「売れにくい本」は誰が残すのか――出版市場の効率化で見えにくくなる“小さな声” (1/3ページ)
出版市場の縮小や書店数の減少が続くなか、大手出版社の流通網には乗りにくい、小規模なテーマの本をどのように読者へ届けるかが課題になっている。地域の歴史、個人の体験、少数者の記録などは、必ずしも大きな部数を見込めるテーマではない。一方、出版されなければ記録そのものが残りにくいという側面もある。
こうしたなか、「つくりましょう、『あったらいいな、こんな本』を10部から!」を掲げ、小部数の出版にも取り組む「読書日和」の福島憲太代表に、独立系出版社が担う役割や、小規模出版を継続する難しさについて話を聞いた。
出版科学研究所の統計などによれば、国内の紙の出版市場は長期的な縮小傾向にあり、書店数も減少している。
デジタルメディアやスマートフォンの普及などによって、情報に触れる手段そのものが変化するなか、出版社にとっては限られた市場の中で、一定の販売部数を見込める企画を選ぶ必要性も高まっている。
その一方で、大量販売を前提とした出版では扱いにくいテーマも存在する。地域に残された資料や、特定の立場にある人の体験、個人が長年書き残してきた記録などは、内容に価値があっても、読者層が限定されることがある。
こうした記録をどのような形で残し、必要とする読者へ届けるかは、小規模な出版社や自主出版の分野で以前から議論されてきたテーマでもある。ただ、小部数出版には、1冊当たりの製造コストや流通、認知拡大といった課題もある。出版できることと、読者に届くことは必ずしも同じではない。
当事者の「声」を本にする独立系出版社の試み
こうした市場環境のなかで、個人や当事者の記録を本として残す取り組みを続けているのが、出版社「読書日和」だ。