ダイバーシティを「増やす」だけでは組織は強くならない―社会心理学者・正木郁太郎准教授が語る、感謝と称賛の実践知 (2/5ページ)
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その上で妥協点を探ることが、現実的なマネジメントにつながります。
また、組織として「これは絶対に守る」という価値と、「ここは多様でよい」という領域を明確にすることも重要です。何もかもを同じにするのではなく、共通の目的やルールを土台にしながら、貢献の仕方には多様性を認める。この「線引き」が、管理職や社員のエンゲージメントを支えるといいます。
■「感謝」と「称賛」は精神論ではない――信頼と組織力を高める実践へ
正木氏が近年研究している「感謝」と「称賛」は、単なる礼儀や美徳ではありません。互いの良いところを認め合う習慣が、心理的安全性や信頼関係につながり、企業文化を育てる土台になるといいます。
実践の第一歩は、「ありがとうと言いましょう」と呼びかけるだけではなく、「なぜ取り組むのか」「何を目指すのか」という目的を共有すること。その上で、日常の仕事の中で、助けてもらって嬉しかったことや相手の良かった行動を、具体的に伝えることが重要です。
感謝や称賛の方法は、サンクスカードやアプリ、研修など、企業によってさまざまです。重要なのは手段そのものではなく、自社で働く人たちに合った方法を選び、現場と相談しながら継続できる形にすること。トップダウンで目的を示しながら、現場では小さな実践を積み重ねることが、定着の鍵となります。
■テレワーク時代に問われる「人と人とのつながり」――デジタルだけでは組織は強くならない
テレワークは利便性を高める一方で、人と人とのつながりを弱める側面もあります。だからこそ、デジタルツールによる効率化だけではなく、意識的にコミュニケーションを生み出し、信頼関係を育てることが重要です。
感謝や称賛は、特別な制度を導入しなくても始められます。日々の仕事の中で「助かった」「ありがとう」「ここが良かった」と伝えるだけでも、人間関係への投資になります。正木氏は、完璧な人格者になる必要はなく、多少面倒に感じても、前向きな行動を意識的に選ぶことに意味があると語ります。
組織づくりを経営者や人事だけの仕事にせず、一人ひとりが「自分にできること」から始める。その小さな積み重ねが、企業文化や組織力を変えていく可能性があります。