極楽浄土に行ける?……川面を流れる桜の花びらが織りなす「花筏(はないかだ)」。SNS 4万超「いいね!」で人気に【前編】
満開になった桜の花びらが川面を薄いピンクに染め上げる風景は、桜が終わる時期によく見かける美しい風景。
昔から、「花筏(はないかだ)」と呼ばれる風景なのですが、近年ではSNSで「絶景」と紹介され、4万以上の「いいね!」を集め毎年この季節は注目されるようになりました。
満開の桜が散るころ見られる「花筏(はないかだ)」満開を迎えた桜も一週間ほどでひらひらと風に乗って舞い散り、そばを流れていく川に落ちて、川面を薄いピンクに染め上げていく……そんな風景は、桜の時期の終わりによく見かける美しい風景です。
これは「花筏(はないかだ)」と呼ばれているのはご存じですか。
「花筏」という名前は、実は昔の葬いの風習から呼ばれたものとも伝わります。
近年、その「花筏」の美しさがSNSで取り上げ4万以上の「いいね!」を集めたことで、この季節は注目されることとなりました。
「花筏ってどんな意味?」「花筏」という名前のハナイカダ科の落葉低木があります。また、花の折り枝を筏に添えた文様も「花筏」という名前です。
けれども、一番知られているのは「桜の花びらが散って川面に降り積もり、流されていく様子を表した」もので、春の「季語」でもあります。
でも「花筏」には、昔行われていた「葬い」の風習からその名前が付けられたという説もあるのです。
川に流された「骨壷」に添えた花が川を流れる様子を表す言葉川面を埋め尽くす桜の花びら「花筏」。1年に1度の光景。
(写真:photoAC)
その昔。骨壷を土の中に埋葬するのではなく、川に流す……という風習があったとか。
その骨壷を紐で筏にくくりつけて流すときに、紐が早くほどけ骨壷が流されていくと、亡くなった人が早く極楽浄土にいくことができるとの考えからきたそうです。
その骨壷には花が添えられていて、ほどけた紐や筏と一緒に川の流れに乗って流されている様子から「花筏」という名前が名付けられたとか。
いつどこで行われていた風習なのか、明確な文献などはないそうですが、「閑吟集(かんぎんしゅう)」(ある桑門(世捨て人)によってまとめられた歌謡集)という、永正15年(1518年)に成立した小歌の歌謡集に…
「吉野川の花筏 浮かれて焦がれ候よの」
という一首があります。
吉野川は桜の名所として有名な奈良県吉野郡を流れる川。その吉野川の水面に浮かぶ桜花を筏に見立てている……と想像できます。
「吉野川には桜の花びらがたくさん舞い散って花筏のようになっている。
浮き沈みしつつ流れる、その花筏のように私の心も浮かれて焦がれているのです」
とでもいう意味でしょうか。
骨壷という言葉は直接登場してはいないので、埋葬の様子を詠んだものではないようですが、川面にたくさん浮かぶ桜の花びらを「花筏」にたとえているのはわかりますよね。
「SNS」で紹介され4万2千件「いいね!」が付いた「花筏」実は、この花筏。数年間にSNSで紹介され、「いいね!」が4万2千件を突破したと新聞に掲載され注目を集めました。
桜の時期、この「花筏」を楽しみにして訪れる人々が多い「名所」があります。【後編】でご紹介しましょう。
高野晃彰
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan