人は「過去の無自覚な加害」とどう向き合うべきか カツセマサヒコさんインタビュー(1) (3/4ページ)
――自分の価値観に依怙地になるといいますか、変わることを恐れるようにはならないようにしたいです。
カツセ:それはずっと書きたかったことでもあります。この小説では主人公が二人いて、一人は20代の雨宮という青年で、もう一人は同じ会社の別の部署で働く土方という中年の男性なのですが、まず思い浮かんだのは土方の方でした。
――土方は典型的な「体育会系の昭和型上司」として描かれていて、かなり今の時代とはミスマッチな人物ですよね。
カツセ:そうですね。現実世界を見ていて、たとえば高齢の政治家が過去の失言をまったく反省せずに、同じような発言を繰り返していたりするじゃないですか。自分もいつかああなってしまうのかなと思うと、嫌で仕方ないんです。でも、そう思った時に、土方のような人だって、気づきさえあれば変化していけるのではと思ったんですよね。
――カツセさんは会社員をされていた時期もあるとのことですが、土方はその経験からできたキャラクターなのでしょうか?
カツセ:僕自身が土方のような上司と仕事をしていたとか、彼のような人に何かされたということはないです。彼に関してはあえてややステレオタイプに「昭和の男」として書いています。
時代によって良し悪しや価値観は移り変わっていくわけで、昭和の時代であれば土方のような生き方は良しとされていましたし、肯定されて、賞賛さえされていたはずです。時代が変わってもシーラカンスのようにそのままの形で生き永らえてしまった人が土方で、彼にどうリアリティを持たせるかというところはとても気を遣いました。
――世代的には土方と近いですが、比較的柔軟な三条というキャラクターが登場することで、土方にリアリティが出ている印象を受けました。
カツセ:三条は土方と違って、時代に合わせて変わっていけた人ですよね。たしかに二人の対比があったから土方がより明確なキャラクターになったのかもしれません。