『豊臣兄弟!』いずれ訪れる悲劇…戦国一の美女・お市(宮﨑あおい)登場!願いの鐘に託す姉・妹の祈りを考察
NHK大河ドラマ『豊臣兄弟』、第2回のタイトルは「願いの鐘」。
早くも、戦国一の美女で悲劇のヒロインともいわれる「お市(宮﨑あおい)」が印象的なかたちで登場しました。
『豊臣兄弟!』小一郎(仲野太賀)と直(白石聖)、身分違いの結婚?絶望から武士の道へ…第2回放送を考察今回は、「願いの鐘」というモチーフを通し、織田信長(小栗旬)の“妹”が胸に秘めた祈りと、豊臣兄弟の“姉妹”が、鐘の音色で届ける祈り……家族を支え乱世を生きる女性たちの「願い」が描かれていました。
一般的にお市は、戦国一の聡明な美女として知られる一方、最後の夫・柴田勝家とともに自害したこと、三人の娘を残したまま亡くなった母としての姿から、「悲劇のヒロイン」というイメージが強い女性でもあります。
実は秀吉が仲介だった!?お市の方と柴田勝家が結婚した理由今回は、第2回「願いの鐘」のドラマの世界を振り返りつつ、織田の妹、豊臣兄弟の姉妹(と母)という女性たちの、“立場は違えども同じ願い”を考察してみたいと思います。
高野山持明院蔵「浅井長政夫人像(お市)」wiki public domain
パッツン前髪の可愛いルックスにドスが聞いたセリフ第2話「願いの鐘」で、「早くも登場!」とSNSで話題になった、宮﨑あおいさんが演じるお市。オン・ザ・眉毛でパッツンと切り揃えた前髪のビジュアルが「なぜ、この髪型?」と話題になっていました。
実際、戦国時代の女性の髪型としては、パッツン前髪はあまり登場しないそう。ほかの女性のように、センターパートでサイドの髪を切り揃え、後で結ぶ髪型が主だったようです。
この髪型にしたのは、俳優さんの個性を引き立て、嫁ぐ前の姫君としての若さを演出したのでは?という声もあります。
実際、宮﨑さんの透明感のある“超童顔”な顔立ちにパッツン前髪という可愛らしいルックスと、低音のドスの聞いた声で「調子のいい猿じゃな!」という、予告で流れていたセリフの落差が新鮮です。
これから、個性的なお市として描かれていきそうな予感も。“ただ運命に翻弄される戦国美女では終わらせないぞ!”という感じがしました。
藤吉郎が話す「願いを叶える不思議な鐘」
第2話では、信長は、叔父である織田信賢を討ち、尾張統一を成し遂げようと画策。
お市は、“信賢が今川義元と通じている”という情報を信長にもたらし、「いずれ尾張すべてを手に入れようと目論んでいるのでは」という考えを話します。
「考え過ぎじゃ」という信長に「ええ、考え過ぎです。兄上と同じで」と間髪入れずに返すお市。妹の切れ者ぶりに苦笑する信長でした。
そんな緊張感のある状況の中、お市は信長に留守を命じられた藤吉郎(池松壮亮)を呼び出し、「退屈だから、また何か面白い話を聞かせておくれ」と言います。
このドラマでは、藤吉郎はお市が気を許している存在として描かれるのでしょうか。
そんな藤吉郎が語ったのが、幼い頃に母に聞かされた「願いを叶える不思議な鐘」の話でした。
昔、村は悪党たちの強奪被害に悩まされていた。
その悪業に胸を痛めた村の和尚は、安寧を祈い鐘を鳴らした。
すると、和尚の願いが届いたのか、鐘を鳴らすたびに鐘の中から1枚ずつ銭が落ちてきた。和尚は、その銭を村のために使おうと貯めたのだった。
けれども、それを悪党に知られて和尚は殺されてしまう。
悪党は銭欲しさに鐘を鳴らすものの、いっこうに銭は落ちてこない。
何度も何度も鐘を鳴らす悪党。
そして、その鐘の音を聞きつけた追手に見つかり、悪党は討ち取られた。村人たちは、和尚が貯めていた銭で豊かに暮らすことができたのだった。以来その鐘は「願いの鐘」となった。
そんな、ハッピーエンドのお話です。
「そんな鐘がもし本当にあるなら、鳴らしてみたいものじゃのう…」というお市。
お市が心の中に秘めている「苦しさ」
お市は、藤吉郎に「退屈というのは嘘じゃ。本当は苦しいのだ。兄妹というのは不思議。分かりたくなくても、なぜか相手のことがわかってしまう」と胸の内を明かします。
「私が今苦しいのは、多分兄上が苦しいからじゃ。」と。
気丈なお市は、兄上は強いから大丈夫だと信じているものの、やはり心は揺さぶられてしまっているはず。
突然の戦や身内の裏切りなど、常に死と隣り合わせの戦国時代。強い兄とはいえども、災いはいつ起こっても不思議はない。戦いに行く兄を見送る苦しさ。
自分の領地を荒らし敵対するものは、民を犠牲にしても徹底的に己の力を見せつけなければならないという、言葉には出さないまでも信長なりの苦しさがあることも、察知しているのでしょう。
“「願いの鐘」を鳴らしてみたい”のは、兄の勝利と無事への祈りという切実な本音だったのではないでしょうか。
この「願いの鐘」はラストの伏線になっていたようです。
一方、小一郎の村では幼馴染で初恋の相手である直(白石聖)が祝言をあげることに。ところが、直は花嫁衣装のまま小一郎のもとへと逃げ出してきて、「一緒にこの村を出よう」と言います。
その矢先、村は野盗とさらに残虐さを増した野武士集団に相次いで襲われてしまうのでした。小屋に隠れ難を逃れる二人でしたが、多くの村人や友人が犠牲になってしまいます。
まじめに農業に励んでいるだけなのに、力がなければ野盗に奪われ殺されるだけ。
「植えたばっかりの苗、守ろうとして」野武士に首を落とされ亡くなった友人。
「わしらが何をした。偉そうなこというて信長はちっともわしらを守ってくれない。わしらが米を作らなければ生きていけんくせに。」
「わしらのことなんじゃとおもってるんじゃ」
戦の陰で犠牲になるのは庶民という、現代にも通じる怒り。泣きながら友人の首を抱いて叫ぶ言葉が胸に刺さりました。
自分の無力さに絶望した小一郎。藤吉郎に「侍になれ」と説得されます。
兄弟の無事を祈って鳴らされる鐘の音は届く
侍になり力を持ちたいという思いが強くなっていく小一郎に、母なか(坂井真紀)は、藤吉郎が盗みを働き村を出て行った8年前の話をします。
「あんたが熱を出したので、藤吉郎が薬を手にいれるために金を盗んだんだ。今度はあんたが兄の役に立ってあげな」と。
明け方、登ってくる朝日を見て「あんたらはお天道様みたいにおなり」と兄弟を励ます母。侍になり偉くなると小一郎は決意します。(秀吉は「母親に日輪(太陽)が飛び込んで生まれた」「日輪の子」の逸話を表現したのではないでしょうか)
眩しく輝く太陽を、手をかざしながら見上げる豊臣母・兄弟姉妹。けれど、光が強くなればなるほど影は濃くなっていくもの。この先を考えると、そんなことも思ってしまいます。
そして、小一郎は、ようやく初恋の人・直にプロポーズ。(直の婿殿は野盗に襲われたときに、一目散に逃げてしまったとか)
今までひっそりとカメの中に貯めていた小銭を、直の父親・坂井喜左衛門(大倉孝二)の元に置き村を出て行きました。
喜左衛門が、「こんなはした金で!」と怒って「この盗人兄弟が〜」と吠える場面では笑ってしまいました。
愛しき直、兄の藤吉郎とともに、故郷の村を後にする小一郎。彼らの背中に鐘の音が届きます。
母なか、姉とも、妹(倉沢杏菜)が鳴らす寺の鐘。実は、“薬の話”は母の作り話でした。そうでも言わないと、小一郎は家族を心配して出て行きそうにもなかったからです。
「たっしゃでな〜!藤吉郎!小一郎!」と言いつつ、笑いながら勝手に、鐘を何度も何度も鳴らす(了雲和尚(田中要次)に怒られながら)母と姉妹。
「願いの鐘じゃ!」と、嬉しそうに頷く小一郎。
家族の無事を祈るのは戦国の姫君も、貧しい村の庶民でも身分は違えども同じ……そんなことを感じた場面でした。
「願いの鐘」から兄妹の出世街道が始まる
「不思議な鐘」は、史実として確認できるものではありません。
けれども、「不思議な鐘」の話は、お市の胸の内に秘めた想いを揺さぶり、心の中にその姿を表しました。
かたや、「無事で生きろ!頑張れ!」という祈りを、実際に寺の鐘を鳴らし、その音を兄弟の耳へ届けます。
共通しているのは「何もできない立場」からの祈り。
戦国の世では、戦場に“立つ者”よりも“待つ者”のほうが多かったといいます。
「願いの鐘」は、その無力さとそれでも願わずにはいられない人々の心を象徴しているようでした。
「戦い」の意味はなんであろうが、愛する存在には「生きていてほしい」という“待つ者”の強い思いは、その時代時代に共通する“祈り”だったのでしょう。
さて、「いざ!参ろうぞ!」という直(なぜか、直が仕切るのがおもしろい)の言葉とともに、うぉぉ〜!っと清洲目指して走っていく藤吉郎、小一郎、直。
まるで、王道痛快少年漫画のように、輝かしい旅立ちが始まりましたが……
この先、どのような展開に描かれるのでしょうか。
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