10代の少年に愛情……源氏物語の主人公・光源氏、実は男性も恋愛対象だった![後編]【光る君へ】

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10代の少年に愛情……源氏物語の主人公・光源氏、実は男性も恋愛対象だった![後編]【光る君へ】

光り輝くような美貌の持ち主・光源氏は、艶やかな女性遍歴の持ち主なので「光源氏=女好き」のイメージがあります。

けれども、実は平安時代では貴族の間で当たり前のように流行っていた「男色」を匂わせる描写もいろいろあるのです。

想いを寄せた女性に素気無くされ、自分を慕う彼女の弟である10代の少年を愛でたりなど、読者の想像が膨らむような艶やかな場面があります。

前回の記事

源氏物語の主人公・”女好き”の光源氏、実は男性も恋愛対象だった![前編]【光る君へ】

人妻への愛が徐々に想いはその弟へと…

継娘と碁を打ち合う空蝉を垣間見る光源氏(写真:wikipedia)

なぜ、光源氏は10代の少年に愛情を抱くようになったのでしょうか。

「気位の高い上流階級の女性より、気取らない中流階級の女性のほうがいい」と、年長のいとこで・親友で・恋のライバルだった「頭中将(とうのちゅうじょう)」から聞いていた光源氏。

ある日立ち寄った邸宅で、中流階級の女性「空蝉(うつせみ)」に出会います。地味な容貌ながらも慎み深く知的で品のいい彼女に強く惹かれていく光源氏。何度もアプローチをしますが人妻である空蝉は断り続け、光源氏が部屋に忍び込んでも上着のみを残し、するりと逃げてしまいます。

※一説によると「空蝉」は紫式部がモデルとも言われています。

紫式部・菊池容斎『前賢故実』(写真:wikipedia)

自尊心を痛く傷つけられた光源氏は、空蝉との間と取り持ってもらうために彼女の弟・小君に目を付け、手紙を渡し逢い引きができるよう手配を頼むのです。

まだ12〜13歳ほどの少年だった小君は、光源氏の美しさに魅せられていろいろ手助けするのですが結局は失敗。がっかりした源氏は、夜、小君を自分のそばに寝させます。

「よし、あこだに、な棄てそ」とのたまひて、 御かたはらに臥せたまへり。 若くなつかしき御ありさまをうれしくめでたしと思ひたれば、つれなき人よりはなかなかあはれに思さるとぞ。

「せめてお前だけでも、私を捨てないでくれ。」……と、隣に寄り添う小君に囁く光源氏。

少年に「せめてお前だけでも私を捨てないでくれ」

水干(男子の平安装束)を着たお稚児さんのイメージ(写真:wikipedia)

自分に冷たい女性・空蝉よりも、一生懸命に尽くしてくれ、隣に寝て寄り添い、自分の嘆きをうっとりと瞳を潤ませながら聞いてくれる小君。

さぞかしい、この少年を「あぁ…愛おしい、愛おしい」と感じたのを察することができます。役に立たなかったことを悔いて涙を流す小君の手や髪をさすりつつ、源氏も少年への想いを募らせていく……露骨な性愛の描写はないものの、そんな艶っぽい二人が目に浮かぶ場面なのです。

見目麗しい源氏に「本当はお前の姉さんとは、彼女が結婚する前から深い仲だった」といわれ「こんなに嫌われるなんて生きてけないくらい辛い。お前は私を捨てないでおくれ」とかき口説かれる、まだ年端のいかない少年。

憧れてやまない美しい光源氏の体温と心臓の鼓動をすぐそばで感じ、耳元で「お前は私を捨てないでおくれ」と囁かれたら、役に立たなかった申し訳なさとともにうっとりとその言葉に酔い、情愛が芽生えたのではないでしょうか。しかし、そのまま何もせずに源氏は帰ってしまいます。

「この子は、いといとほしくさうざうしと思ふ。」

小君は光源氏に撫でさすられる以上のより深い関係を期待したと察することができます。去っていく源氏に、小君は「さうざうし=物足りない」と感じるのでした。

男同士の友情のような愛情のような場面が……

『石山月』(月岡芳年『月百姿』)『源氏物語』を執筆する紫式部(写真:wikipedia)

「源氏物語」には、「形代(かたしろ)の愛」が登場します。形代とは「身代わり」のこと。自分のものにできない最愛の人の代わりに、その人の身代わりになる「誰か」を愛する。たとえそれが男性同士でも。

男性同志の愛「男色」と思われる場面は「源氏物語」に何度か登場してきます。

光源氏とほかの男性との、密な友情のような・恋のような・愛のような……そんな艶やかな場面は、またの機会にご紹介していきましょう。

土佐光起筆『源氏物語画帖』より「朝顔」。雪まろばしの状景。邸内にいるのは源氏と紫の上(写真:wikipedia)

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