愛されフルーツ「ナシ」の歴史は想像以上に古かった!その起源と歴史を解説【後編】

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愛されフルーツ「ナシ」の歴史は想像以上に古かった!その起源と歴史を解説【後編】

個性豊かな地方のナシ

【中編】では、日本でのナシ栽培の特徴について説明しました。

愛されフルーツ「ナシ」の歴史は想像以上に古かった!その起源と歴史を解説【中編】

【後編】では、ナシに関する民俗などを見ていきましょう。

日本の各地には、いろんな名前のついたナシの木があります。それだけ人々の生活に密着し、土地ごと・品種ごとに見合った特徴を見出されてきたのでしょう。

つまり昔の人は、ナシに関する「解像度」が非常に高かったということです。

梨の花

ナシの名前とその由来には、変わったものもあります。

例えば、甘くてほっぺたが落ちそうになり、思わずほっぺたを叩いたことから名前がついた「頬叩」や、おいしいといわれる樹を「どいつだ!」といったことからついた「獨逸」などがあります。

さらに、木の上から落ちてきた大きな果実が下にいたお婆さんに怪我をさせたことから「ババウッチャギ」(熊本の方言で「つぶす」意味)という名前もあります。

また、「犬殺」「猫殺」といった物騒な名前もあります(ちなみにナシに犬猫に害を及ぼす毒性はありません)。大きくて着物のたもとを破る「袂破」なども。

おいしさのあまり巾着(財布)のあり金を全部はたいて買うことから「巾着叩」などもあります。

魔除けにもなった!?

では、さまざまな名称が各地に存在するナシですが、この「ナシ」という名前はそもそも何に由来するのでしょうか。

これについてはさまざまな説があります。

中の果肉が白いことから「ナカシロ(中白)」が略されてナシとか、果実の芯に近い果肉が酸っぱいために「ナカス(中酢)」が訛ってナシ、嵐があると実らないことから「風ナシ」という説などです。

ル・レクチェの果肉

また、ナシは「なし」に通じるため縁起が悪いというので「ありの実」と呼ぶ人もいます。

イベントが「閉じる(終わる)」のを反対に「お開き」と言ったり、また一部地域で食べ物を「切る」のを反対に「生やす」などと言ったりするのと同じですね。

かと思えば、逆にナシの名前を逆手にとって、家屋の中で鬼の通り道とされ縁起のよくない北東の方向(鬼門)にナシを植えて「鬼門なし」として家を守ったりすることもありました。

「利のある木」

さて、そんなナシは健康効果が高い果物です。

そもそもナシは漢字で利のある木(梨)と書き、昔からいかに人間にとって役に立つ果物として認識されていたかが分かりますね。

漢方では、ナシには風邪からくる咳を止め、痰を抑える効果があるとされています。また、昔からナシの果汁を砂糖で煮詰めたエキスや飴は、喉の痛みによく効くと言われています。

さらにナシ特有のシャリシャリした歯ごたえは、ペントサンやリグニンと呼ばれる成分でできている石細胞によるもので、便秘にも効果があります

さらにカリウムを多く含んでいることから、血圧を下げる作用も期待できます。

健康のために梨を食べよう

現代医学の発達していなかった江戸時代には、ナシを川に流して虫歯が治るように祈ったことがありました。これだけを見ると単なるおまじないですね。

しかし現在では、ナシに含まれるソルビトールという糖分に虫歯菌の増殖を抑える効果があるとされています。もしかしたら、昔の人はナシのそんな効用にも気付いていたのかも知れません。

参考資料:さわむらゆたか・かじうらいちろう編集『ナシの絵本 (そだててあそぼう)』農山漁村文化協会 (2006年)
画像:photoAC,Wikipedia

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