古代ローマ時代の難破船からこれまでに知られていないタイプのアンフォラ(陶器)が発見される

[画像を見る]
スペインのマヨルカ島沖に沈んでいるローマの貨物船から、これまで知られていないまったく新しいタイプのアンフォラが発見された。これらは特定の目的のために独特なデザインで作られたものと考えられる。
アンフォラとは紀元前15世紀頃から古代世界で広まった、生活必需品を運搬・保存するための陶器のこと。たいてい胴体からすぼまった首が伸びていてふたつの持ち手がついている。
セス・フォンタネルスの難破船として知られるこの船は、マヨルカ島の中心地パルマ近くのビーチから65mのところに沈んでいる。
見つかった新型アンフォラは大型で、この貨物船の船倉に積まれていた4種の異なるタイプのアンフォラのひとつだという。
・難破船で発見されたアンフォラ
セス・フォンタネルスの難破船として知られるローマ時代の船は、スペイン南東部のカタルヘナから航行していたらしい。
4世紀に地中海で沈没したとき、いくつかの異なるタイプのアンフォラ(陶器の壺のようなもの)でさまざまな積み荷を運んでいたようだ。
2022年始めに発表された以前の論文によると、船内には数種類のアンフォラが確認され、船の中央には大きな球状のアンフォラもあったという。
[画像を見る]
難破船セス・フォンタネラスの積み荷の配置図 / image credit: Cau-Ontiveros, MA, Bernal-Casasola, D., Pecci, A. et al / Archaeological and Anthropological Sciences・最近になって新たなタイプのアンフォラを発見
まったく新しいタイプのものが見つかったのは最近になってからだ。
見つかったアンフォラのタイプは4つに分類され、そのうち3種類はこれまでにも知られている。
もっとも一般的なのは、アルマグロ51cタイプ(上の図のグリーンで表されているもの)のアンフォラで、外側に記されたティトゥラス・ピクトゥスによって中身がアンチョビソースだったことがわかった。
ティトゥラス・ピクトゥスとは、いわゆる中身を簡単に識別するためのローマ時代のラベルのことで、これには内容物、産地、目的地、所有者についての情報が含まれているため、考古学者にとっては大変有益だ。
そのためこの「ラベル」から、中身の所有者の名がアルンニウスとアウソニウスだということもわかったという。
他のタイプは、果物を入れた平底タイプ、キーXIXタイプがあり、この難破船にちなんでセス・フォンタネラスⅠと名づけられた新タイプのアンフォラが確認されている。
[画像を見る]
難破船から見つかった4種のローマのアンフォラ。右下のDSF-002は今回見つかったまったく新しいタイプのもの / image credit:Cau-Ontiveros, M.A., Bernal-Casasola, D., Pecci, A. et al / Archaeological and Anthropological Sciences・新たに発見されたアンフォラは植物油を運ぶためのものだった
この新タイプのアンフォラは、ほかのものよりもかなり大きくて重い。植物油を大量に運ぶために使われたと思われる。
すべての分析データから、アルンニウスとアウソニウスは船舶貿易会社を設立して、おもに魚醤をアルマグロ51cに、油をセス・フォンタネラスⅠに、ブドウやその加工品を平底のアンフォラに入れて積み込んだ商船を稼働させていたことがうかがえる。
また考古学者たちは、緩衝材としてブドウの葉が使用されたと指摘している。ダンネージとよばれたその緩衝材でしっかりと積み荷を梱包し、航行中に破損しやすいアンフォラも保護していたのだ。
References:Multianalytical approach to the exceptional Late Roman shipwreck of Ses Fontanelles (Mallorca, Balearic Islands, Spain) | Archaeological and Anthropological Sciences / Roman Shipwreck Reveals Entirely New Type of Amphora | Ancient Origins / written by konohazuku / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』