「どうする家康」きらめく星空の下、ロマンチックに語らう二人。第35回放送「欲望の怪物」振り返り

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「どうする家康」きらめく星空の下、ロマンチックに語らう二人。第35回放送「欲望の怪物」振り返り

戦なき世を実現するため、豊臣秀吉(ムロツヨシ)への屈従を決断した我らが神の君・徳川家康(松本潤)。

「二度と殿下に陣羽織は着させませぬ」

諸大名の前でそう宣言したものの、当の秀吉は戦なき世など望んではいません。

「戦がなくなったら、武士どもはどうやって食わしていく。民もじゃ。民もまっとまっと豊かにしてやらにゃならん。日本から戦がなくなることはねぇ。切り取る国は、日本の外にまだまだあるがや……」

いつの世も人間の欲望にはキリがない、まさしく秀吉は「欲望の怪物」でした。果たして家康は、そんな怪物の手綱を引くことが出来るのでしょうか?

それではNHK大河ドラマ「どうする家康」、今週も気になるトピックを振り返って行きましょう!

大政所について

秀吉の母・大政所(仲)。幼くして家を飛び出した秀吉(日吉丸)を、誰よりも気にかけて愛した人物像で知られる(画像:Wikipedia)

家康の継室となった旭(山田真帆)を見舞う名目で、岡崎城へと送られた大政所(高畑淳子)。その実態が人質であることは言うまでもありません。

出迎えた大久保忠世(小手伸也)には目もくれず、その奥にいた井伊直政(板垣李光人)が一目で気に入り、そば近く仕えさせました。

得体の知れない息子の元より、美少年にかしずかれながら、娘とのんびりのびのび暮らしたい……気持ちは解らないでもありません。

しかし息子にも息子の都合がある訳で、立身出世を果たした後に、彼なりの親孝行をしたかったのも事実。

いくらかひどい扱いを受けたにしても、もう少し秀吉に理解を示してやってもよかったのではないでしょうか。

ちなみに「殿に何かあれば、大政所を焼き殺してやる」と薪を積み上げていたのは本多重次(未登場)のエピソード。火をつけることなく済んで、何よりでしたね。

個人的には、老いてもなおお盛んな美少年好みよりも、いつ殺されるか分からない恐怖を紳士的にお慰めする直政が観たかったな……と思います。

徳川家康の後室・旭姫(山田真歩)とはどんな女性?その生涯をたどる【どうする家康】

鳥居元忠について

家康の幼少期から、ずっと一緒に仕え続けた鳥居彦右衛門尉元忠。「徳川十六神将図」より

そなたの家臣はわしのもの、わし家臣もわしのもの……という訳で、鳥居元忠(音尾琢真)を召し抱えようとする秀吉。

家康としては苦笑するよりなく、元忠が忠義を貫いてくれることに期待するよりありません。

実際、秀吉は元忠を徳川家中より引き抜こうとしたことがあり、元忠はこれを辞退しています。

また劇中には登場していませんが、元忠の嫡男である新太郎(後の鳥居忠政)も引き抜こうとしていました(こちらも元忠によって阻止)。

鳥居一族は亡き鳥居忠吉(イッセー尾形)はじめ代々忠義を尽くした譜代の家柄。秀吉は忠義に篤い三河武士団を羨み、切り崩すべき脅威と感じていたのでしょう。

他の家臣たちにも引き抜きを図っていますが、また改めて紹介できたらと思います。

その手は食わぬ!豊臣秀吉からの誘いを辞退し、忠義を貫いた鳥居元忠【どうする家康】

陣羽織について

陣羽織を羽織った秀吉。右田年英「英雄三十六歌撰 羽柴秀吉」

劇中では家康自身の発案であるかのような「陣羽織」宣言。

しかし江戸幕府の公式記録である『徳川実紀』を読むと、このアイディアは豊臣秀長(佐藤隆太)と浅野長政による発案となっています。

二人が「殿下の陣羽織を御所望なされませ」と提案したところ、家康は最初「わしは今まで他人様の物を欲しがったことはない。そんなに卑しく見えるか!」と激怒しました。

しかし二人は真意を説明し、家康も納得。果たして諸大名の前で猿と狸の茶番劇が披露されたのです。

「実はその前夜、秀吉が根回しに来て三度も拝礼しおったわい」

後に駿府城へ帰った家康が、家臣たちに自慢したのは言うまでもありません。

どうか殿下の陣羽織を!徳川家康が豊臣秀吉にねだった理由とは【どうする家康】

表裏比興について

「表裏比興」「信玄公の小脇指」など、二つ名の多いヤツにロクなのはいない……だが、そこがたまらない魅力を放つ真田昌幸(画像:Wikipedia)

昔から「武士に二言はない」とは言いますが、馬鹿正直では渡っていけないのが戦国乱世というものです。

真田昌幸(佐藤浩市)は主君・武田家の滅亡後、上杉・北条そして徳川の三つ巴に揉みしだかれながらもしたたかに生き抜いてきました。

「表裏比興の者」

言行に表と裏を使い分ける卑怯者、しかし卑怯も極めればまことに比興。その生き様には得体の知れない魅力があります。

「他人のものを無断で譲渡してはいけない」

まさに昌幸が領していた上野国沼田がそれで、かつて家康が北条氏政(駿河太郎)と和睦するため勝手に与えてしまいました。

そんな奴が「代わりの所領を与える」と言ったところで、信じられる筈がありませんよね。

信用の証として、徳川の姫を人質として嫡男・真田信幸(吉村界人)に嫁がせるよう要求しました。

そこで白羽の矢が立ったのは、本多忠勝(山田裕貴)の娘・稲姫(鳴海唯)という訳です。果たして、彼女の運命やいかに。

石田三成について

秀吉死後、家康の野心を警戒した石田三成。星空を見つめ合いながら語らう場面は斬新だった(画像:Wikipedia)

星を見ていた一人の男、彼こそは豊臣家中きっての切れ者と名高い石田三成(中村七之助)。後に家康とは天下分け目の関ヶ原で雌雄を決するライバルですね。

「切れ者」と紹介されて否定も謙遜もしない辺り、非常にすぐれた才覚を自負していることが伝わる名演技でした(正直、観ていてちょっとヒヤヒヤしました)。

しかし二人の初対面は非常に好感触。南蛮から伝わる星座の講釈から、オリジナル星座の妄想まで、和気あいあいと楽しいひとときを共有します。

最初、星を見ていると聞いて「お、さすが切れ者。天文を読んで天下の趨勢を占い、あるいは戦略を練るなどしているのだな?」と思った筆者はずっこけそうになりました。

秀長クラスの重臣ですら滅多に会えないほど多忙を極めている筈なのに、何をそんなメルヘンなことやっているのですか(苦笑)

三成の言う通り「古い考えにとらわれていてはいけない」のかも知れませんが、その(現代から見れば)古い考えを楽しむのが時代劇の醍醐味というもの。

三成×家康のロマンチックなひとときも斬新ですが、戦国乱世らしいロマン(戦略や戦術、政治的駆け引き等)も出来れば提供してほしいところです。

第36回放送「於愛日記」

おおぐま座・こぐま座(イメージ)劇中の説明では何となくよく分からなかったが、紙に描いて家康に見せる、という演出でもよかったかも。

さて、北条との対決に向けて、浜松から駿府に本拠地を移転する我らが神の君。

※家康たちが別れを告げていたものの、別に浜松を放棄するではありません。わざわざお別れセレモニーを開いて、領民たちに家康をわざとらしく賞賛させる展開は、何だかどこぞの独裁国家みたいに感じました。

さて、引越し最中に日記を開いた於愛(広瀬アリス)は、近ごろ近眼が再発してしまったらしく、家康のお尻をペチン。今回はコンタクトレンズ(使い捨てタイプ)を切らしてしまったのでしょうか。

そんな次回のサブタイトルは「於愛日記」。史実だと於愛(西郷局)は天正17年(1589年)に亡くなるので、そろそろ退場する彼女に焦点を絞るのでしょう。

ちなみに家康の継室である旭も天正18年(1590年)に亡くなるので、家康はフリー扱いとなる予定です(実際には複数の側室が既に存在)。

彼女たちと入れ替わるように現れる予定の阿茶局(松本若菜)、彼女が新たなヒロインとして待機しています。

果たして於愛はどんな最期を遂げるのでしょうか(旭は帰洛してセリフ死と予想)。次週も目が離せませんね!

※参考文献:

『徳川実紀 第壹編』国立国会図書館デジタルコレクション 岡谷繁実『名将言行録 6』岩波文庫、国立国会図書館デジタルコレクション 本多隆成『定本 徳川家康』吉川弘文館、2010年12月

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