平安時代のインスタ!?清少納言の『枕草子』は共感する毒舌と炎上しそうな悪口が面白い(前編)【光る君へ】

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平安時代のインスタ!?清少納言の『枕草子』は共感する毒舌と炎上しそうな悪口が面白い(前編)【光る君へ】

NHKの大河ドラマ「光る君へ」の人気から、主人公の紫式部はもちろんのこと、そのライバルといわれた才女・清少納言も注目を集めています。

そして清少納言といえば、古典にあまり興味がない人でも知っている『枕草子』が有名です。平安時代中期に彼女が書いた日本最古の随筆文学です。

古典の随筆というと文体に馴染みがないとちょっと難しそうにも感じますが、実は清少納言が宮仕の中で日々気がついた、素敵なこと・感じたこと・嫌いなことなど感覚的に紹介しているので、「平安のSNS」「平安のインスタ」などと呼ばれることも。

1000年以上も前の文章ですが、平安宮廷女子の生活ぶりが伝わってくるとともに「わかる!」と共感と親しみを覚える毒舌も多いのです。

美しくウィットに富みむがときどき毒舌

清少納言 イメージ(illustAC)

「春は、あけぼの」の一節が有名な『枕草子』

『枕草子』は清少納言が、66代一条天皇の妃・藤原定子(ふじはらのていし)に仕えていたころに書かれたもので、気ままに書かれたその内容は大きく分けると……

▪︎類聚(るいじゅう)的章段:「物尽くし」ともよばれ、「うつくしきもの~」とか、テーマを決めて、自分の感性に触れることを列挙し主観的な解説を加えたもの

▪︎随筆的章段:自然の風景や人々の美しい面など、自分の主観的な意見を述べたもの

▪︎日記的章段:宮仕えの間に見聞きした出来事を回想しながらあれこれと描いたもの

ただ、それぞれを淡々と書くのではなく、清少納言特有の洒落やウィットを効かせ、ときどき「裏垢女子」的な毒舌もありで、1,000年以上もの時を経ているとは思えないほど、イキイキとしているのです。

キラキラ宮廷女子のような「上品で美しきもの」

かき氷のイメージ(写真:photoAC)

たとえば、清少納言がキラキラ宮廷女子のような感じがする一節として有名なのが「あてなるもの」(上品で美しいもの)という一節。

(原文)
あてなるもの、うす色に白がさねの汗袗かざみ。かりのこ。削った氷にあまずら入れて、あたらしき金鋺かなまりに入れたる。水晶の数珠ずず。藤の花。梅の花に雪の降りかかりたる。いみじううつくしきちごの、いちごなど食ひたる。

(意訳)
上品なもの。薄色の袙の上に白い汗衫を重ねて着た少女。鴈の卵。かき氷に甘葛のシロップをかけて、新しい金属製のお椀に入れたもの。水晶の数珠。藤の花。梅の花に雪が降りかかってる光景。とっても可愛い子どもが、イチゴなんかを食べてる様子。

上品なものといえば…ではじまり、薄紫の下着に合わせた衣や、削った氷にあまづら(高貴な甘味料)入れて新しい金属製のお椀に持ったもの、藤の花、可愛いどもがいちごを食べている様子などと書いています。

思わず「いいね!」をしたくなるような美しい描写ですよね。

清少納言が愛した藤の花(写真:photoAC)

毒舌な「裏垢女子」的な一節も

清少納言(菊池容斎画、明治時代)(写真:wiki)

清少納言の『枕草子』が現代でも人気があるのは、キラキラ宮廷女子の面だけではなく、今でいえば「炎上しそうな」毒舌ぶりを発揮しているからではないでしょうか。

たとえば、「ありがたきもの」(めったにないもの)という中で紹介されているのが

(原文)
ありがたきもの、舅にほめらるる婿。また、姑に思おもはるる嫁の君。

(意訳)

めったにないもの。舅にほめられる婿と、姑によく思われる嫁

「だけれど、そんなもの、めったいにないわよねwww」……というニュアンスがあって、思わずわかる!と共感してしまいます。

さらに「めったたにないもの」として、「毛がよく抜ける銀の毛抜き」「主人を批判しない従者」「まったく癖のない人」など、なかなか毒の効いたことが書き連ねてあり小気味がいいほどです。

さらに「取り柄のないもの」「見苦しいもの」「イライラするもの」なども取り上げていて、毒舌ぶりも磨きがかかっています。清少納言は、感性の豊かな才女でありながらも、はっきり「こういうのキライ」と言ってしまうのがおもしろいところ!

【後編】では、そんな清少納言の現代のSNSなら炎上しそうな文章をご紹介しましょう。

土佐光起画『清少納言図』(写真:wiki)

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