変なドラマかと思ったけど……。『おいハンサム‼︎2』に“人生の醍醐味”を教わった話 (2/3ページ)
そして次のシーンでは、夕飯時にリクエストされたタンメンを作っていた里香が、タンメンを“ワンタン麺”と勘違いしていた夫(桐山連)に逆ギレされていたのである。
その時私は確信したのだ、これは変なドラマなのだと。不貞腐れた夫がその後「タンメン」でしか会話しなくなったのも変だったが、初回の放送にも関わらず、家族の紹介はサラッと触れた程度で、まるで私たち視聴者がすでに伊藤家のことを知っているとでもいうように、物語はどんどん進んでいったのである。
けれど、その違和感はわりと早い段階で薄まっていった。独特の空気感に慣れたというか、例えるならば「友達の家に遊びに行った時お父さんとお母さんもいて緊張したけど、30分も経てば慣れてきた」あの感覚と同じ。
私の日常にドラマが入り込んだのではなく、私が伊藤家の日常におじゃまさせてもらっていることに気がついたのだ。この家族のちょっと屈折したところも、どこか居心地が良かった。
■誰しもが共感する日常生活のちょっとした場面
『おいハンサム‼︎』が他より群を抜いているところは、なんといっても日常生活の解像度の高さだ。“あるある”と“ないない”が混在した伊藤家の日常は、一風変わったエピソードも飛び出てくるが、それでもどこか自分にフィットするような感覚がある。
例えば恋愛に悩んだ時、似たようなシチュエーションを描いた少女漫画に助けを求めたことはあるなとか。深夜のスーパーを梯子して自家製ホットドッグを作ったことはないけど、やってみたいなとか。恋人が浮気相手との別れ話の際に、コーヒーではなく、コーヒーゼリーを食べてたらそりゃあムカつくだろうなとか。伊藤家と自分を重ねては、つい思いを巡らせてしまう。
本作への“好き”を自覚した状態で始まった『おいハンサム‼︎2』は、伊藤家のことをより身近に感じるようになっていた。