苦労を共にした妻を捨てるような男には呪いを…花山天皇の側近・藤原惟成(演 吉田亮)の生涯をたどる【光る君へ】

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苦労を共にした妻を捨てるような男には呪いを…花山天皇の側近・藤原惟成(演 吉田亮)の生涯をたどる【光る君へ】

花山天皇の側近
藤原 惟成(ふじわらのこれしげ)
吉田 亮(よしだ・りょう)
花山天皇の乳母子(めのとご)。藤原義懐とともに花山天皇をそばで支える。

※NHK大河ドラマ「光る君へ」公式サイト(人物紹介)より。

花山天皇の側近として権勢を振るった藤原惟成。

藤原義懐と共に、並居る宿老たちを押しのけるかのごとく改革を推し進めた二人ですが……。

果たして藤原惟成とはどんな人物だったのか、その生涯をたどってみたいと思います。

花山新制の立役者として活躍するが……

花山天皇。若くして帝位に就き、積極的な政治改革に臨んだ(画像:Wikipedia)

藤原惟成は天暦7年(953年)、藤原雅材(まさき)と藤原中正女(なかまさのむすめ)の間に生まれました。

中正女が師貞親王(花山天皇)の乳母となったため、その子である惟成は乳母子(乳兄弟)となったのです。

現代的な感覚で言えば「ベビーシッターの息子」程度の関係でしょうが、当時の乳兄弟はなまじ実の兄弟以上に篤い絆がありました。

だからあんなに信頼されていたのですね(劇中では逆上した師貞親王に冠をはぎ取られていましたが……)。

さて、気を取り直して藤原惟成は円融天皇・花山天皇の2代に仕え、特に花山天皇の御代においては政策の実務を担当します。

破銭法(貨幣の流通促進)や沽売法(物価統制)、荘園整理令など、いわゆる「花山新制(花山天皇の政治改革)」を経済面で支えるブレーンとなりました。

五位という貴族としては中堅クラスでありながら、国政を大きく動かす様子に、人々は「五位摂政(五位なのに、摂政のごとく権勢を振るっている)」とあだ名されたとか。

しかし寛和2年(986年)に花山天皇が藤原道兼(ミチカネ)に騙されて出家。寵愛していた藤原忯子(しし/よしこ)を昨年に喪い、悲嘆に暮れていたためと言われます。

このいわゆる「寛和の変」で権力の座から転げ落ちた藤原惟成は、花山天皇の後を追って出家したのでした。

そして永祚元年(989年)11月1日、藤原惟成は37歳でこの世を去ります。

糟糠の妻を捨てた報いは……

托鉢僧となった惟成(イメージ)

藤原惟成と言えば糟糠の妻がいたことで知られています。

まだ惟成が貧しかったころ、彼女は何とか夫を出世させようと必死にやりくりしました。

時には自分の髪をバッサリ切って金に換え、それで料理を用意して自分は女中のように振舞ったそうです。

かくして永年の苦労が報われ、惟成が花山天皇の側近として、大出世を遂げました。

いやはやこれでめでたしめでたし……かと思ったらさにあらず。

惟成はあろう事か糟糠の妻を捨てて、源満仲(みつなか)に婿入りしてしまうのです。

これにはさすがの妻も怒り狂い、貴船神社に百日参りの呪いをかけたのでした。

「帰命頂礼貴船大明神。どうかヤツを死なせないで下さい。乞食と落ちぶれさせ、生き地獄を見せてやって下さい!」

果たして惟成は出家して托鉢僧となり、物乞いをしながら糊口をしのぐ日々を送ることとなるのです。

「ざまを見さらせ、天罰じゃ!」

鬼の首をとったかのごとくやってきた元妻。見られたくない姿を笑われながら、惟成はただひたすらに耐え忍んだということです。

藤原惟成・基本データ 生 誕:天暦7年(953年) 死 没:永祚元年(989年)11月1日 両 親:父親:藤原雅材、母親:藤原中正女 兄 弟:惟成、藤原通頼 妻 妾:源満仲女、糟糠の元妻 子 女:藤原経方(養子) 主 君:円融天皇、花山天皇 官 位:権左中弁、正五位上 改 名:藤原惟賢(元服)→藤原惟成→悟妙(出家)→寂空(改号)

以上、花山天皇の側近として活躍した藤原惟成の生涯を、駆け足でたどってきました。

出家後の惟成は人が変わったように修行を重ね、高い徳を積んだそうです。

時流に乗って賢しらな立身出世を目指す俗世が虚しくなったのか、あるいは糟糠の妻を捨ててしまった後悔からか、何とも考えさせられますね。

果たしてNHK大河ドラマ「光る君へ」では、惟成がどんな悟りを開くのか、今から楽しみです。

※参考文献:

笠原英彦『歴代天皇総覧 皇位はどう継承されたか』中公新書、2001年11月 川端善明ら『新日本古典文学大系41 古事談 続古事談』岩波書店、2005年11月

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