」と、ヤマロク醤油の山本康夫さんが「木桶職人復活プロジェクト」を立ち上げ、最後の桶職人に弟子入りし、自分たちの手で技術を残すことに。
■伝統的醤油づくりに必須の「木桶」が絶滅の危機に『巨大おけを絶やすな! 日本の食文化を未来へつなぐ』(竹内早希子著、岩波書店刊)では、ノンフィクション作家の竹内早希子氏が、木桶職人復活プロジェクトを約6年に渡って取材。桶づくりの輪を全国に広げた奇跡の奮闘記を紹介する。
木桶の現状と木桶でつくられた醤油とはどんなものなのか。今、日本で生産されている醤油のうち、木桶でつくられている醤油の割合は1パーセント。99パーセントの醤油は、ステンレス製、FRP(強化繊維入りのプラスチック)やコンクリート、ホーローなどのタンクでつくられている。
今使われている木桶は、江戸時代から戦前にかけてつくられたもの。木桶の板は多孔質で、目に見えない小さな穴がたくさん空いていて、その穴に「蔵付き」といわれるその蔵独自の微生物がたくさんすみついている。酵母や乳酸菌といった微生物は、長い年月をかけて独自の進化をしていく。その結果、その木桶の中だけの生態系ができ、そこにしかない酵母や菌が生まれる。その独自の微生物がつくり出す味や香りの成分が、蔵独特の醤油や味噌の決め手となる。ただし、木桶は手入れを怠ると、良くない菌が繁殖する危険性もある。一度生態系が崩れてしまうと、立て直すのが難しい。木桶でつくる醤油は、多くの蔵元では、木桶にすみついた乳酸菌や酵母に熟成を任せる。