「どうする家康」ヒゲを生やして、貫禄が出てきた?第31回放送「史上最大の決戦」振り返り

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「どうする家康」ヒゲを生やして、貫禄が出てきた?第31回放送「史上最大の決戦」振り返り

三法師(信長嫡孫。織田秀信)を大義名分に担ぎ上げ、まんまと織田政権の乗っ取りに成功した羽柴秀吉(演:ムロツヨシ)。

信長の遺児・織田信雄(演:浜野謙太)に泣きつかれ、我らが神の神こと徳川家康(演:松本潤)はいよいよ秀吉との対決に乗り出したのでした。

……という訳で、ついに本性を現した秀吉に対して、近ごろにわかに頼もしげなオーラを発し始めた家康。まずは前哨戦で勝利を収め、いよいよ次週が本番(小牧・長久手の戦い)となります。

NHK大河ドラマ「どうする家康」第31回放送「史上最大の決戦」さっそく振り返っていきましょう!

贈られた初花肩衝の行方

初花肩衝(画像:Wikipedia)往時の大名・武将らはこぞって名物の茶器を求めた。劇中でも茶の湯を味わいたいものである。

賤ヶ岳の合戦に勝利した秀吉への贈り物として登場した初花肩衝(はつはなかたつき)。肩衝とはその名の通り、肩が突き出て角張っている形状を言います。

楢柴肩衝(ならしば)・新田肩衝(にった)と合わせ、天下三肩衝と謳われる名物でした。

本品は中国の南宋から元王朝時代(12~14世紀)の作と推定され、第8代室町将軍・足利義政(あしかが よしまさ)から紆余曲折を経て永禄12年(1569年)頃に織田信長の手に渡ったと言います。

やがて嫡男の織田信忠(のぶただ)に家督相続の祝いとして譲られますが、天正10年(1582年)本能寺の変によって流出。

徳川家臣の松平親宅(まつだいら ちかいえ)が入手したものを、家康に献上されたのでした。

それが秀吉に贈呈され、秀吉が亡くなると五大老の一・宇喜多秀家(うきた ひでいえ)がこれを相続。慶長5年(1600年)の関ヶ原合戦で秀家が敗れると、再び家康の手に戻ります。

後に松平忠直(まつだいら ただなお。家康の孫)へ大坂の陣における恩賞として与えられますが、またも紆余曲折を経て徳川将軍家に献上されたのでした。

現代も公益財団法人徳川記念財団によって大切に保管されている初花肩衝。もらった秀吉は大喜びで見せびらかしていたと言いますから、今後も劇中に登場したら胸が熱いですね!

粛清された三家老のプロフィール

織田信雄。劇中ではいいとこなしだが、信長の子らしく果断な一面も見せたという。落合芳幾筆

天正12年(1584年)3月6日、織田信雄は秀吉と内通していた三家老を粛清。これが実質的な宣戦布告となりました。

せっかくなので、ここでは暗殺された三家老のプロフィールを振り返りましょう。

浅井長時(あざい ながとき)

永禄12年(1569年)生~天正12年(1584年)3月6日没

若くして織田信忠に仕え、天正9年(1581年)に父が亡くなると家督を継ぎ、本能寺の変後は織田信雄の家老となりました。

天正12年(1584年)1月に信雄の家老四名(浅井長時、岡田重孝、滝川雄利、津川義冬)が秀吉に内通を持ちかけられ、滝川雄利だけはこれを拒否して信雄に密告。

これによって残り三家老は粛清されたのでした。享年16歳。

岡田重孝(おかだ しげたか)

生年不詳~天正12年(1584年)3月6日没

元は信長の馬廻として仕え、天正元年(1573年)の朝倉義景(あさくら よしかげ)追討などに武功を立てました。

本能寺の変後に信雄付きの家老となり、天正11年(1583年)に家督を継ぎます。

その頃から津田宗及(つだ そうぎゅう)の茶会に同席するなど秀吉とは親しくなっていたそうです。

粛清に際して重孝を斬った太刀は岡田切(銘は吉房)として現代に伝わっています。

津川義冬(つがわ よしふゆ)

生年不詳~天正12年(1584年)3月6日没

父は尾張の守護大名・斯波義統(しば よしむね)。信長に仕える中で器量を見込まれ、信雄の家老を任じられます。

信雄の伊勢国平定に尽力し、天正4年(1576年)には伊勢の守護大名であった北畠具教(きたばたけ とものり)らの粛清に関与。本能寺の変後は松ヶ島城主として南方の奉行を務めました。

やはり茶の湯を通じて秀吉と親密になり、ついには粛清されてしまったのです。

以上の三名について、実際には内通しておらず単なる噂のみで処刑してしまい、信雄は戦う前から自ら力を削いでしまったとも言われます。

……信雄忽に秀吉の姦計に陥り。其家長ども黨與して。我をかたぶけんと計るものぞと大に怒り。たばかりて家長三人までを誅したり……

※『東照宮御実紀』巻三 天正十一年-同十二年「秀吉将伐信雄」

かくしてまんまと秀吉の術中にはまった信雄たち。しかしもう後には引けなくなってしまったのでした。

「鬼武蔵」森長可と羽黒の戦い

森武蔵守長一(森長可)。余談ながら森乱(森蘭丸成利)の兄である。歌川芳虎「小間喜山合戦(小牧山合戦)」図。

……こゝに池田勝入入道といへるは。右府恩顧の下より人となりしが。これも時勢にひかれて秀吉のかたうどし。先尾張の国犬山の城を攻とり。聟の森武蔵守長一とともに楽田羽黒に打出で。在々所々を焼立たり……

※『東照宮御実紀』巻三 天正十一年-同十二年「小牧山役(長湫戦、大戦之四)」

【意訳】池田恒興(演:徳重聡。勝入入道)は織田信長に恩義があったが、利害によって秀吉に与した。

先ほど尾張の犬山城を攻め落とし、婿の森長可(演:城田優)と共に楽田・羽黒へ攻め込んで、あちこち焼き払ったのであった。.

…..この辺りは劇中に描写がありましたね。共に歴戦の猛将で、家康・信雄にとって強敵となりました。

さて、これに対する徳川勢の顔ぶれがこちらです。

……味方には榊原。奥平。酒井。大須賀の輩つきづきに打出で森が勢にはせかゝり。先軽卒を進ませ鉄砲を打かくる。其中にも奥平が勢無二無三に羽黒村の小川ををしわたる。森は鬼武蔵とよばれし血気の猛将。それが軍師にそへられたる尾藤なにがしも。都辺の敵をのみあしらひたるてだてを三河武士にをしあて。川をわたさば討てかゝらんとゆるゆる侍しに。奥平が三千餘騎会釈もなく突てかゝる。あとより酒井。榊原。丹羽并松平又七郎家信等つゞいてをし渡り地煙り立て鑓をいるれば。何かは以てたまるべき……

※『東照宮御実紀』巻三 天正十一年-同十二年「小牧山役(長湫戦、大戦之四)」

羽柴勢を迎え撃つのは、榊原康政(演:杉野遥亮)、奥平信昌(演:白洲迅)、酒井忠次(演:大森南朋)、大須賀康高(おおすが やすたか)。森長可の軍勢に突きかかり、中でも奥平勢は羽黒村の小川を押し渡りました。

森長可は鬼武蔵と呼ばれた猛将でしたが、軍師の尾藤ナニガシはその武勇に驕って「まぁ、敵が川を渡りきったタイミングで討てばよかろう」などと油断していていたようです。

そこへいきなり襲いかかって来たものだからたまりません。三河武士の精強さを思い知ることになるのです。奥平に続き酒井・榊原そして丹羽氏次(にわ うじつぐ)に松平家信(まつだいら いえのぶ)らは大いに槍を奮ったのでした。

……家信時に十六歳。野呂助右衛門といへる剛のものを伐取たり。稲葉一鉄入道はかねて森と牒し合せ段の下に屯し。老波血河に湛ふと高聲にとなへゐたる所に。金扇の御馬印遥にみゆれば。 徳川殿出馬ありしといふ程にこそあれ。敵はみな色めき立て。終にかなはず引て犬山へかへる……

※『東照宮御実紀』巻三 天正十一年-同十二年「小牧山役(長湫戦、大戦之四)」

家信はこの時16歳。羽柴勢の野呂助右衛門(のろ すけゑもん)なる豪傑を討ち取り、その武名を高めました。

羽柴勢が不利に陥る中、稲葉一鉄(いなば いってつ)が伏兵を忍ばせておりましたが、家康の馬印(金扇)を見て一同慄然。慌てふためいて犬山城へ逃げ帰ってしまったと言いますから、よほど家康が恐れられていたことが分かります。

かくして小牧・長久手の前哨戦「羽黒の戦い」は徳川勢の勝利に終わりました。

それにしても、長篠の時と言い、左衛門尉(酒井忠次)の死ぬ死ぬ詐g……もといフラグ立てたがりは何でしょうね。彼は慶長元年(1596年)に天寿をまっとうするので、ファンの皆様はご安心下さい。

第32回放送「小牧・長久手の激闘」

池田信輝入道勝入斎(池田恒興)。歌川芳虎「小間喜山合戦(小牧山合戦)」図。

……秀吉は此敗軍を聞て大に怒り。十二万餘の大軍を具して大坂を出馬し。犬山城につき楽田にうつり。二重堀などいへる要害をかまへて小牧山に対陣す……

※『東照宮御実紀』巻三 天正十一年-同十二年「小牧山役(長湫戦、大戦之四)」

さて、前哨戦のボロ負けを知った秀吉は大いに怒り狂い、大坂より12万騎の大軍を率いてやって来ました。

ここからがいよいよ本番。史上最大の決戦を制するのはどちらでしょうか。次週第32回放送「小牧・長久手の激闘」では、各将の大活躍が楽しみですね!(そのために、今回一人々々スポットを当てたのでしょうから)

それにしても、チョビ髭をつけた途端に頼もしい感が出てきた家康。普通に戦国時代を演じてくれていい感じ。

これまでの半年間も、この調子でやってくれれば、つながり≒成長が楽しめたのに……ともあれ来週も楽しみですね!

※参考文献:

『NHK大河ドラマ・ガイド どうする家康 後編』NHK出版、2023年5月 『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション 小和田哲男『織田家の人びと』河出書房新社、1991年10月

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