バイキングの船葬墓で発見された儀式用と思われていた盾に、実際の戦闘で使用されていた痕跡を発見
[画像を見る]
1880年、ノルウェーのゴクスタ墳丘で9世紀後期のバイキング(ヴァイキング)の船葬墓が地中から発掘され、ゴクスタ船と名付けられた。
船葬墓とは船そのものに遺体を入れ墓として使用したバイキング伝統の埋葬法である。
船と一緒にたくさんの丸い木製の盾も一緒に埋められており、これらの盾は、長い間儀式用だと考えられていたが、新たな研究から、実際の戦闘で戦士を守るために使われていた可能性が高いことがわかった。
・バイキングの船葬墓、ゴクスタ船の盾の謎
1880年にノルウェーの考古学者ニコライ・ニコライセンは、同国南部、ゴクスタ墳丘で9世紀後期のバイキングの船を地中から発見した。このゴクスタ船は船葬墓と見られており、たくさんの木製の丸い盾も一緒に埋められていた。
最近になって、それらの盾を再分析したところ、もともと表面に牛の生皮が貼られていた痕跡がわ
かり、一体一の接近戦で実際に使用されていた可能性があるという。
この研究は、『Arms and Armour』誌(3月24日)に掲載された。
[画像を見る]
1882 年に描かれたゴクスタ船のイメージ図 / image credit: Arms & Armour (2023). DOI: 10.1080/17416124.2023.2187199・儀式用ではなく実際に戦闘で使用されていた痕跡
「ゴクスタ船から見つかったこれら盾は、実戦で使われたという我々の見解と概ね一致しています」と言うのは、ストックホルム大学のロルフ・ウォーミング氏。
「これらを作った職人の技は、3世紀から13世紀にかけてスカンジナビアで広まった武器技術であ
るゲルマンの平らな丸い盾の伝統を受け継いでいます」
[画像を見る]
1882年の発見報告書をヒントに描かれた海上のゴクスタ船。黄色と黒に塗られた盾が船の側面にずらりと並んでいる/ image credit:Nicolaysen et al, 1882
全部で64枚あったこれら盾は(おそらく船の乗員がひとり1枚ずつ持っていたと思われる)船体の上部の縁、オールの穴のすぐ上にずらりとくくりつけられていたようだ。
かつてゴクスタ船は、海上での戦闘や貿易、輸送に使われていたが、900年頃、陸に引き上げられて、バイキング王の墓「船葬墓」として使われた。
[画像を見る]
9世紀後半あるいは20世紀にオリジナルから復元した、ゴクスタ船の盾のレプリ
カの前面。盾の中心に鉄の突起がついている / image credit:Museum of Cultural History, University of Oslo
分析によると、盾は先細りなっている木の板、もしくは厚板で作られていて、片面には鉄の半球状の突起、その裏には木のハンドルがついている(残っているハンドルはひとつだけ)。
[画像を見る]
ゴクスタ船の盾のレプリカの裏面。中央には手を入れる穴とハンドルがついている / image credit:Museum of Cultural History, University of Oslo
このため、盾は軽くて扱いやすかったと思われる。また、盾の板は、黄色か黒に塗られていて、重なり合うと黄色と黒の三日月のように見える。
これまでの考古学者は、これらの盾は儀式用だと考えた。だが、ウォーミング氏は、もともとは盾の表面に動物の生皮の薄い層が貼られていて、本体や縁を強化した痕跡があったことに気づいた。
[画像を見る]
盾にあけられていた穴の列(黄色の円で囲われた部分)。盾はかつて動物の皮の層で補強されていたと思われる / image credit: R. Warming/Society for Combat Archaeology
盾の表面部分から、有機物の層の断片が見つかり、分析中です。しかし、穴をかがったような跡や、縁を面取り、または傾めに削ったような跡があり、板に保護層のようなものをとりつけるために細工したと思われる、間接的な証拠が見られます(ウォーミング氏)このように、ゴクスタの盾を補強していたという考えは、これらの盾がただの飾りではなく、実戦で使われたことを示している。
「おそらく、この盾は船に備えられた装備品で、乗組員が海上でも陸でも使っていたと考えるのが妥当でしょう」とウォーミング氏。・海の侵略者、バイキングの船
ゴクスタ船のような船は、バイキングにとって重要だった。この名前は、襲撃されたイギリス人が、北欧の侵略者を表すのに使っていた言葉からつけられた。
北欧人のすべてがバイキングだったわけではないが、8世紀以降、スカンディナビアで宝物や奴隷を略奪する行為が確立され、10世紀以降、北欧人がキリスト教に改宗するまで続いた。
バイギングの船は四角い帆を張り、風向きが悪いときや川を航行するときに使うオールも装備されていた。
こうした船は、クリンカー工法で作られた軽い船体だったため、浅瀬を航行することができ、陸地に近づいて、必要なときに船を陸に引き上げることができた。
[画像を見る]
photo by iStock
・バイキングの盾に関する謎は完全には解明されていない
ウォーミング氏は、ゴクスタ船の盾は追加の武具、あるいは戦時における力の誇示のためのものと考えている。バイキングたちは、白兵戦に挑むために船から飛び出していったのだろう。
これらの盾が実際に戦闘で使われた直接の証拠はないが、盾の突起には、不規則な刻みや疵跡がいくつも見られる。
「実戦で使われた可能性が示されるかどうか、使用状況の慎重な分析が必要です」とウォーミング氏は言う。盾は重要なものだが、白兵戦では見過ごされがちなのだという。
盾は、体の動き、つまり戦闘テクニックや戦術について多くをおしえてくれる可能性があるため、詳細に記録することが大切なのです
[画像を見る]
盾についていた鉄の突起の破片。これは木の取ってを握って盾を持つ兵士の手を守るためのもの / image credit:Vegard Vike/Museum of Cultural History, University of Oslo
オスロ大学、文化史博物館のヤン・ビル氏は、本研究には関わっていないが、さまざまな盾について別の研究を行っていて、ウォーミング氏の研究を非常に興味深く、十分に議論されるべき研究だとしている。
ほかの研究者からも、盾に関連する疑問があがっています。ゴクスタ船の盾の真実は、複雑である可能性があるので、解明するためには多分野にわたる研究が必要でしょうReferences:1,100-year-old 'ceremonial' Viking shields were actually used in battle, study suggests / Viking Age ceremonial burial shields found to be combat ready / written by konohazuku / edited by / parumo
追記(2023/04/19)木星を木製に訂正して再送します。
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』