インカ以前に作られた約5000年前の古代ストーンサークルの謎(ペルー)

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インカ以前に作られた約5000年前の古代ストーンサークルの謎(ペルー)
インカ以前に作られた約5000年前の古代ストーンサークルの謎(ペルー)

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 ペルー北部の高地にあるカハマルカ渓谷を見下ろす山の頂上に古代のストーンサークルがある。

 そのストーンサークルはあまり人目を引かない素朴なもので、コンビニサイズの円の中に、より小さな円がある同心円状をしている。それを形作る大きな岩は直立した状態で並べられている。

 だが新たな研究で、この質素な円形の広場が4750年近く前、インカ文明やその前身のワリ文化、チムー文化より遥かに前の時代にさかのぼる古いものであることが明らかになった。

・カラクプーマのストーンサークルの発掘
 この石の広場の発見によって、アンデス山脈やペルー中央海岸のような場所に最初にストーンサークルを造った人たちについて、もっと多くのことが明らかになるだろう。
ごく初期の段階でも、アンデス山中に住んでいた人たちは互いに連絡を取り合い、祭祀用の広場を建設するための正しい方法についてアイデアをシェアしていました
 この広場の年代測定に関わったワイオミング大学の考古学者、ジェイソン・トゥーヘイ氏は言う。

「彼らは、そこで起こったあらゆる種類の出来事も共有していたのかもしれません」

 トゥーヘイ氏は2015年頃からペルー北部の都市、カハマルカにあるストーンサークル周辺地域、カラクプーマとして知られる遺跡の発掘に取り組んできた。

 およそ250エーカーの遺跡には、さまざまな時代にさかのぼる数多くの集落跡が残されており、植民地時代に至るまでのカラクプーマの変遷がうかがい知れるという。

 このストーンサークルは、遺跡のもっとも高い場所にあり、失われたり、埋もれたりしたわけではない。

 最初にここを発見したのはトゥーヘイ氏らではないという。
地元の人たちは長い間、ここを特別な場所だと考えてきました。時に人々が供物を捧げるためにここまで登ってくることもあったのです


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カラクプーマの円形広場 / image credit:Toohey et al .、doi: 10.1126/sciadv.adl0572・謎多い建造物
 それでも研究でわかったことには驚いたという。並んでいる巨石の基部の物質を放射性炭素年代測定したところ、それが約紀元前2750年にさかのぼるものであることがわかったのだ。

「思っていたよりも、かなり古いものでした」トゥーヘイ氏は言う。

 カハマルカ広場に関して、知られていることはまだ少ない。ここを最初に造った人たちのことを示してくれる、同じ時代にさかのぼるほかの遺物は見つかっていないからだ。

 だが、トゥーヘイ氏は、この広場が造られたのは、遊牧民が定住して、試しに農耕をし始めたアンデスの転換期を示している可能性があると言う。

 このストーンサークルは土地や資源の所有権を主張する印だったのではないかという説もある。

 あるいはこの広場はこれまで考えられていたものよりも広い社会的結束力を表していた可能性もあるという。

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・古代アンデス人はカラクプーマ広場を何に使っていたのか?
 いずれにしろ、カラクプーマ広場が建てられるのに数週間はかかったことだろう。広場は儀式や祭祀に使われていた可能性が高いが、これ以上の証拠がなければ謎のままだ。

 ここを使用していた人たちは、それから500年ほどは遊牧生活もある程度続けていたのではないかとトゥーヘイ氏は言う。

 研究チームは、ストーンサークルよりも古い時代の矢尻を発見したが、付近にはずっと人が住んだと思われる住居らしきものはなにも見つかっていない。

 「確かに彼らはここにずっと定住していたわけではないようです」

 ほかのストーンサークルと似ているところもあるが、カラクプーマの構造は若干異なっている。

 ほかの広場はだいたい地中に陥没していて、石造りの壁が積み上げられているが、カラクプーマの場合は地表に出ていて、並んでいる巨石は直立している。

 岩の高さは150cmほどだが、同時期に建てられたストーンヘンジのような構造に似ている。

 若干の違いはあるが、カラクプーマとカラルのサークルとの間には依然としてつながりがあるようだ。

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ペルー、カラルの円形広場 photo by iStock

 「このサークルがここの広範な伝統と何らかの形でつながっていて、それは枝分かれしていったものでもあったと考えています」

 このサークルが陥没していないという事実は、ほかの陥没広場との様式的な違いという問題ではなく、利便性の問題だったのかもしれない。

 この場所は、岩盤が地表に非常に近いため、深く掘り下げることが難しかったということだろう。

 トゥーヘイ氏ら研究チームは今後、サークルを造った人たちについてもっと知るために、さらに証拠を探し続ける予定だ。・そのほかの古代アンデスのストーンサークル
 アンデス文明のこうした古代ストーンサークルは、カラクプーマだけではない。いくつか発掘されていて、もっとも古いものは今から5000年以上前の紀元前3100年にさかのぼる。

 こうした建造物のほとんどは地中に陥没していて、たくさんの巨石を組み合わせて漆喰のようなものでつなぎ合わせて造られている。

 これらのストーンサークルの中には、リマ北部にあるカラルのように有名なものもある。カラルはアメリカ大陸でもっとも古い都市のひとつで、その始まりは紀元前3000年頃にまでさかのぼる。

 カラルにある円形広場は陥没しているが、紀元前2600~2550年のもので、カラクプーマのものよりも100年ほど新しい。

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カラルにある円形広場 photo by iStock

 陥没してしまっているとはいえ、アンデス山脈や中央海岸地域にはほかにも同じようなサークルがある。アンデスの人々は、紀元前500年頃のチャビン・デ・ワンタルに至るまで、こうした建造物を造り続けた。

「チャビンの環状広場はもっとも新しく、間違いなく一番よく知られているもののひとつです」

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チャビンの環状広場 / image credit:CyArk Chavin Database / WIKI commons

 この研究は『Science Advances』誌(2024年2月14日付)に発表された。

References:4,750-Year-Old Monumental Stone Plaza Discovered in Peru | Sci.News / Preceding the Inca, This Andean 'Stonehenge' Was a Space for Ceremony and Ritual | Discover Magazine / written by konohazuku / edited by / parumo



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