フロリダのサボテン種が絶滅、アメリカ初となる海面上昇の犠牲者に

[画像を見る]
image credit:Luke Padon / WIKI commons CC BY 4.0
アメリカ、フロリダ州に自生していたサボテンの希少種が完全に姿を消し、米国内のものは全て絶滅した。
”局所絶滅”が確認されたのは、「キーラーゴ・ツリーカクタス(Pilosocereus millspaughii)」という種だ。カリブ海のいくつかの島にはまだ生息している。
アメリカで、海面上昇による植物の絶滅事例はこれが初めてだという。
・希少なサボテン種、最後の6本がついに絶滅
キーラーゴ・ツリーカクタス(Pilosocereus millspaughii)は、サボテン科の顕花植物の一種で、フロリダ、バハマ、キューバ、ハイチ、タークス・カイコス諸島が原産だ。
現在も、キューバ北部やバハマ諸島の一部を含むカリブ海のいくつかの島々に生息しているが、米国内ではフロリダ州南部の群島フロリダキーズでしか見られなかった。
2021年まではおよそ150本あったキーラーゴ・ツリーカクタスだが、海面上昇に対して特に脆弱で。海水の浸入・嵐や高潮による土壌浸食が最も大きな要因となり、さらには動物の食害によって激減した。
そして最後に残された6本もついに死んでしまったことが、『Journal of the Botanical Research Institute of Texas』(2024年7月9日付)で報告された。
[画像を見る]
米国内での局所絶滅が確認されたキーラーゴ・ツリーカクタス。その花からはニンニクの香りがする / image credit:Susan Kolterman/Florida Museum・海面上昇による植物絶滅の始まりとなるか?
この報告をした研究チームの1人で、フェアチャイルド熱帯植物園の地域保全責任者を務めるジェニファー・ポスレー氏は、これが海面上昇による植物絶滅の始まりになるのではと懸念する。
残念なことに、キーラーゴ・ツリーカクタスの事例は、低地に生える海岸植物が温暖化から受ける影響を示す前例になるかもしれません(ジェニファー・ポスレー氏)だが、あくまで米国内のキーラーゴ・ツリーカクタスが絶滅したという話で、キューバ北部やバハマといったカリブ海諸島にはまだ自生している。
それでもポスレー氏が危惧するように、残ったサボテンが安泰だとはとても言えないだろう。
キーラーゴ・ツリーカクタスは、ツリーという名が伝えるように、高さ6メートルを超えることもある樹木のようなサボテンだ。
[画像を見る]
ツリーの名が示す通り、樹木のように背が高い / image credit:Susan Kolterman/Florida Museum
また、それが咲かせるクリーム色の花は、ニンニクの香りをただよわせ、月明かりに照らされるとキラキラ輝くユニークなもの。
これは花粉を運んでくれるコウモリを引き寄せるための工夫だ。また鮮やかな赤紫の果実は、ほかの哺乳類や鳥類をも魅了する。
気候変動により、氷床や氷河が溶けて世界中の海に流れ出ている。さらに海水は温まるとわずかに膨張し、どちらの要因も海面上昇の原因となるという。
研究者たちは、このサボテンが自然環境で生育する可能性は今後もないと考えている。そこで、フロリダ州環境保護局との協力計画により、野生での再導入が計画されている。
とは言え、これは解決策というよりは、その場しのぎの処置に終わるかもしれないとポスレー氏は語る。
このサボテンに適した環境は、それらを支える植物とともに消失しているからだ。
「このサボテンを育てるには、マングローブの林とトゲのある低木地帯が必要ですが、再導入した個体群を生育できるような場所は、ほとんど残っていないのです。」
References:First local extinction in the U.S. due to sea level rise – Research News / Florida Cactus Species Becomes First US Extinction Victim of Rising Seas : ScienceAlert / written by hiroching / edited by / parumo
『画像・動画、SNSが見れない場合はオリジナルサイト(カラパイア)をご覧ください。』