左右の耳から異なる周波数の音を聞く「バイノーラルビート」のリラックス効果を科学的に検証
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「バイノーラルビート」という知覚現象を知っているだろうか?これは、わずかに周波数が異なる二つの音を、左右の耳から同時に流すときに起きる現象で、人間の脳には、新しい第三の音が作られたと感じるというものだ。
そしてこの知覚現象には、脳波を誘導し、集中力を高めたり、リラックス効果があるといわれている。果たして本当なのだろうか?
『Frontiers in Human Neuroscience』(2023年5月5日付)に掲載された研究によると、バイノーラルビートを聴いた複数の被験者の脳から、確かに落ち着つきを示すサインが出ていたことが明らかになった。
・脳が作り出す音響現象「バイノーラルビート」とは?
バイノーラルビートとは、ヘッドフォンやイヤホンを使い、左右の耳それぞれにわずかに周波数が違う音を流すことで、脳が新たな第三の音を感じるようになる知覚現象のことだ。
たとえば、左耳に440Hz、右耳に430Hzの音を流したとする。すると不思議なことに、脳にはその周波数の差である10Hzの音が聞こえてくる。これがバイノーラルビートだ。
ちなみにこれは異なる周波数が混ざり合って聴こえてくるわけではなく、脳の聴覚系で作られているという。
不思議なのは、聞こえないはずの音を感じる脳の仕組みだけではない。
じつはバイノーラルビートには、リラックス効果や集中力アップ、さらには幽体離脱といった不思議な効果があるようなのだ。
実際、バイノーラルビートによるリラックスを謳ったアプリや動画などはいくつもある。だが今のところその効果については、個人の感想が報告されているだけで、科学的に検証されたことはあまりなかった。
ヘッドホンかイヤホンをつけて聞くバイノーラルビートの音楽
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・バイノーラルビートには本当に効果があるのか?科学的に検証
そこで、カリフォルニア人間科学研究所のエリザベス・クラスノフ博士らは、バイノーラルビートで本当に人はリラックスするのか試してみることにした。
その実験では、チラシなどでストレスを感じている参加者(成人4名)を集め、静かで暗い部屋の中で合計4回とある音楽を聴いてもらった。
彼らが聴いた音楽は、ピアノとシンセサイザーで演奏されるゆっくりとしたアンビエント・ミュージック(環境音楽)だ。
ただし毎回同じ音楽が流されたわけではなく、そのうち半分には人間の耳では認識できないバイノーラルビート(4Hzと8Hz)が混ぜられていた。
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・実際にリラックス効果を確認、血行が良くなった人も
そのときの参加者の脳の反応を調べると、バイノーラルビートには確かにリラックス効果があることがわかったのだ。
それを聴いた参加者全員の脳から落ち着いていることを示すサインが出ていたのである。
なお、このバイノーラルビートは人間には聞こえない周波数であるため、そのリラックス効果は思い込み(プラセボ効果)によるものではない。
また脳への影響だけでなく、毛細血管の血行がよくなり、心血管系の数値が改善することもわかった(ただし決定的ではないとのこと)。
過去の研究では、いわゆる性格の「ビッグファイブ」でいう外向性の高い人ほど、バイノーラルビートがよく効くだろうことが示されていた。
だが今回の研究では、そうした性格とリラックス効果に決定的な関係は見られなかったそうだ。
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・ただし、あくまで予備的な実験であることに注意
ただし今回の研究はあくまで予備的な実験であるという。
参加者が少ないため、バイノーラルビートに本当にリラックス効果があるのかどうか、科学的な結論を出すことはできないとのことだ。
だが手始めとしては、幸先のいいスタートだろう。
今バイノーラルビートを愛用している人は、これからも安心して聴き続けてもよさそうだ。
References:A New Study Reveals Surprising Results on the Mind-Altering Power of Binaural Beats - The Debrief / written by hiroching / edited by / parumo
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