入山料、時間規制…「富士山」はなんで揉めたのか? 本来の”開山”と”閉山”の意味とは?
富士山の入山料と時間規制がさまざまな議論を呼んだ今年の夏でした。
ちなみに筆者は登山愛好家ですが、富士山は20代で一度登ったことがあるものの、その後は「もういいかな…」と興味が湧きません。
理由は色々とありますが、個人的に
・登山道が平坦で簡単すぎる
・テント泊ができない
・火山なので、植生が乏しく山としての魅力がそれほどない(すみません!)
登山愛好家は夏山シーズンは、槍ヶ岳や穂高連峰、白馬などの長野~富山にまたがる北アルプス、山梨~静岡の雄大な南アルプス、東北の飯豊連峰など山深く自然の醍醐味が存分に味わえる山を続けて歩く縦走などを好みます。
もちろん、登山愛好家やトレラン愛好家のなかにも富士山も好んで上る方もいらっしゃるでしょう。しかし富士山の特徴としては
「登山客に、登山を一度もしたことが無い人が圧倒的に多い」
ことが、一番問題になっているのではないでしょうか。
また、開山前や閉山後の登山が問題視されたりしていますが、そもそも閉山=法律で登山を禁止した期間ではないのです。なぜなら閉山後も雪山登山でにぎわう山がたくさんあります。
では開山と閉山とは一体どういうことなのでしょう。
開山と閉山は修験道で使われた言葉元々、「閉山」「開山」は修験道で使われた言葉でした。
修験道は、山々を神として崇拝した山岳信仰をもとに、神道・仏教・道教が融合して生まれた宗教で、険しい山にこもり難行苦行することによって、法力や呪力験力を獲得できるとされていました。
「修験」は「修行をして迷いを除き、験徳をあらわす」という言葉からきており、開祖は「役の小角」(のちの役行者)とされています。
これらの霊山とされている山々は山伏や僧侶たちのみ立ち入ることができ、一般人(俗人)は立ち入ることを禁止されていました。
しかし江戸中期以降、各地に山岳信仰の「講」が結成され講中登山が行われるようになります。俗人の信徒たちも山頂に祀られている神を拝みたい、という思いが大きくなったのです。そのため、日数を決めて山を俗人に開放するようになりました。
これがいわゆる「山開き」=開山です。初日をとくにお山開きとよび、信徒たちは山に登れることを祝いました。
また、こういった信徒を導くための「御師」という職業も生まれ、富山の立山や富士山も大いに賑わいました。
最終日は「山仕舞い」=閉山とよび、山はまた修験者たちの世界となりました。
現在の開山祭では麓の神社から神を山頂にお祭りし、閉山祭では山頂の神社から神を麓にうつすという意味合いもあります。これらの儀式や祭りは、現在では観光名物として観光客を呼び込むのに一役かっています。
まとめますと、修験者や僧侶しか入れない聖地とされてた山に、一般の人も入山してもよいとした期間、ということになります。
ですので、開山・閉山には宗教上の意味以上の法的拘束力はありません。
多くの山で冬季に山小屋が閉まるのは、「雪や凍結で営業ができず、登山客も少ない」という現実的な理由が主なのです。
山は一体誰のもの?近代化に伴い、象徴的だった「山」は一体誰のもの?という課題が残りました。
現在「山」を取り巻く環境は幕藩体制だったころよりも複雑化しているといえるので、その山が「国有地」なのか「私有地」なのかで大きく変わってきます。
私有地であれば不法侵入になりますし、国有地でも特に「国立公園」や「特別保護地区」などでは、植物の採取などが制限されており、違反すれば罰則があります。
また、特に有名ではない低山は「所有不明の山」が無数にあるのが現状です。訪れる山が、いったいどこの管轄なのかを確認しておくことがベターです。
ちなみに富士山は、8合目から浅間神社、8合目までの登山道は各県(山梨・静岡)の土木課の管理、5合目付近は山梨県富士吉田市と静岡県富士宮市の管轄になっているのだそう。こういった複雑さが規制の混乱を招いているともいえます。
基本的に、国有地や国立公園は日本国民全員の共有の財産であり、国民にはそこを訪れ自然に触れてそれを楽しむ権利があります。ですが、それとともに「公共の福祉に反しない限り」に則して、自分勝手に景観を大きく損ねたり自然を破壊してもいけません。
第3章 第13条
すべて国民は、個人として尊重される。 生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。
昔から、冬の富士山はエベレスト、ヒマラヤをはじめとする高所登山を目指す登山家達の練習場所となっており、冬季営業小屋もあります。
ですので、自治体の多くは冬期登山は「自粛をお願いします」という表現になっているのだと思います。
もちろん、体力、技術、装備を持ち見合った力量でなければ安易な登山は控えるべきでしょう。富士山は高山病になりやすいので、心肺機能を高めるために一度他の山で体力をつけたり、2000m級の山に行って高所に体を慣らすなどをしてから登ると、楽だとおもいます。
日本の文化と「今」をつなぐ - Japaaan