ついに可能になるのか?物理法則に反しないワープ航法理論を科学者が提唱 (3/4ページ)
このバブルは、局所的な時空の曲率にとらわれないいわゆる「パッセンジャー領域」を囲み、そのおかげで局所的に加速することのない測地線運動を可能にする。
要するに、これによって時空をショートカットできるのだ。バブル内の時空の湾曲をうまく利用することで、宇宙船はある地点から別の地点へ、光が通常の平坦な時空を進むよりも速く移動することができる。
この新しいワープ航法モデルは、アルクビエレ・ドライブと違い、「正のADM質量(Arnowitt-Deser-Misner質量)」をもつ規則的な物質シェルを利用するため、エネルギー条件を破ることがない。少なくとも理論上は、すでに知られている物質と物理現象によってワープ航法の実現するのだ。
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・ワープドライブで宇宙に行ける未来は来るのか?
ただし理論上可能というのと、それを実現するのとでは大違いだ。
新たなワープ航法理論は、一般相対性理論と古典物理学のルールを守っているが、実際に行うには莫大なエネルギーを制御し、安定したワープバブルを生成するなど、現在の人類の技術レベルを遥かに超えた作業が必要になる。
それでもヘルメリッヒ氏は、「このような設計にはまだかなりのエネルギーが必要ですが、エキゾチック物質がなくてもワープ航法が可能であることを示しています。こうした発見は、いずれワープ航法に必要なエネルギーを減らす道を開いてくれるでしょう」と語る。
既存の物理学のルールを守りながら、光速を超えた移動を実現する理論、それはワープという夢の技術へ向けた大きな前進なのだ。
この研究は『Classical and Quantum Gravity』(2024年4月5日付)に掲載された。