大河『べらぼう』鬼すぎた誰袖w 春町が史実で予想した江戸を紹介、ほか…5月18日放送の振り返り&解説

前々回で急病に倒れたカボチャの旦那こと大文字屋市兵衛(伊藤淳史)が、ついに亡くなってしまいました。
【実在人物】病に倒れた”カボチャの旦那”こと大文字屋市兵衛(伊藤淳史)の生涯[大河べらぼう]
そんな中、廃業する鱗形屋孫兵衛(片岡愛之助)から吉原細見の版木を買い取った西村屋与八(西村まさ彦)が、吉原遊廓の忘八連中に攻勢を展開します。形勢逆転を図る耕書堂の蔦屋重三郎(横浜流星)は、人気作家•恋川春町(岡山天音)の引き抜きを図るも、その義理堅さから上手く行きません。
しかし春町は新たなお抱え先である鶴屋喜右衛門(風間俊介)と反りが合わず、創作意欲(ポテンシャル)を持て余していました。このまま春町を燻らせたくない一心で蔦重と鱗形屋が手を組み、春町の味を活かせる案思(あんじ。作品の構想)を練り上げます。
果たして春町が書き上げる「百年後の江戸」とはいかなる世界か?蔦重(と鱗形屋)の度量と期待に心打たれた春町は、ついに耕書堂への鞍替えを決意するのでした。
そんな第19回放送「鱗の置き土産」。創作を通じて和解する蔦重と鱗形屋の姿に、視聴者は感動したことでしょう。
いっぽう政争に揺れる江戸城中は、そして蔦重に片思いする誰袖(福原遥)は……今週も盛りだくさんの内容をピックアップしてまいります。
恋川春町の未来予想図『無益委記』とは?百年後の江戸では、人々がどんな髷を結っているのか……?
安永9年(1780年)から数えて百年後の明治13年(1880年)には、武士たちも髷を結わなくなりつつありました。
※明治4年(1871年)に散髪脱刀令が施行されています。
さすがにそこまでは予想できなかったようですが、恋川春町は『無益委記(むだいき)』で自由闊達な未来予想を描きました。

特にストーリーはありません。荒唐無稽なようでいて、それぞれ社会風刺を込めたり込めなかったり……実に活き活きと筆を奮っています。
果たして春町が描いた未来の江戸は、こんな姿になっていました。
初鰹の時期が3月から12月に。 初鰹が高騰して880両(約8,800万円)に。 行商の天秤棒は上反りに。 裾を引きずるほど長い羽織が流行る。 釣り竿のように長い髷が流行る。 真夏の6月が、汗の凍るほど極寒に。 素麺を煮て冷やして温汁で食べる。 寒すぎて野菜が腐ってしまう。 僧侶は堂々と女郎を買うように。 僧侶の飲酒や殺生が解禁される。 吉原大門に柳でなく松が植えられる。 女郎が客を選り好み可能になる。 吉原の俄祭りでは茸狩りが大人気。 猫も杓子も芸者になる。 男娼の切魔見世ができる。 地震で天が揺れる。 雷が地の底で鳴り響く。どれが何の風刺か、あるいは単なる空想か、考えてみるのも楽しいですね!
徳川家治「血筋は譲るが、知恵は譲らぬ」苦渋の決断に田沼が涙知保の方(高梨臨)による服毒自殺は狂言だったようですが、それでも徳川家治(眞島秀和)に血筋を放棄させるには十分な打撃でした。

このまま自身の血筋にこだわり続ければ、これまで知恵袋として自分の治世を支えてくれた田沼意次(渡辺謙)を守りきれない。そう判断して、苦渋の決断を下したのです。
加えて父である第九代•徳川家重から受け継いだ血筋は身体が弱く、将軍職の重責に耐え切れないという判断もあったことでしょう。
第八代•徳川吉宗の配慮(※)が裏目に出てしまった遺恨を断ち切る決断に、意次は涙したのでした。
(※)能力や資質に関係なく、長子が将軍職を継承すると決めることで、無用の後継者争いを防げるとする考えです。
かくして家治は一橋治済(生田斗真)の子である豊千代(後の第十一代将軍•徳川家斉)を養子に迎えるのでした。しかしそのことが、やがて田沼政権に陰を落とすことになります。そうなることは分かっていても、避けられないものでした。
今回はごく短いシーンでしたが、実に密度の濃い主従の絆が描かれており、視聴者も胸打たれたのではないでしょうか。
大文字屋の遺言書を偽造した?誰袖花魁九郎助稲荷(綾瀬はるか)に鱗形屋の幸せを願う蔦重に手を重ねる誰袖。
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聞けば瀕死の大文字屋市兵衛に半ば無理やり書かせたのだとか。

令和の現代なら民法第968条1項(≒遺言書は自分の意志かつ自力の自筆で書かねば無効)違反で無効となるであろう悪どさです。
まったく誰袖ときたら恐ろしい子、いったい志げ(山村紅葉)は何をしていたのでしょうか。
分かっているとは思いますが、実際の誰袖はこんな暴挙には及んでいません。そもそも蔦屋重三郎と恋仲であったということもないはずです。
それにしても、かなり強(したた)かな女性に成長した誰袖。やはり当代一の花魁は、このくらい図太くなくては務まらないのかも知れませんね。
しかし本命の蔦重はそんな誰袖にドン引き。目的のためには手段を選ばない彼女の毒牙?から、逃れることができるのでしょうか。
第20回放送「寝惚けて候」永らく尾を引いていた鱗形屋との対立が解消し、ポテンシャルが引き出された恋川春町を仲間に引き込んだ蔦重。やはり波に乗っているヤツは、勢いが違いますね。
次週は寝惚先生(ねぼけせんせい)こと大田南畝(桐谷健太)がついに登場。いよいよ天明狂歌の世界が幕を開けるのでしょうか。
猫も杓子も世の不満や風刺を五七五七七に込めて、思い思いに詠います。
一期は夢よ、ただ狂え、ただ詠え……次週も蔦重たちの活躍が楽しみですね!
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