2024年紅麹事案 研究解説⑪「コカ・コーラが示す食薬区分の本質――危険を制度で管理してブランドを生んだアメリカ、文化を消した日本――」 (2/5ページ)
薬剤師が生んだ飲料が、食薬区分を正しく機能させることで世界ブランドになった事例として、日本の紅麹問題を考えるうえで本質的な示唆を持つ。
2.アメリカの食薬区分の実例——Stepan Companyモデル
現在のコカ・コーラ製造における食薬区分の運用は、次のように機能している。
■ 具体的な仕組み
▶ アメリカのStepan CompanyはDEA(麻薬取締局)の認可を受け、南米からコカ葉を合法的に輸入する唯一の事業者である
▶ 同社はまずコカ葉からコカインを抽出し、政府認可の製薬会社(Mallinckrodt社等)へ医療用麻薬として供給する(DEAの厳格な管理下)
▶ 麻薬成分を完全に除去した残りの香料部分(コカ葉エキス)のみを精製し、コカ・コーラ社に販売する(FDAの食品規制の枠組みで管理)
この仕組みにおいて、医薬品成分(コカイン)はDEAの管理下で医療用途に限定され、食品成分(香料部分)はFDAの食品規制で管理されるという明確な食薬区分が法制度として実際に機能している。コカ・コーラの世界的成功は、食薬区分制度の正しい運用なしには実現しなかった。
3.日本の食薬区分の空白——2002年局長通知の形骸化
日本では2002年、厚生労働省が局長通知(食薬区分別添1)を発出し、食品と医薬品の線引きを定義した。しかし、この通知が実際の行政運用において機能してきたかどうかは、紅麹事案が明確に示している。
■ 国際的決着と日本の不対応
▶ 1998〜2001年:米国でFDAとPharmanexの訴訟が行われ、紅麹サプリメント中のモナコリンKは医薬品(lovastatin)と同一であるとしてFDAが販売差し止めを命じた。