「べらぼう」オタクぶり全開!松平定信の“蔦屋耕書堂は神々の集う神殿”に泣き笑い【後編】
憎き一橋治済(生田斗真)に報復するため浄瑠璃小屋に呼び出す作戦は失敗。失敗した時の策は、まさかのノープランだった松平定信(井上祐貴)に、「毒饅頭の仇は毒饅頭で討つ」というみの吉(中川 翼)のアイデアを提案した蔦重(横浜流星)。
実父・治済の極悪非道ぶりに気がつき、成敗せねばと決意した徳川家斉(城桧吏)、徳川家治(眞島秀和)の弟で御三卿・清水家の当主清水重好(落合モトキ)を味方に引き入れ、清水宅の茶室を決戦の場とします。
一見、押しの弱そうな二人でうまくいくのか。【後編】では、緊張した「饅頭こわい作戦」と、SNSでも話題となった、黄表紙本大好きなオタクぶり全開となった定信と蔦重の別れの場面を振り返って考察してみます。
【前編】の記事はこちら↓
「べらぼう」“覚醒の上様”を巻き込む蔦重最大の大戯け!そしてオタク全開の定信との別れを考察【前編】 能好きの傀儡師を瓜二つの能役者にすり替える大作戦茶室にて、重好が茶を淹れる間に茶菓子を勧められる家斉と治済。さんざん毒で人を殺めて来た治済は用心して手を付けません。家斉に自分の分も食べるように勧めます。
自分の身を守るためなら、我が子さえ平気で毒味役にする傀儡師。もし家斉の心の中に、実父を罠に嵌めることに躊躇する思いがあったとしても、この態度で見事砕け散ったことでしょう。
飄々と「美味でございますよ」と言いつつ菓子を食べる家斉の脳裏には、大崎の「上様こそがお父上の際たる傀儡」という言葉が鮮やかに浮かんだはずです。
菓子も茶も毒など入ってないだろうと安心し、家斉に次いで茶をいただく治済。ところが急に家斉がうつ伏せになり、「謀られた!」と逃げようとするも足をもつれさせて倒れます。
その様子を、ざまをみろとでもいいたげな冷たい表情で観察する重好がなかなかに怖かったですね。
『饅頭こわい』は先週の出来事でした。今週は落語の「饅頭こわい」のあとの「次は熱い茶がこわい」を採用して「茶こわい」というオチでした。
けれど、毒は毒でも眠る毒。治済は殺さないで、阿波の孤島に閉じ込めます。
「お武家様は平気でも、わたしには自分が企んだことで人が死ぬのはどうも」という蔦重の考えと、柴野栗山(嶋田久作)の「どれほど外道でも親殺しは大罪、殺したら上様も仕掛けた皆も外道になる」との考えで、そういう運びとなったのでした。
守備よく、昏睡状態になった治済と替え玉・斎藤十郎兵衛(生田斗真)を取り替えて、治済は鍵付きの箱に詰められて阿波に向けて出立、報復は成功したのでした。
報告を聞いて、田沼意次と意知の位牌に手合わせ「やりました、やりました、やりました」と涙を流す三浦庄司(原田泰造)。最後まで「三浦殿スパイ説」が根強く残っていましたね。
けれど、私は平賀源内(安田顕)の「民が富む仕掛けを作る」という提案が実り、繁栄した相良藩の現状を視察し「源内とわしが思い描いたとおりの国となった」という意次に、しみじみ「(源内殿に)お見せしとうございましたなぁ」と感無量になって呟いた、三浦殿をずっと信じてました。
定信の報復劇は、田沼親子の無念も晴らしたのでした。
「いちど きて みたかった のだ」
そんなある日、国元に戻る前に耕書堂を訪れた定信。のれんをくぐり店内に入った瞬間に目が輝きためいきをつき笑みがこぼれます。(後ろにいた蔦重には見えていない)
書籍などの印刷物が大好きな人が、品揃え豊かな書店の中に足を踏み入れた瞬間、「こういう表情になるよな!」な典型的な顔をしていましたね。本当に嬉しそうでした。
「今日はいかなる御用向きで?」と感じ悪く尋ねる蔦重に「国元に帰る」と言いつつも、定信は、店内を見渡し、写楽の絵を眺め、店頭に並んだ黄表紙を手に取り夢中で次々に手に取っていきます。
政には戻らず国元に帰る理由として「外道とはいえども上様の父君をはめた罰を受けるべきだと思ってな」という定信に、へえ〜という表情で「そういうところは筋を通されるんですね」と嫌味を重ねる蔦重。
そんな態度には慣れたのか「そういうところもだ!」と返し、一橋治済と入れ替わった斎藤十郎兵衛に時折、絵や本を差し入れて欲しいと依頼します。そして、今回の報復劇に上様を巻き込んだ蔦重のアイデアを「秀逸だった。ほめてつかわす」と言いました。
一瞬嬉しそうな表情を浮かべた蔦重ですが、すぐに「それをおっしゃるためにお立ち寄りに?」と怪訝そうに尋ねます。ちょっと目を泳がせて蔦重から顔をそらした定信、こんな表情は初めて見ましたね。
そしてちょっと躊躇しながらツンデレな態度で思い切って話すところは、まるで好きな人に告白するときの女子のドキドキ感、そのままでした。
「イキチキドコキキテケミキタカカカッタカノコダカ」
いわゆる「キ抜き言葉」で、最初は「あぁ?」な蔦重も、もう一度早口で言われわかったのでしょう。
「いちど きて みたかった のだ」という言葉に驚いた顔をみせます。
きっとこれを言ってやろう!と練習したとおもわれる定信 NHK大河「べらぼう」公式サイトより
この言葉をストレートに言えばいいのに、照れ臭くて言えずにわざわざ噛みそうな「キ抜き言葉」でいう定信。今までの感じの悪い越中守の片鱗はどこにもありません。
ただ純粋に黄表紙やら浮世絵やらの江戸カルチャーが大好きで、来てみたかった憧れの書店に入り、興奮を抑えつつも目の輝きと口元の笑みは隠しきれない純なオタク青年になっていました。
「いちど きて みたかった のだ」と言い切り、「え?」と驚く蔦重の表情を見て「よしゃ!言ったぞ」とちょっと鼻を膨らませてやり切った感がでているのがかわいかったですね。ここで、松平定信の好感度は爆上がりしたようです。
一度告白したらもう怖いものはありません。怒涛のように恋川春町(岡山天音)愛や黄表紙愛を語り始めました。
「黄表紙はもれなく読んでおる」
「春町は我が神。蔦屋耕書堂は神々の集うやしろであった」
すごい語彙力。クリエーターなら、ファンにこんなに熱く語られてみたいと思います。苦労してさまざまな作品をこの店から世に出してきた蔦重もプロデューサー、書店主冥利に尽きる言葉と感じたのではないでしょうか。
「あのこと(春町の自死)は余の祭り事の中で唯一の不覚だった。」
「上がったタコを許し、笑うことができればすべてがちがった」と後悔の気持ちを語る定信。
その真摯な定信の言葉で、蔦重のなかに凍っていたものが氷解したのかもしれません。
「“写楽プロジェクト”は春町の供養のつもりでした。春町をそそのかし、でっけえ凧をあげさせたのは自分です」という蔦重。
しばし無言で店内に貼ってある本名の「恋川春町」の名前を見つめる二人。「ご一緒できてようございました。」と頭を下げる蔦重に、ぐっと口元を噛み締めた定信。
照れくさいのか、急に話を変え「では、今後は随時よき品物をみつくろって白川に送るように」と、通販を希望。え?という蔦重に「抜け目ない商人に千両も取られたゆえ、倹約せねばならぬ」と。
先日の「なにせ暇なもんで。どなた様かのおかげで店を休むことになりまして」の蔦重の嫌味への仕返しでしょう。相変わらず、負けず嫌いなところはそのまま。
やれやれ食えねぇお人だというような呆れ顔の蔦重でしたが、夢中になって、あれもこれもと黄表紙をたくさん手に抱える定信に苦笑しているのも面白かったです。
定信はさっそくカゴの中でホクホク顔で黄表紙を開いてましたね。九郎助稲荷にもナレーションで「硬軟併せ持つオタク」と言われてました。
今までも憎たらしい反面、「黄表紙大好き」で憎めない一面をたまに見せてくれていましたが、蔦重とのやりとりでみせてくれた定信。井上祐貴さんが見事にハマり役だったと思います。
待ちきれずニコニコで黄表紙本を読む定信 NHK大河「べらぼう」公式サイトより
立場を超えて蔦重と定信が「なんか面白ぇ本を作りましょう」とああでもないこうでもないと「案思(あんじ)=創作の元になるアイデア」の意見をかわして盛り上がっているところをみてみたいなと思いました。
自分では最高の案思だと思って夢中になって語るも蔦重にダメ出しされて、カチッとくるきれる定信とか「べらぼう:もしも◯◯◯だったらシリーズ」スピンオフでやってくれないかなと願いつつ、来週はいよいよ最終回ですね。
予告編では蔦重の旅立ちというのになにやら「屁!」が全面にでてきているのですが、どのような最後になるのやら。さみしいですが、最終回が楽しみですね。
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