登場人物を深掘り!大河ドラマ「光る君へ」1月21日放送の疑問点や重要トピックを振り返り
自分のせいで三郎(藤原道長/柄本佑)が捕らわれてしまったが、謹慎中の身ゆえ何もできずもどかしい思いをしていたまひろ(紫式部/吉高由里子)。
悶々と過ごす中、父・藤原為時(岸谷五朗)から外出許可が出ました。源倫子(黒木華)はじめやんごとなき姫様がたとのひとときを楽しんだものの、実は藤原兼家(段田安則)の差し金で間者とされたことを感じて愕然とします。
複雑な想いを胸に倫子のサロンへ通い続けるまひろ。ある日散楽を見物していると、三郎と再会できたのでした。
……さて、NHK大河ドラマ「光る君へ」皆さんも楽しんでいますか?中級貴族の娘であるまひろが上流階級の姫たちと交流をはじめ、徐々に雅やかな世界へ踏み込んでいくようです。
一方の朝廷では円融天皇(坂東巳之助)の譲位問題で揺れており、兼家や藤原実資(秋山竜次)らの確執が火花を散らしていました。
第3回放送「謎の男」とは、直秀(毎熊克哉)を指すものと思われますが、この創作らしき人物が物語のどのような影響を及ぼすのでしょうか。
それでは今週も、気になる人々を振り返っていきましょう!
第3回放送時点の登場人物年齢まとめ第3回放送「謎の男」は、永観2年(984年)中のこととして描かれていました。この時点における登場人物たちの年齢を把握しておきましょう。
まひろ(紫式部)……15歳/本作では天禄元年(970年)生まれ説を採用
太郎(藤原惟規/高杉真宙)……11歳?/天延2年(974年)ごろ生まれ
藤原為時(岸谷五朗)……36歳?/天暦3年(949年)ごろ生まれ
藤原道長(柄本佑)……19歳/康保3年(966年)生まれ
藤原兼家(段田安則)……66歳/延長7年(929年)生まれ
藤原道隆(井浦新)……32歳/天暦7年(953年)生まれ
高階貴子(板谷由夏)……生年不詳
藤原定子(木村日鞠)……8歳/貞元2年(977年)生まれ
藤原道兼(玉置玲央)……24歳/応和元年(961年)生まれ
藤原詮子(吉田羊)……23歳/応和2年(962年)生まれ
懐仁親王(石塚陸翔)……5歳/天元3年(980年)生まれ
円融天皇(坂東巳之助)……26歳/天徳3年(959年)生まれ
師貞親王(本郷奏多)……17歳/安和元年(968年)生まれ
源雅信(益岡徹)……65歳/延喜20年(920年)生まれ
藤原穆子(石野真子)……54歳/承平元年(931年)生まれ
源倫子(黒木華)……21歳/康保元年(964年)生まれ
赤染衛門(凰稀かなめ)……29歳?/天暦10年(956年)ごろ生まれ
藤原公任(町田啓太)……19歳/康保3年(966年)生まれ
藤原斉信(金田哲)……18歳/康保4年(967年)生まれ
藤原行成(渡辺大知)……13歳/天禄3年(972年)生まれ
藤原実資(秋山竜次)……28歳/天徳元年(957年)生まれ
安倍晴明(ユースケ・サンタマリア)……64歳/延喜21年(921年)生まれ
……こうしてみると、演者さんと年齢のギャップが大きい人もいますね。例えば為時が推定36歳。仕方ないとは思いますが……。
こうした前提を踏まえて観ると、より物語を楽しめるのではないでしょうか。
たった二人の姉弟(きょうだい)?忘れないで、彼女のことを……まひろに頼まれて「三郎」を探して回った太郎。
感謝するまひろに対して、太郎は「たった二人の姉弟(きょうだい)だから」と言っていましたが、実際は他にも同母の姉がいました。
実名不詳のため、便宜上「藤原為時長女」などと呼ばれる彼女は、亡き母・ちやは(藤原為信女・国仲涼子)の代わりにまひろたちを育てたのでしょう。
長徳2年(996年)に為時が越前へ赴任するまでには天然痘で亡くなったものと考えられています。
当初からキャスティングがなかったため、恐らくちやはが少し長生きするのかな、と思っていました。
しかしそんなことはなく、第1回でちやはは退場。それでもまひろ9歳になるまで生きているので、少し長生きですが。
考えてみれば、乳母のいと(信川清順)が母親代わりなので、まひろたちの養育は彼女が一手に引き受けたものと思われます。
藤原定子(木村日鞠)ってどんな人物?道隆の長女 藤原 定子(ふじわらのさだこ)
木村 日鞠(きむら・ひまり)
道隆の長女。一家の繁栄を願う父の思いを一身に負い、のちに年下の一条天皇に入内(じゅだい)する。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
道隆と貴子の娘で、後に一条天皇(懐仁親王)の皇后となる定子。登場したのっけから不幸な未来が透けて見えるようでした。
父たちの存命中は栄華を極めたものの、長徳元年(995年)に道隆と道兼が相次いでなくなると家運が傾き始めます。
兄の藤原伊周・藤原隆家たちが道長との政争に敗れ去ったことで、人望を失い没落。挙句の果てに、定子は自ら鋏をとって落飾(出家)する事態となりました。
後に登場する清少納言(ファーストサマーウイカ)はじめ才女たちを従えて一世を風靡した存在であり、その栄光と没落のギャップが世の無常を感じさせます。
源倫子(黒木華)ってどんな人物?道長の嫡妻となる倫子。まひろとの微妙な関係が続いた(イメージ)
道長の嫡妻 源 倫子(みなもとのともこ)
黒木 華(くろき・はる)
藤原道長の嫡妻。源雅信の娘で、宇多天皇のひ孫。おおらかさと強さを併せ持つ女性。まひろ(紫式部)とも交流があり、不思議な関係が築かれていく。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
入内が噂されながら、なかなか嫁ぎ先が決まらずにいた源倫子。空気の読めないまひろを大らかに笑い飛ばす度量を見せつけるようでした。
彼女は後に道長の正室となり、まひろとは微妙な距離感を保ちながら関係が続いていきます。
お互いをリスペクトし合うようでそこはかとなく嫌味を忍ばせるエピソードもあり、本作でも二人が火花を散らすことでしょう。
赤染衛門(凰稀かなめ)ってどんな人物?倫子・彰子の女房 赤染衛門(あかぞめえもん)
凰稀 かなめ(おうき・かなめ)
女流歌人。源倫子の女房であり、さらに一条天皇の中宮となる娘の藤原彰子にも仕えた。姫たちに学問を指南するうちに、文学好きなまひろ(紫式部)とも交流することになる。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
倫子サロンの指導役として登場した赤染衛門。夫の大江匡衡(おおえ まさひら)と仲睦まじかったことから匡衡衛門とも呼ばれました。
良妻賢母を絵に描いたような女性で、更には和歌の才能にも恵まれます。
周囲の者たちをボロっカス気味に書いている『紫式部日記』でも、
「家柄は大したことないけど、和歌は悪くないんじゃないの?分相応に慎ましくて大変よろしい(意訳)」
と珍しく褒めて?いました。
80歳以上も長生きするので、今後の活躍が楽しみですね。
藤原穆子(石野真子)ってどんな人物?倫子の母 藤原 穆子(ふじわらのむつこ)
石野 真子(いしの・まこ)
源雅信の妻で倫子の母。まひろ(紫式部)には遠縁にあたる。倫子をのびのびと育て、穏やかな家庭を築いている。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
まひろを倫子サロンに招き入れた藤原穆子。遠い親戚ということですが、どのくらい遠いかと言いますと……。
「まひろ(紫式部)の祖父・藤原雅正の妻の兄弟の娘」つまり「義理のおば(いとこおば)」となります。
ここまで来ると完全に赤の他人なんじゃ……いやいや、利用できる関係性は何でも利用しなくてはなりませんね。
やんちゃ?なまひろを温かく見守るおば様、見ていると気持ちが和みますね。これからも活躍して欲しいです。
藤原斉信(金田哲)ってどんな人物?一条朝 四納言 藤原 斉信(ふじわらのただのぶ)
金田 哲(かなだ・さとし)
道長、公任とともに青春時代を過ごす。道長の長兄・道隆のもとに仕えるも、道長が出世しはじめると、変わり身の早さを見せ、腹心として地位を築いていく。ききょう(清少納言)とも交流がある。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
道長のいとこ。紹介どおり道長の下で活躍し、一条天皇が即位すると「(一条朝の)四納言」の一人に数えられます。何だか四天王みたいですね。
ちなみに「一条朝(いちじょうちょう)」とは、一条天皇の御代(治世)を指します。
一条とは崩御後の諡(おくりな。死後に贈られる名前)ですから、当今(とうぎん)に対して使うことはありません。つまりこの「一条朝の四納言」という表現は後世のものです。
清少納言の随筆『枕草子』にもしばしば登場、華やかな振る舞いが言及されており、これからの活躍が期待されます。
藤原公任(町田啓太)ってどんな人物?一条朝 四納言 藤原 公任(ふじわらのきんとう)
町田 啓太(まちだ・けいた)
頼忠の息子。道長とは同い年で、友情を育むが、出世レースが進むにつれ関係が変化する。音曲、漢詩、和歌など文化面に秀でており、まひろ(紫式部)の『源氏物語』に興味を持つ。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
藤原兼家の政敵である藤原頼忠の息子で、円融天皇の中宮となった藤原遵子(中村静香)の弟です。
姉が中宮となった時、藤原詮子の元へ押しかけ
「お宅の姫様は、いつになったら中宮になれるんでしょうねぇ?」
と暴言を吐いた過去があります。よく道長は仲良くしていますね。
しかし遵子には子供が授からなかったため、仕返しに
「アンタん所の、素腹(すばら。子供の産めない身体)のお姉様はどちらかしら?」
と罵声を吐かれました。どちらってそりゃ円融天皇のそばでしょうが、これはつまり
「皇子も産めないくせに、どの面下げて中宮に収まってるの?」
という意味です。もうひどいったらありゃしません。
ともあれ今はまだ仲良しな道長と公任ですが、やがて対立を深めていくようです。
藤原行成(渡辺大知)ってどんな人物?一条朝 四納言 藤原 行成(ふじわらのゆきなり)
渡辺 大知(わたなべ・だいち)
道長よりも6歳下。道長政権下で蔵人頭に抜擢(ばってき)されると、細やかな気遣いで実務に能力を発揮、欠かせない存在として支え続ける。文字の美しさでは右に出る者がおらず、もてはやされた。※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイトより
道長の友達というよりはかなり後輩ですが、当代の能筆家「三蹟」の一人として後世に名を残すことになる藤原行成。彼もまた「一条朝の四納言」として活躍します。
名前の読みは「ゆきなり」ですが、敬意を込めて「こうぜい」と呼ばれることもあるとか。
ちなみに三蹟の残り二人は小野道風(おのの みちかぜ/とうふう)・藤原佐理(すけまさ/さり)。このちょっとオシャレな音読みの呼称を有職(ゆうそく)読みというそうです。
もしかしたら、次週の放送で藤原実方(さねかた)に殴られて冠を奪われるという恥辱を受けるかも知れません。
その他もろもろ劇中、小野小町(おのの こまち)について言及がありました。彼女は天長2年(825年)生~昌泰3年(900年)ごろに生きた人物と言われ、まひろ(紫式部)たちの時代から80~150年以上も昔のことになります。
紫式部も小野小町も平安貴族とくくられがちですが、平安時代の幅広さを感じますね。
また、劇中で道兼と兼家の会話
道兼「頭中将(とうのちゅうじょう)が……」
兼家「……実資か。あいつは味方につけておかねばならんな……」
こういう自然な会話から、実資が頭中将と呼ばれていることを理解させる流れはとてもいいと感じました。
ちなみに、道長は『源氏物語』の主人公・光源氏のモデルと言われており、頭中将はそのライバルとして登場します。
実資は道長と対立することも多かったため、上手く対比させられたのではないでしょうか。
あと、漢字の「偏継ぎ」遊び、面白そうでしたね。冠(かんむり)とか頭(かしら)の部首でやってみるのも楽しいかも知れませんね。
また、散楽の演目は先週と同じでしたね。時代が進んでいないことが分かります。次週はどんな演目になるのか楽しみです。
公任「お前(道長)はどんな女子が好みなんだ?」
これは『源氏物語』第二帖「帚木(ははきぎ)」に出て来る光源氏と悪友たちのエピソード「雨夜の品定め」が元ネタかと思います。
本作ではあっさりでしたが、物語では結構だらだら好き勝手言い連ねるので、読んでみてもいいかも知れません。
第4回放送「五節の舞姫」互いに身分を偽りながら交流してきたまひろと道長。ついに互いの身分を明かそうとするも、また何かドタバタが起こるようです。
そして円融天皇がついに師貞親王(花山天皇)へ譲位。果たしてあの伝説?の即位式はどのように描かれるのか……モザイクとかかからないでしょうね。
いよいよ王朝文化華やかなりし宮中へ乗り出していくまひろ。果たしてどうなっていくのか、次週も注目しています。
※参考文献:
倉本一宏『紫式部と藤原道長』講談社現代新書、2023年9月 関幸彦『藤原道長と紫式部 「貴族道」と「女房」の平安王朝』朝日新書、2023年12月日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan