なぜ?山頂にたくさんの石仏が…南アルプスにある「地蔵岳」に登ってみた (2/4ページ)

Japaaan

溶岩が突き出て冷えて固まったものだそうですが、天に突き上げる威容さには圧倒されますし、くだんの賽の河原は霧に包まれると天国か黄泉の国に迷い込んだような不思議な景観を醸し出します。

この地蔵仏は「子授け地蔵」といって、子どもが欲しい村人がこの山頂からお地蔵さんを一体背負って家に持ち帰り、そして子供が授かったらお礼に新しいお地蔵様を背負って、再び山頂にお供えしてきたものです。

しかし、一人で一体を担ぐのはとても大変です。しかも女性なら尚のこと。なので、持ち帰りとお供えしに行くときは村の人たちが総出で連れだって、お祭りのお囃子のように太鼓を鳴らしながら担ぎあげたといいます。

山頂に行くまでの一つに「ドンドコ沢」という名前の登山道があるのですが、その太鼓の「どんどこ」という音から、そのような名前が付いたそうです。

行程はとても長く、山頂直下の山小屋まで片道7時間かかりました。筆者は一泊二日かけテントを張り、二日目の朝に登頂しました。現在の装備(およそ10キロ)でこの時間がかかるのですから、持ちにくい石の塊を背負っていくなら尚の事、女性も含めての集団なら数日かかったことでしょう。当時の人々の、子供を授かりたいという切なる思いが感じられるようです。

現在この風習を絶やさぬよう、地元の芦安中学校では学校登山が行われ、2010年には生徒が小さな木彫りの人形をお供えしました。その人形は今でも安置されています。

気軽に行ってみてとはいえない山ですが、こういった場所があることも知ってもらいたいものです。

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