人々の切実な願望を祈願した象徴「陰陽石」とは?奈良・水谷神社の「子授石」についての考察【後編】 (4/5ページ)
「水谷神社」の瑞垣の隅には、ひときわ目を引くイブキの巨樹が伸びています。現地説明板によると幹周6. 55m・樹高12. 5mで、先端部分は枯死しており、全体的にもほとんど葉がない状況です。倒壊を防ぐためでしょうか、2本の金属製の柱で支えられています。
実はこのイブキ、説明板によると「幹は空洞になっており、その中から杉が育ち、イブキの大きな幹が杉を抱え込む形になっている。 この不思議な関係のイブキと杉は古くから『水谷神社の宿り木』の名で知られている。』と記されています。
つまり、イブキの幹はすでに空洞になっていて、その中で杉が大きく育ち、その杉はイブキの幹に抱え込まれているということです。この不思議なイブキと杉の共生は、古くから「水谷神社」の「寄生木」として知られています。
このイブキこそ「子授石」に対して対を成す、陽木ではないかという説を唱える人もいるようです。自然物崇拝という意味では、石が樹木になってもなんら違和感がなく、かえってほぼ前に位置する「子授石」に向かい、そそり立っているように見えてくるから不思議です。
天気が良い日でも薄暗い、森の深緑の中に鎮座する朱色の社殿。そして、ひっそりと置かれた「陰陽石」、威厳あふれるイブキの巨樹。ここには、神社本来のもつ清浄な空気が流れる空間が存在します。