岡田阪神セ・リーグ制覇!猛虎復活「18年の激闘」秘話20【画像】タイガースV逸の歴史

日刊大衆

写真はイメージです
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 9月14日、甲子園は歓喜に包まれた。6500日以上に及ぶ苦難の道から勝利したタイガースの軌跡に迫る!

 18年ぶりとなる“アレ”を、本拠地で巨人を破っての胴上げという最高の形で成し遂げた岡田阪神。

 昨秋の就任から1年足らず。大幅な戦力補強もない状況での“独走V”には、どんな秘密があったのか。

 今回は、球界最年長にして、早くも“令和の名将”の呼び声も高い岡田彰布監督(65)の“強さ”と“うまさ”を、ひもときたい。

■“不文律”を破った阪急阪神ホールディングス

「采配以前に、一番の大きな転換点は、阪神球団が岡田さんを監督に就かせたこと。去年の今時分までは平田勝男2軍監督(現・ヘッドコーチ)の内部昇格が規定路線。そこに親会社の阪急阪神ホールディングスが“不文律”を破って横槍を入れたことで、風向きがガラッと変わった」(在阪スポーツ紙阪神担当記者)

 ここでの“不文律”とは、2006年の統合時に交わされたとされる“球団経営に阪急側は口出しをしない”なる取り決めのこと。

 グループのCEOを務める角和夫会長が早稲田閥であることも手伝い、早大出身である岡田新監督の就任は、半ば“鶴の一声”で決まったという。

「この流れを受けて、昨年末には、初の阪急出身者である杉山健博氏がオーナー職にも就いている。ドラフト会議の指名リストも、岡田さんの意向を受けて“全取っ替え”になったと聞きますから、彼が動きやすい環境を、阪急サイドが万事、整えたんです」(前同)

 もし仮に“平田新監督”となっていたら、優勝を成しえていたかは疑問が残る。

「2軍と1軍とでは、監督に求められる資質もまったくの別物。長く2軍で選手を見ていて、選手をよく理解していると言われていたソフトバンク・藤本博史監督の苦戦ぶりを見ても明らかです」(同)

 OBの藪恵壹氏も、就任後すぐに際立った“仕掛け”のうまさを、こう語る。

■「巨人の単独指名は胸クソが悪い」

「巨人の単独指名は胸クソが悪いと、浅野翔吾に競合を挑んだ“先制パンチ”からして、岡田さんらしい。むろん、右の外野手として補強ポイントに適う森下翔太(23)という“プランB”も準備したうえでの仕掛けですから、用意周到です」

 その森下の指名にも、岡田監督の深謀遠慮が見える。

「したたかな岡田さんのことだから、森下が原(辰徳)監督の後輩に当たる東海大相模の出身、というところも織り込み済みだったのではないでしょうか」(前同)

■中野拓夢、大山悠輔&佐藤輝明“改革”の効果

 一方、その岡田監督が就任早々に打ち出した改革が、正遊撃手である中野拓夢(27)の二塁手転向と、打線の核たる大山悠輔(28)&佐藤輝明(24)のポジション固定だった。とりわけ、現役の侍戦士・中野の転向は、一部では「いい遊撃手が獲得できるならトレードもやむなし」とも報じられるなど、周囲をザワつかせた。

 それら“改革”の効果を、阪神OBでもある野口寿浩氏は、こう分析する。

「失策数自体は依然、多いですが、致命的なエラーは目に見えて減っています。送球に難のあった中野の二塁手転向は、そういう意味でも大成功。一塁手の大山は、かねてから守備には定評がありましたし、空いた遊撃手を木浪聖也(29)と小幡竜平(22)に競わせたことで緊張感を生むこともできた」

 野口氏が指摘するように今季も失策数はリーグワーストながら、併殺数は同トップへと浮上するなど、全体としては改善傾向。

 加えて、遊撃手で台頭した木浪の“打撃開眼”が、喫緊の課題だった得点力の大幅アップにもつながった。

「木浪が“恐怖の8番”としてレギュラーに定着したことで、彼が出塁して、不動のリードオフマン、近本光司(28)が返す、という新たな得点パターンが確立できた。現に近本が今季稼いだ打点は、自身のキャリアハイにして、1番打者では両リーグトップ。巷ではその近本をMVPに推す声もあるほどです」(スポーツジャーナリスト)

■四球の増加は100以上も上乗せ

 ちなみに、攻撃面では四球の増加も、昨季から100以上も上乗せするなど顕著な数字として表れる。

「岡田監督自らが球団に直訴して、四球の査定ポイントを安打と同等に変えさせたんです。それだけでなく、犠飛も12球団で突出して多い。打撃陣の献身的な姿勢が目立ちました」(前同)

 岡田第一次政権で、采配下にあった野口氏が言う。

「おそらく岡田監督は“四球を増やせ”とは直接的に言っていない。“初球から行くな”ではなく、“もっと余裕を持って、じっくり行け”とか。ボール球にむやみに手を出さなければ、必然的に四球は増える。チャンスに甘い球はそう来ない。そういう当たり前の理屈を、ただただ選手たちに意識づけただけだと思います」

 その野口氏によれば、選手に向けられる監督の言葉は、口癖として知られる「そらそうよ」なことばかり。

 野口氏が体験した前回のリーグ優勝時には、こんな一幕もあったという。

■岡田彰布監督流の人心掌握術とは

「低めを丁寧についてくる好投手が先発のときは、どの球団でも“低めは捨てて、甘めに浮いてきたところを狙おう”みたいなことをコーチが言うんです。一見、理に適っているように思えますけど、岡田さんは違う」

 どう声をかけるのか。

「“そもそも、そんな良い投手の球が浮いてくることはあるんか?”となる。“来んもんをいくら待っても、しゃあないやろ”というわけです」(前同)

 むろん、打撃コーチも同席するミーティングでそれを指摘すれば、面目を潰すことにもなりかねない。

 岡田流の“うまさ”は、そこでもかいま見えたという。

「打者一巡したぐらいの頃合で、円陣を組んで、その中でボソッと言うんです。そうすればヘンに角を立たせることなく、選手もすんなり入っていける。そのあたりの人掌掌握術は、すごく勉強になりました」(同)

■投手起用においても、野手出身の監督らしからぬ“うまさ”が光る

 他方、投手起用においても、野手出身の監督らしからぬ“うまさ”が光る。

 前出の藪氏が指摘する。

「投手陣を必要以上に疲弊させない配慮を感じました。優勝の立役者である大竹耕太郎(28)と村上頌樹(25)、伊藤将司(27)あたりは、実質的に“三本柱”の活躍でしたが、経験は浅い。そこを岡田さんは、うまくフォローしていた」

 どんな采配があったのか。

「疲労が蓄積する夏場にかけて、彼らの登板間隔をきっちり空けて、合間に新外国人のビーズリー(27)や西純矢(22)を挟んだ。このあたりは、人をよく見ている岡田さんらしいな、と」

 そんな投手陣は、新守護神・湯浅京己(24)の離脱といったイレギュラーが起きた中でも、チーム防御率2点台と安定感抜群。

■正捕手の梅野隆太郎の骨折も坂本誠志郎がカバー

 勝負どころの8月には正捕手の梅野隆太郎(32)が死球を受けて骨折するも、その穴は坂本誠志郎(29)が見事にカバーしてみせた。

「岡田さんと平田ヘッドの間では“今は、捕手も複数人で、うまく回す時代”という共通認識が当初からあった。どちらかが仮に欠けても、もう一方が必ず残る。梅野の離脱は想定外だったにせよ、チームとしての“備え”は万全だったということでしょう」(野口氏)

 その坂本は、女房役として村上&大竹の覚醒に、ひと役買った陰の功労者だ。

 先発マスクで開幕9連勝を飾るなど、もともと定評のあったそのリードは、想定外の“梅野不在”で、さらに磨きがかかったという。藪氏が明かす。

「手の内を勝手に明かすことはできないから詳しくは言えないが、坂本は、どんな局面でも、カウント別リードのセオリーをけっして外さない。村上や大竹のような技巧派タイプの投手にとっては、それが何よりの安心感を生んだんでしょう」

 藪氏は大竹のとある発言に驚いたことがあるという。

「彼が10勝到達時のお立ち台で言った“ピンチでも遊び心を”なるフレーズは、私が本人にしたアドバイスそのまま。その点では、私も彼のブレイクに貢献しています(笑)」(前同)

■主力のほとんどが生え抜き

 ところで、今季の岡田阪神が誇る最大の強みは、投打の主力のほとんどを生え抜きが占めていること。

 その意味では、大型補強による“血の入れ替え”の断行で優勝をつかんだ03年の星野仙一監督時代とは、チーム事情は大きく違う。

「星野監督はトレードなどでチームを活性化させる手法が特徴です。そして、赤星憲広ら星野政権時の主力たちは“野村(克也)の遺産”とも呼ばれていました。ただ、岡田監督も過去の遺産を大いに生かしています」(前出の阪神担当記者)

 どういうことか。

「18年に最下位となり、辞任した金本(知憲)監督の遺産です。坂本や青柳晃洋(29)は、金本監督1年目にルーキーでしたし、監督が周囲を押し切って獲得した大山は、番記者陣が“白鷗大って、どこだ?”と慌てふためいたほどの驚きの指名。同年には、今季交流戦でロッテ・佐々木朗希(21)と投げ合って12奪三振の完封を披露した才木浩人(24)も獲っています」(前同)

■アレに導いた“岡田さんの力”

 もっとも、その“遺産”をもってしても勝てなかったのが、これまでの阪神。

 そこはやはり、「采配の力」だとして藪氏が言う。

「大型補強はなく、現役ドラフト組の大竹と、ドラ1の森下ぐらい。それで、この結果を生んだわけですから、それはもう岡田さんの力以外の何物でもない。しかも、下には井上広大(22)や前川右京(20)、森木大智(20)ら若手の有望株も数多い。今後の戦略さえ間違わなければ“黄金時代”の到来も十分ありうる状況です」

 大願成就の“アレ”に続く“ソレ”は、今季の日本一だけを指し示さない。岡田監督は、今年以降も続く“黄金時代”を、見据えていることだろう。

【画像】阪神タイガースV逸18年の歴史

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