イタコのルーツ!?“あの世とこの世”をつなぐ女神「ククリヒメノカミ」が今も全国で崇拝される理由【日本書紀】

以前の記事で、イザナギとイザナミの夫婦が呪いの言葉を吐き、別れてしまった顛末をご紹介しました。
「日本最古の呪いの言葉」は妻から夫へ向けてのものだった!人の寿命が定められたある神話の悲劇
実は、この夫婦が黄泉比良坂(よもつひらさか)で言い争ったとき、ククリヒメノカミ(菊理媛神)という女神が仲裁したとも伝わっているのです。
このエピソードから、ククリヒメノカミは死者と生者の仲を取り持つイタコの先祖だと考えられています。

イザナギはこの世からあの世、つまり黄泉の国へイザナミを迎えに行きました。しかし黄泉比良坂で二柱は大喧嘩しています。
この場面で登場したククリヒメノカミは、つまり死者と生者の仲介役だと考えられるのです。そして巫女(シャーマン)のような存在だと言われるように。

古来、巫女は祖先の霊や神の言葉を伝える役割を担っていました。現代では死者の言葉を伝えるというと、イタコが思い浮かぶかと思います。
イタコは口寄せを行う巫女とされているので、ククリヒメノカミはイタコの先祖とも考えられるのです。
白山信仰の主祭神として君臨日本の神様は「古事記」に登場していると思うでしょうが、ククリヒメノカミは古事記には出てきません。日本書紀で名前がわずかに触れられているだけの女神なのです。
そういった扱いであるにもかかわらず、全国に広がっている白山信仰の主祭神・白山比咩神と同一神とされ祀られています。
白山信仰は山岳信仰であり、その総本山は石川県にある白山比咩神社です。ここから分霊された白山神社は全国に2,000社以上もあります。

ちなみに古事記は物語のような内容ですが、日本書紀は年代順にエピソードを記している書物です。小説のように楽しむなら古事記がおすすめと言えますね。
悩める生者に死者の声を届ける役目日本書紀では、「ククリヒメノカミが何かを言い、イザナギが褒めた」という意味のことが書かれているだけで、実際に何を言ったのかは書かれていません。
是時、菊理媛神亦有白事、伊弉諾尊聞而善之。
日本書紀巻第一より
しかし前後のエピソードから考えると、ククリヒメノカミが二柱の仲裁をしたおかげで、イザナギが無事にこの世に戻れたのではないでしょうか。

現在も死者の声を届けるイタコによって、生きている人が救われるという話があります。ククリヒメノカミは、悩める生者に死者の声を届ける優しい役目を負った女神なのかもしれませんね。
参考サイト:日本書紀、全文検索
参考文献:戸部 民夫「日本の神様」がよくわかる本
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