人は「過去の無自覚な加害」とどう向き合うべきか カツセマサヒコさんインタビュー(1) (2/4ページ)

新刊JP

その答えを探すように、書き始めた気がします。これを書かないと次には進めないと思っていました。

――今回の小説は「結婚」と「離婚」もテーマになっていますが、このテーマはどのように決まったのでしょうか。

カツセ:無自覚な加害の対象はいろいろあると思いますが、一番その影響を受けるのは配偶者やパートナーだと思いました。それで結婚と離婚というテーマが出てきました。

――これまでに誰かを無自覚に傷つけていた可能性はありますが、そのことばかり考えて生きていくのも辛いですし、これからどういう態度で生きていけばいいのかと、この小説を読んで悩んでしまいました。

カツセ:そうやって悩んでくれたのはうれしいです。一緒に悩んでくれる人がほしくて書いた本なのかもしれません(笑)。自分の加害のことばかり考えて生きるのはたしかに辛いですが、その対象になった人が今どこでどんな暮らしをしているかはわからない以上、こちらが「加害をした」と考えている限り、その傷は確実に存在していると考えています。

――本人の実際の気持ちはわからないにしても、こちらに加害の意識がある以上、その意識と向き合っていかないといけない、ということですね。

カツセ:そうですね。相手が今も傷つけられたことを気にしているかもしれないと思い続けることは、加害した側としては忘れてはいけないと思います。

その意識を持っておくことで、この先の人生ではもう誰かを傷つけないようにしようと自覚できます。自分の加害性と向き合ってはじめて、これ以上は誰かの傷を増やさないようにできる。そこにせめてもの前向きな捉え方をするしかないのだろうと今は考えています。

もちろん、簡単なことではありません。時代とともに、たとえば「こんなことも差別だったのか」と気づいていくこともあるはず。それらを一つずつ修正していくと考えると、もう自分の加害性と向き合うことには終わりがありません。でもそうやって自分を常に更新していくことが、これからの自分の人生には必要なんだと思っています。

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