横浜人の気質「ハマっ子三日」どういう意味?誰が最初に?言葉の起源をたどってみると…

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横浜人の気質「ハマっ子三日」どういう意味?誰が最初に?言葉の起源をたどってみると…

日本全国津々浦々、地域性というものがございます。

転入したその日から一員として迎え入れられる地域があれば、江戸っ子三代などと言うように祖父母の代から住んでいないと一員に認められない地域も少なくありません。

幕末に開港し、盛んな多文化交流を展開してきた横浜では、その開放的な気質から「ハマっ子三日」などとも言われてきました。

つまり生まれや育ちに関係なく「三日住んだら、あなたも立派な横浜人(ハマっ子=横浜の子)」ということですね。

ところでこの「ハマっ子三日」とは、いったい誰が言い始めたのでしょうか。今回は「ハマっ子三日」の起源について調べたので、紹介したいと思います。

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最初は「ハマっ子一日」だった

五雲亭貞秀「神奈川横濱新開港図」

結論から言うと、この「ハマっ子三日」の提唱者は、コラムニストの青木雨彦(あおき あめひこ。昭和7・1932年生~平成3・1991年没)でした。

具体的な日時は明らかにされていないものの、確認できる限りで最も古い発言は、昭和56年(1981年)の朝日新聞に記録されています。

※「朝日新聞」昭和56年(1981年)11月16日夕刊「新人国記81(155)神奈川県12 ずらりペンの同窓」より。

ちなみに青木雨彦はハマっ子について、三日ではなく一日と言ったようです。

「江戸っ子は三代続かなきゃあ江戸っ子じゃないけど、ハマっ子は一日住めばハマっ子だ」

後にこの発言が、元横浜市長の細郷道一(さいごう みちかず。大正4・1915年生~平成2年没)や、ジャーナリストの草柳大蔵(くさやなぎ だいぞう。大正13・1924年生~平成14・2002年没)によってとり上げられました。

……横浜で生まれ育ったコラムニスト青木雨彦氏は「江戸っ子は三代続かなきゃあ江戸っ子じゃないけど、ハマっ子は一日住めばハマっ子だ」という。……

※細郷道一「横浜物語(大蔵財務協会「ファイナンス」1986年12月号)」

……うまいこと言う人がいました。江戸っ子は三代続かないと江戸っ子にならない。浜っ子は一日いると浜っ子になるというんです。……

※草柳大蔵・中村實 対談(浜銀総合研究所「Best Partner ベストパートナー」1989年4月号)

この時点では、まだ「ハマっ子一日」ですが、ほどなく青木雨彦自身が「ハマっ子三日」に言い換えています。

……中学の先輩である草柳大蔵さんが、「だれの言葉だか忘れたが、江戸っ子は三代住まなきゃ江戸っ子じゃないけれども、ハマっ子は三日住めばハマっ子である」とおっしゃってくださったけれど、これは実は私が言ったんです。これは朝日の『新人国記』に書いてあります。……

※青木雨彦(浜銀総合研究所「Best Partner ベストパートナー」1989年9月号)

いつの間にかハマっ子のハードルが一日から三日に上がっていました。

恐らく深い意味はなく、江戸っ子の「三代」に語呂よく対比できるから、ハマっ子も「三代」の方がいいと思ったのかも知れません。

終わりに・懐の深さと強烈な地元愛

三代目歌川広重「横浜海岸鉄道蒸気車図」

今回は「江戸っ子三代・ハマっ子三日」の由来について調べてきました。元は「ハマっ子一日」だったのですね。

昔から神奈川県は東京をライバル視していると言われており、もしかしたらハマっ子たちに

「花のお江戸だ東京だと、お高く気取ってはいるが、結局はお上りさんの集まりじゃないか。その点われらが横浜は、日本全国ひいては世界中に開かれているぶんスケールが大きい!」

という自意識があったのかも知れませんね。

東京だって横浜以上に開かれていると思いますが、横浜には幕末期に江戸より早く開港したという自負など、東京に対するライバル意識があるのでしょうか。

♪わが日の本は島国よ 朝日かがよう海に

連りそばだつ島々なれば あらゆる国より舟こそ通え♪

♪されば港の数多かれど この横浜にまさるあらめや

むかし思えば とま屋の煙 ちらりほらりと立てりしところ♪

♪今はもも舟もも千舟 泊るところぞ見よや

果なく栄えて行くらんみ代を 飾る宝も入りくる港♪

※横浜市歌(作詞:森鴎外/作曲:南能衛)

【意訳】私たちの日本は島国です。朝日がキラキラ輝く海に、たくさんの島々が集まっている。世界中から船が入ってくるでしょう。

島国である日本にはたくさんの港があるけれど、横浜港より素晴らしい港はありません。しかし昔は粗末な小屋から、チラホラと煙が立ち上る寒村でした。

それが今は百隻も十万隻も船が停泊し、とても素晴らしい眺めです。果てしなく繁栄する日本を飾る宝のようではありませんか。

……郷土に対する愛情と誇りが、これでもかとばかりに謳われていますね。

横浜は開放的で懐の深い地域性が魅力です。みなとみらいに象徴される洗練された街並みも、自然豊かな田園風景も、一人一人に合わせた住みよさを実感できると思います。

皆さんも、ハマっ子になって横浜市歌を熱唱してみませんか?

※参考文献:

『朝日新聞縮刷版 昭和56年 11月』 朝日新聞社、1981年12月 『新人国記 2 香川県・長野県・神奈川県・熊本県・奈良県』朝日新聞社、1982年11月

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