忠義をとるか?女をとるか?そりゃあもちろん……「三河武士の鑑」鳥居元忠はこうした【どうする家康 外伝】 (2/3ページ)
いったいどこへ行ってしまったのか……」
「お命じならば明日も探しますが、女子供にご執着なさるよりも、戦力になる男衆を探した方がよいのでは……」
「うむ、仕方あるまい。馬場の娘はもう探さんでよいぞ」
家康は残念そうです。娘を無事に保護できれば、少なくとも馬場一族は警戒を解いて臣従してくれるでしょう……でも、動機は本当にそれだけでしょうか。
「ははあ」
心なしか彦右衛門が嬉しそうなのも気になりますが……ともあれそんな事があって数日後。家康のもとに、ある者が訪ねてきました。
「馬場の娘は、いかがでしたか」
「ん?馬場の娘か。そなたの申すとおり探させてはみたが、おらなんだと彦右衛門が言うておったぞ」
そう聞いて、その者はいぶかしみます。
「え、馬場の娘は殿が鳥居殿にお授けになったのではないのですか?」
「何をたわけたことを。おらぬ者を授けるなど、出来るものか」
「ははぁん(何か察した様子)……殿。実は馬場の娘は……」
耳打ちを聞いた家康は驚きました。何と彦右衛門は馬場の娘を見つけていたのに、自分の元へ迎えたくて、家康には「いなかった」と謀(たばか)りを言ったのです。
「今ではまるで本妻のように堂々とされているので、てっきり殿のご公認だったのかと……」
「まったく、あの彦右衛門め。これはしてやられたわい!」
家康は悔しそうな顔を見せます。馬場の娘は大層な器量よし、密かに家康も狙っていたのでした。
「……とは言うものの、わしとて織田殿をたばかって武田の旧臣たちを匿っているのだから、彦右衛門が武田の娘ひとり匿ったのを責める筋合いではないのぅ……」
昔から忠義一徹のようでいて、意外とちゃっかりしてやがる。家康は呵々大笑したということです。