あまりにも悲しい恋愛成就。うそと秘密の板挟み【君が心をくれたから#3】 (2/4ページ)
前回の考察にも書いた、千秋が、案内人と取引をし、自分の命と引き換えに火災から太陽を救った説が事実だとした場合、その時に経験した苦しみや葛藤が、この「も」にかかっているのではないでしょうか。
そして、千秋が妙に雨に肩入れし、感情移入しながら寄り添うのも、自分の経験から少しでも力になりたいと考えているのでは?
海辺で太陽と案内人達がばったり出会ってしまった時も、日下は動じずにあの調子のままでしたが、千秋は気まずそうに、少し顔を背けていました。
「太陽に姿を見せるな」という雨との約束からなのか、太陽が記憶を失ってはいるものの、自分が母であるということを隠したいからなのか。
この状況に絶望し、全てを諦めようとする雨に対しても「思い出を作ることができる! あなた『には』まだ時間もある! 忘れられない思い出は人生には必ずある」という言葉をかけていました。
これもまるで実体験を踏まえたかのよう。「火事で命を失うことになった自分には、その時間がなかった」かのようにもとれます。果たしてその真相は……。
■世界一幸せな二人を見て絶望する雨
嗅覚にはにおいを感じるだけでなく、特定のにおいをかぐと過去の思い出が蘇る「プルースト効果」というものがあります。つまり嗅覚を失うということは、においに関する思い出を失うということ。
結婚式場で日雇いバイトをした雨は、この瞬間世界で一番幸せなカップルを目の当たりにします。本来であれば、自分の将来を重ねてしまいたくなる幸せな絵面なのですが、新郎新婦のエピソードを聞き、五感を失う自分がどれだけ大切なものを失くすのかを実感させられます。
クレープの香りをきっかけに、太陽との学園祭の記憶を思い出すことも、おいしいご飯を作ってあげることも、声を聞くことも、同じ景色を見ることもできなくなってしまうのです。