【豊臣兄弟!】お市の戯言がまことに…第10話で起きた2つの「嘘から出た実」と「兄妹の絆」を考察

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【豊臣兄弟!】お市の戯言がまことに…第10話で起きた2つの「嘘から出た実」と「兄妹の絆」を考察

「戯言じゃ」…

柴田勝家(山口馬木也)が思いきり動揺する告白をしながら、勝家があわてふためくと冷静に諭すお市。お市に翻弄され思い切り動揺する勝家が「かわいい!」と評判になりました。

NHK大河ドラマ「豊臣兄弟!」第10話『信長上洛』

二つの「嘘」「戯言」が、「実(まこと)」となった……という、第5話『嘘から出た実(まこと)』を彷彿させられる回でした。

今回初登場したのは、クセの強そうな策士・明智光秀(要潤)と僧侶から還俗した足利義昭(尾上右近)。信長(小栗旬)が書状を送った、武田信玄(髙嶋政伸)ほか10人の武将が登場し(徳川家康(松下洸平)は既出ですが)、「戦国オールスターそろい踏み!!」とSNSも沸いていました。

「豊臣兄弟!」は、キャラ設定も意外性が加わっているのが面白いところ。一人の登場シーンは短くてもインパクトがありますよね。

第10話も盛りだくさんの展開でしたが、今回は再び登場した二つの『嘘から出た実(まこと)』と、このドラマの根底に流れている『兄弟の絆』ならぬお市と兄の『兄妹の絆』を振り返って考察してみました。

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お市の言葉に翻弄される柴田勝家。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)

覚悟を決めた妹と憂慮する本音を見せる兄

剣の稽古を終えたお市が、「わかりました。浅井家に嫁ぎます」と伝えると、伏目がちに「すまぬ」という信長。

嫁ぎ先の浅井長政(中島歩)がどのような人物か尋ねると「知らぬ」と答えます。「いい加減なことを!」とお市がいうと、「知れば(嫁入りさせることを)迷ってしまうかもしれぬ。」と、妹を気遣う本音を漏らしました。

「市は嬉しいのです。やっと兄上のお役に立つことができます。」と、そんな兄を逆に気遣う妹。「もし自分が男で『弟』であったなら」と、お市はずっと歯がゆい思いを抱えていたようです。

「弟であれば、兄のため命懸けで働き、信勝(中沢元紀)との関係でできたトラウマを克服させられるのに」と。

ただ、単純に「男になりたい!手柄をあげて兄に認められたい!」という願望ではないのが、お市の切ないところです。

第6話『兄弟の絆』で豊臣兄弟の絆の強さに負けたのに、なぜかご機嫌だった信長。自分の命と出世を引き換えに小一郎が兄を見捨てるかと思いきや、「兄を絶対に裏切らない」という命懸けの強い意志を見せつけられ、「こういう弟もいる」と嬉しかったのでしょう。

そんな兄の様子を見て、お市は「私が小一郎のように『弟』であったら。兄に『ここに絶対に裏切らない弟もいる』と実感させられたのに」と悔しく思ったはず。

でも『妹』ではできない。せめて兄のため、政略結婚の道具になるのがせいいっぱいです。まったく未知の戦いに単身乗り出すのですから「初陣じゃ」と覚悟を決め、自身を鼓舞したのでしょう。

絆の強い兄と妹。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)

『嘘から出た実(まこと)』となった小一郎の思いやり

そんな、お市に小一郎は嘘をつきました。第5話「嘘から出た実(まこと)」がまた登場します。

あのときの二つの「嘘から出た実(まこと)」の一つは、松平元康(のちの徳川家康/松下洸平)の超適当な嘘と、大沢次郎左衛門(松尾諭)を調略するためにデマをばらまいた藤吉郎の嘘。家康の嘘を信じた藤吉郎が、調略に成功しまさに、二つの嘘が「嘘から出た実(まこと)」となりましたね。

今回も、また二つの「嘘から出た実(まこと)」が起こりました。

一つ目は、小一郎がお市を励ますために「噂に聞いたところでは、浅井長政殿は、秀麗なお顔立ちにて気性もお優しくもの静かで穏やかな方だ」と、ついた嘘。

「そうか。兄上とは似ても似つかぬ。私の好みではないな」というお市。「此度の婚礼、少しでもご自分の為とは思えませんか?何か一つでも。」という小一郎に、お市の表情が揺らぎ思わず本音を語りました。

「男に生まれたかった。周りの男共が元服し初陣を飾る度、いつも羨ましく思うて来た。この婚礼は私の初陣じゃ。」と。

小一郎は以前お市から「弟に裏切られ殺したことで信長が人間不信になった」話を聞かされています。お市の「自分が男だったら、兄のために命をかける弟になれるのに」と思っていることを察したでしょう。

ちょっと泣きそうな表情にも見えるお市に「お幸せに」ではなく「ならばお市様。どうかご武運を。」という小一郎がよかったですね。

小一郎がお市についた嘘がまことになるとは。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)

本当に「秀麗なお顔立ちで優しく穏やかな人」だった

一転して織田と浅井の婚礼の場は、何とも思えない、お通夜のような暗さでした。賑やかだった藤吉郎と寧々(浜辺美波)の婚礼とは大違いです。特に、浅井長政の父親・久政(榎木孝明)のお市を見る目が非常に感じ悪いのが気になります。

けれど、小一郎の嘘通り、長政は長身のイケメン。しかも、声優のようなイケボの持ち主で、そっとお市に「疲れてはおりませぬか?」「寒くはござらぬか?」と気遣って囁くほどの優しい人柄でした。

お市は心遣いに礼の言葉をいうものの、すぐ外に視線を移します。冷静に対応していたように見えるけれど、実は、動揺していたのだと思います。

ほんとは小一郎の嘘がまことになったことに驚き、ドキドキだったのに、兄譲りの素直ではない性格でもあるのでそっけなく対応したような気もします。

婚礼後、一人庭を見ながら佇むお市に、柴田勝家が「ではわれらは岐阜に戻ります」と報告に来ます。「何か困ったことがあったらすぐに駆けつけます」という勝家に、小一郎に伝言を頼むお市。

「嘘から出たまことじゃ。」と伝えろと。「長政は小一郎の嘘どおり『秀麗なお顔立ちにて気性も優しくもの静かで穏やかな方』だった」と、小一郎に伝えたかったのですね。

それに続く「そなたのせいで私は不幸になったと伝えてくれ」にはいくつか異なる意見を見かけました。

小一郎の嘘がまことになったせいで……

▪️好みのタイプは兄上のような男性なのに、ぜんぜん違うイケメンの上に優しい長政が夫になってしまった。

▪️覚悟を決めて浅井家に乗り込んできたのに、長政にときめいてしまった。

▪️イケメンで優しい長政と幸せな婚姻生活を送ってしまいそう。でも、こんな乱世では、いつ夫と兄が対立関係になるかもしれぬという不安を抱えて生きねばならない

など。

本心は分かりませんが、いずれにしても、ずっと兄上を理想の男性像としてきたお市は、初対面の長政に好感を持ったのは間違いないでしょう。

お市を気遣って優しく声をかける長政。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)

お市の爆弾告白が将来的は「嘘から出た実(まこと)」に

お市に頼まれた伝言を聞いた勝家は、「嘘から出たまことじゃ。」には「???」という感じでしたが「そなたのせいで私は不幸になったと伝えてくれ」には、小一郎が何か失礼なことをしたのか!とブチ切れます。

「ゆ、許せん!」と立ち上がるも「待て待て。ただの戯言じゃ」とお市にいわれてしまいます。やはり「伝えんでいい」というお市に「いや〜しかしっ!」と食い下がる勝家。

そんな勝家をまじまじと見つめつつ、「相変わらず無骨なやつじゃなあ」とため息まじりにいうお市に、申し訳なさそうにシュンとする勝家。

「でも、長政殿より私にあっているかもしれん」と、うっすらと微笑みながら「いっそお前と一緒になるほうがマシだったな」と、思わぬ告白をしました(上から目線ですが)。

「そ、そそそそそのようなことを。と、と、突然いわれましても。もし、もももし、とののお、お耳にでも入ったら」と、声が小さくなり我を失う勝家。

「勝家。戯言じゃ」と再び笑みを浮かべ諭すお市。

「くっ…また暴走してしまった!」とでもいうかのように、俯きひざまづき首を垂れる勝家。怒られた大型犬のような姿が印象的でした。

そんな勝家に「気をつけて帰れよ」と声をかけて立ち去るお市の目には涙が浮かんでいたように見えます。

勝家にというより、彼が帰ることで「これで私はいよいよ浅井家に独り残されるのだ」という寂寥感ではないかと思います。

よく聞くと、「あなたと一緒になればよかった」という告白なのに、「いっそ」とか「マシ」とか、割と失礼な物言いをしている、お市。

そこは気にせず「お市様の圏内に入った」ことで焦りまくる純情な勝家。

いい場面でしたね。焦りまくる勝家に「戯言じゃ」というお市、わりと小悪魔っぽい面も。

このお市の戯言が、二つの目の「嘘から出た実(まこと)」でした。

お市と柴田勝家。お市の戯言が将来的に「まこと」となる。(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)

60歳でようやく想い人のお市と初めての結婚

お市は、長政との間に三人の娘をもうけ幸せな生活を送ると思いきや、織田家に追い詰められ長政は自害。その後、愛する兄信長も自害するという悲劇が続きます。

そして、お市は自身の「戯言」通りに、勝家と再婚。勝家は60歳でようやく想い人のお市と再婚します。勝家は妻を大切にしそのまま幸せに末永く暮らしました……とはならないのが史実の辛いところ。せっかくの再婚生活も、1年にも満たなかったのでした。

秀吉との「賤ヶ岳の戦い」に敗れて北ノ庄城へと立て篭もった勝家は、もはやこれまでというところまで追い詰められ、妻・お市、一族子女とともに切腹します。

その切腹は、一気に右脇まで刀を一直線に引き次は胸から縦に切り裂き、腹わたを掴み取り掻き出したという壮絶な死に方だったとか。介錯にあたった中村聞荷斎が火薬に火を点けて、勝家の遺骸もろとも吹き飛ばしたといわれています。(『毛利家文書』とそれに所収された秀吉書状より)

妻・お市には「信長の妹であり、秀吉も丁重に扱うだろう」から生き延びるように説得するもお市は応じず共に死ぬことを選びました。

戦国時代日本で布教をしたポルトガルのカトリック宣教師ルイス・フロイス『日本報告』には、

敗戦した勝家は離反した家臣に対して恨み言は言わず、最後まで付き添ってきた家臣たちには生き延びることを許し むしろそれを喜んだ。また、今生においてはこれまでの家臣たちの愛情に報いるすべがないことを嘆いた。

と収蔵されているそうです。

60歳までずっと独身で初めてお市と結婚した純愛・柴田勝家(NHK大河「豊臣兄弟!」公式サイトより)

最期に

お市の辞世の句は

「さらぬだに 打ちぬる程も 夏の夜の 夢路をさそふ 郭公(ほととぎす)かな」

意訳:そうでなくても眠る間もないほど短い夏の夜だというのに。この世との別れを急かすのかホトトギスよ

勝家の辞世の句は

「夏の夜の夢路はかなき後の名を雲居にあげよ山郭公(ほととぎす)」

意訳:夏の夜の夢のように儚い人生だった我が名を、空高く語り伝えてくれ、ホトトギスよ

婚姻生活は短かったものの、ふたりでホトトギスの鳴き声に耳を傾け静かに語らうような時間は持てたのでしょうか。

家臣として長年の付き合いだっただけに、短くとも心通いあった仲のいい結婚生活だったのでしょうか。

次回の予告では、お市を抱きしめながら「そなたのことは人質とは思っておらぬ」という長政の姿が映りました。

二人の心が打ち解け合いこれから幸せな結婚生活を送るようですが。光が輝くほどにその影は濃くなっていくもの。

これから先のお市、そして二人の夫、長政・勝家を待ち受けている厳しい史実を考えると、どう描かれるのか観るのが怖いような気もしてしまいます。

参考:戦国の凰お市の方 鈴木輝一郎

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