「売れにくい本」は誰が残すのか――出版市場の効率化で見えにくくなる“小さな声” (2/3ページ)

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同社は2018年の立ち上げ以降、比較的小規模なテーマや、当事者自身の経験を扱う書籍を企画・発行してきた。

これまでに、長崎の戦災孤児の手記をまとめた『いっしょうけんめいきょうまで生きてきたと!』や、精神保健福祉の領域で減薬に取り組んだ当事者と医師の対話を記録した『サバイバーと医師のゆっくり減薬ものがたり』などを出版している。

また、代表の福島氏自身も弱視の視覚障害があり、障害を抱えながらさまざまな職種で働く人たちの事例をまとめた『あまねく届け!光』を手がけている。

福島氏によれば、発行する書籍の一部では、視覚障害のある読者にも利用しやすいよう、音声読み上げソフトに対応したテキストデータの引換券を付けたり、「UD(ユニバーサルデザイン)教科書体」を採用したりしているという。こうした工夫は、読者の幅を広げるための一つの方法といえる。一方、小部数での制作は大量印刷と比べて単価が上がりやすく、継続的な事業として成立させるには、価格設定や販路づくりも課題になる。

「社会的意義」だけでは読者に届かない難しさ

小規模な出版においてもう一つ難しいのが、テーマの重要性と読者の関心をどう結び付けるかという問題だ。

福島氏によれば、障害者の多様な働き方を紹介する書籍をビジネス層に届けようとメディアにアプローチした際、「特定の層向けであり、一般的な関心と合致しない」という主旨で紹介を断られる経験もあったという。情報が個人の関心に合わせてパーソナライズされる現代において、自分とは異なる境遇にある他者の実態や課題に触れる機会は、かえって得にくくなっている側面がある。

必要なのは、単なる同情や過剰な特別視ではなく、本という客観的な媒体を介して「他者が直面している現実」を冷静に共有することである。地域に根ざした記録や当事者の声が、一過性のニュースで終わらずに書籍として形に残ることは、社会の多様な厚みを保持するために不可欠な営みとされる。

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